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Peepooblue’s Notebook

2004-08-29

[][]久留里線の旅  15:34

 8月29日、日曜日。きのう烏山線鹿島臨海鉄道に乗ってきたばかりだが、また小さな旅に出る。九州に接近中の台風16号の影響で朝から雨。風も少しある。

 総武線内房線を乗り継いで、11時41分に木更津までやってきた。今日の目当ては千葉県内のJR線では唯一まだ乗ったことがない久留里線房総半島の山間部に分け入る32.2キロの非電化ローカル線である。

 食料を調達する間もなく、11時50分発の久留里線上総亀山行きに乗車。キハ38キハ37という3ドア、ロングシートの通勤型ディーゼルカー2両連結。

 悪天候のわりには同類の「青春18きっぷ」族や親子連れ、夫婦連れなど、地元客ではなさそうな人たちがけっこう乗っている。といっても、空いているが。

 降りしきる雨の中、エンジンを唸らせて動き出した列車は右へカーブして東へ向かう。あたりは田んぼや畑、それにハス田が広がり、あちこちにシラサギがいる。頭部が茶褐色のアマサギも見かけた。ただ、一方で農地の宅地化も進んでいる。

 最初に停まる駅は祗園。なぜかこんな場所にこんな地名。もっとも、この駅に来るのは初めてではない。久留里線に乗るのは初めてだが、実は沿線をほぼ全区間自転車で走ったことがあるのだ。というわけで過去の記憶を呼び戻しながらの旅。

 房総横断道路・国道409号線に沿って上総清川、東清川と記憶に残る駅を過ぎ、行き違いのできる横田駅ではタブレットの交換。只見線烏山線(大金〜烏山間のみ)でもタブレットの受け渡しが見られたが、ここでもこんな古い方式が残っている。

 東横田で国道と分かれ、右へカーブして南東へ針路をとり、田んぼの中を走ると、次は馬来田。かつては行き違い可能駅だったようだが、片側の線路が撤去され、使われなくなったホームにコスモスがたくさん咲いていた。

 馬来田からはひたすら南へ向かう。次の下郡あたりから列車のエンジン音に混じって、窓ガラスを叩く雨音がパチパチと聞こえるようになった。並行する道路を行くクルマも水煙に包まれて走っている。

 小櫃、俵田と停まって次が久留里。古い城下町で、名水の里でもある。少ない乗客の大半がここで下車。その久留里で上り列車と行き違いがあり、タブレットを交換。

 久留里からは丘陵地帯に分け入り、小櫃川の段丘上を行く。いすみ鉄道が沿う夷隅川小湊鉄道が沿う養老川もそうだが、房総半島の川は特に上流部では屈曲が非常に激しい。この小櫃川もぐにゃぐにゃに曲がりくねりながら流れている。そのため、意外に地形が複雑で、土砂災害も多く、房総半島で大雨が降った場合など、久留里線で運転見合わせというニュースをよく聞く。まぁ、今日ぐらいの雨ならまだ大丈夫だろう。

 低い山々には霧がかかり、山水画のような眺め。窓外を過ぎる線路際の木々は雨に濡れて梢が垂れ下がり、窓ガラスをタタタタタタッと打ち鳴らしていく。

 平山、上総松丘と停まって、短いトンネルをくぐり、終点の上総亀山には12時51分着。

 行き止まりのローカル線は終点に着くとすぐ折り返すパターンが多いが、この列車は1時間以上も滞在して、上りは14時発だ。降りた客のほぼ全員が僕の同類らしく、みんな所在なさそうにしている。

 駅員もいる小さな駅舎を出て、とりあえず線路の終端まで行って、そこから駅を振り返る。

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 駅構内の線路は3本あり、プラットホームはそのうちの2本に挟まれた島式になっている。3本の線路はホームを過ぎると再び1本に収束し、さらに数十メートル先まで伸びて終わっている。山あいの終着駅に雨に濡れて寂しげに停まっているディーゼルカーというのはなかなか風情がある。

 ところで、時刻表を見ていて、気がついたのだが、どうやらこの駅が一番賑わうのは、もしかすると真夜中かもしれない。

 上総亀山を発車する上りの最終列車は20時44分発である。しかし、その後も木更津からは23時32分着の最終まで3本の下り列車が到着するのだ。上り最終列車も木更津に着くと、下り最終で上総亀山に戻ってくることが時刻表から分かる。そして、3本の列車はいずれもこの駅で夜を明かし、翌朝、下りの一番列車がやってくる前に相次いで木更津へ向けて発車していくのだ。上総亀山からの始発は5時08分で、これが6時08分に木更津に着き、6時25分発の下り一番列車になることも時刻表から読み取れる。つまり、久留里線の車両は木更津ではなく、上総亀山をねぐらにしているわけだ。構内に線路が3本あるのはそのためで、どの線路も草に埋もれることもなく、錆びついてもいないのは、まさに現役だからである。このような行き止まり式のローカル線の列車は起点駅の車両基地で夜を過ごすのが普通で、久留里線のようなケースは珍しいのではないだろうか。草深い田舎の小駅で並んで夜を過ごす列車たちを想像すると、汽車を主人公にした童話の世界のような、列車たちの密やかな会話が聞こえてきそうでもある。

 

 さて、ひまつぶしに駅前の道をあてもなく歩いていくと、下り坂になって、5分ほどで亀山湖に出た。小櫃川を堰き止めたダム湖である。水量は少ないが、雨の中、ボートで釣りをしている人の姿もある。近くには温泉もあるようだ。

 湖畔を散歩した後、雨漏りしている食堂でカツ丼を食べ、駅に戻ると、発車時間が近かった。

 14時発の列車は来た時とほぼ同じ顔ぶれを乗せて上総亀山を発車。各駅で少しずつ地元客を拾いながら走り、15時07分に木更津に着いた。