peicozy's blog

マラソン、トライアスロン、ブルベの完走記と、日々思うこと

五島長崎トライアスロン バラモンキング 完走記 〜未熟者の2度目のロング〜


2011年宮古島ではじめてのロングトライアスロンを完走。2012年は五島長崎のバラモンキングに挑戦しました。スイム3.8km バイク180km ラン42km 総距離226kmの初めてのIM(アイアンマン)ディスタンスです。梅雨真っ只中のレースの長い一日を振り返ります。。。


■早朝

3時起床。睡眠薬のおかげかぐっすり眠れた。7時間睡眠。ホテルのロビーにお弁当を取りに行き部屋で朝食。今日一日のエネルギーだ。しっかり食べた。昨日までの雨は消え、路面は乾き始めている。なんてラッキーなのだろう。


4:20カンパーナホテル出発。歩いて1分の外濠公園から、スイム会場の富江行きのバスが出る。暗闇の中トランジットバッグをかかえた選手が続々と集まって来る。バスの出発予定は4:45だが、選手を満載するとすぐに出発だ。バスにゆられること20分。スイム会場に着くころ空は明るくなってきた。


■スタート前
スタート前まで2時間。まずはバイクラックへ向かう。昨日かけた自転車カバーは風で半分めくれあがっていた。タイヤへ空気を入れる。パンクはなさそうだ。


昨日の雨の中の試走でDHバーのアームレストがじっとり濡れたままだがしかたない。お弁当箱(バイクにつけたバッグ)にパワーバー4本分を詰め込む。ボトルはCCD2本だ。コンピュータをつけ準備完了


ベテランらしき選手を囲んで談笑している。「パワーバー食べるとさ、歯に詰まるわけよ、そこでこいつが要るのさ」と、つまようじを手にしてた。ふふふ、楽しいな。


イクラックを歩いていると、2連覇がかかるかぼす君を見つけた。「がんばってください、いつもブログ読んでます」と握手してもらう。DESOTOのトラウェアだ。


昨年の宮古島に続き、2度目のロング。気分は落ち着いている。スイムコースを確認する。湾内を2周回するコース。折り返すと岸壁の近くなのでコース半分をよく見渡せる。漁港のため波はほとんどない。スタートは砂浜ではなく、船を陸に引き上げるためのスロープだ。


トランジットバッグに詰めたバイクギアをラックに掛ける。スイム後、シャワーを浴び、トラバックを手に更衣テントで着替えるのだ。ラックは上下2段だが、下の段では低すぎてつり下げられないな。まあしかたない。

■トイレ
ホテルで3度、会場で3度トイレに入った。レース中もよおすより、出しきってスタートしたい。最後はおしりがヒリヒリしてしまった。


曇りだがときおり日差しが見える。本当に雨でなくてよかった。スタート45分前。ウェットを着る。擦れて痛くならないように、首まわり、足の付け根、肩にワセリンを塗る。ワセリン用のビニール袋を忘れてしまい、チームメイトに借りる。


スイムバッグに着てきた衣類、サンダル、iPhoneを詰めて預ける。サンダルを入れ忘れる選手が多く、係り員に「はきものはよろしいですか?」と指摘される。


ナンバリングは腕にゼッケン、ふくらはぎにカテゴリだ。自分は男子40-45歳。M40と記入してもらう。


■スタート〜スイム1周目
フローティングスタートなので、選手がスタートのブイに集まる。ウェットを着ているので仰向けにプカァと浮いている人もいる。


プォオォォーーーンというホーンの音。
静かだった海に一斉に水しぶきが上がる。


「始まったな」


そろりと泳ぎだす。
ゴーグル越しの海は視界2,3メートルといったところか。。。漁港なのでしかたがない。
ペースが同じ、ブルーセブンティの選手の左わきにポジションをとる。S字プルがキレイな選手だ。コースチェックは彼にまかせひらすら下を向いて泳ぐ。


呼吸は荒れることなく淡々と腕をまわす。ヘッドアップすると、3番、続いて4番のブイだった。1周目みたのはこれだけだった。1周目が終わるころ、彼を見失った。


陸に上がり、スポーツドリンクを一杯もらい再び海へ。エイドは温かい飲み物もある。水温が低かったらほしくなるだろう。GARMINをみると44分だった。このペースでいけば1時間半だ。目標は1:40だったので思ったよりもいいペース。


■スイム2週目

ひとりで泳いでいると右から選手に抜かれた。おなかがぽっこりでている。魚のような体型だ。彼の左わきにポジションをとる。ときおりヘッドアップしているのが見える。彼なら方向を間違えることはないだろう。


しばらく並んで泳いでいたが、ちょっとペースが遅いようだ。左わきにキックが美しい選手が見えたので乗り換えた。明らかに先ほどよりペースが速い。心拍が少し上がるのを感じる。けど、苦しいほどではない。第4ブイを越えるまでしばらく連れて行ってもらった。


■岸壁
左でブレスうすと岸壁が見える。応援する人なのか、旗なのか区別はつかないけどちらりと見える。もう少し、もう少し。

キックが美しい選手は立ち泳ぎしている。方向チェックしているのだろう。自分はそのまま他の選手にもまれながらスイムフィニッシュへ向かう。


足がついた。苔でぬるりと滑る。
ゴーグルを外しゲートへ向かう。
よし、第一種目フィニッシュだ。


スイムタイム 1:35:57
スイム順 423


■スイム→バイク
シャワーを浴びトラバッグをかけたラックへ向かう。自分のまわりのバッグはすでになく見つけやすかった。更衣テントに入る。着替え中の選手で、中はむっとした空気だ。どしりと地面に腰をおろして着替える。


ウェットの下が脱ぎずらい。立ち上がって裾を踏みながら裏返しにして脱いだ。


メットに入れていたジェル2本を飲みほす。考えなくても、目に見えた順番どおりに行動すればいいように準備していた。


水がしたたるウェットをトラバッグに押し込む。靴下が濡れていてはきづらい。後ろから自分を呼ぶ声。高浦さんだ。岸人さんはどこですかね?と言うとそこに居るよと返事。指された方をみたけど、よく似た別人だ。先に行っているのだろう。



空になったバイクバッグにウェットを詰めた。テントを出てボランティアに手渡す。
イクラックに行くと前後10台のバイクはすでに空だ。ポツンと寂しそうにまっていたCAAD9を下ろす。右のラックはまだバイクが満載だ。あれ?と思ったが、Bタイプの選手のラックなのだ。


乗車位置まで転がしてまたぐ、空は明るい。BIKEスタートのゲートをくぐりぬける。エリックが「がんばってー」と声をかけてくれた。ありがとう。行ってきます。


富江町
まずは富江町を一周だ。沿道には朝早くから応援の方々が手をふる。こちらもできるだけ答える。「行ってきまーす」、「ありがとう」。おばあちゃんが庭先にイスを出して手をふってくれている「ガンバッテ」。こういうのに弱い。まだ始まったばかりなのに涙が出てきちゃう。みんな、おいらのことなんて何も知らないし、他人なのになんで応援するんだろ、ありがとう。って思う。


富江町周辺は多少アップダウンあるがきつくはない。珠洲のバイクスタートの風景に似ている。ぐるりと一周して左に折れた。トンネルへ向かう。しばらくは上り坂だ。


トンネルの手前で右手に海岸線が見えた。泳いだ湾内とは違い、白波が立っている。ここでスイムだったらきついだろうな。と思いながら漕ぐ。朝の空気が気持ちいい。


トンネルの上りは思ったほどではない。まあ、まだ20kmほどしか漕いでいないで元気なのだ。富江町を後にし、周回コースへ向け北上する。昨日クルマで下見したコースだ。直線道路なのでこれから行くアップダウンがよく見渡せる。下りながらペダルを漕いでさらに加速し続く上りを惰性で駆け上がる。ジェットコースターみたいだ。


直線道路を終え左に折れる。周辺に緑が増えた。路面はほぼ乾いているけど、木陰のところどころだけはまだ濡れている。昨年のレースは一日中雨だったのか。ぞっとするな。
下り基調の道路だ。カーブの先は見えないけれど、DHポジションのまま下る。地面には50kmの速度表示だ。クルマで50kmで曲がれるのなら、バイクでも曲がれるはずだ。そんなことを思いながら気持よく漕いだ。


■30km地点
十字路の真ん中に誘導係が見えた。直進するとずっとその先が上り坂になっているのが見える。誘導員の指示どおり左折。ようやく周回コースに入った。先は長いのだ。
ゆるやかな右カーブ。上り坂の先はトンネルだ。トンネル山の上に巨大な風車が見える。風力発電用の風車が5、6機こちらを向いて優雅にまわっている。トンネルに入るとひやりとした空気に包まれる。ふと宮ケ瀬のトンネルを思い出す。


トンネルを越えるとしばらく下り基調だ。バーにしっかりつかまって下り落ちる。スピードに乗せようとさらに漕ぐ。クルマの来ない公道を走りまわれるなんてなんて贅沢なのだろう。コンピュータを見ながらきっかり30分おきにパワーバーを口に入れた。腹が減ってるわけじゃないけど、補給し続けないと動けなくなる。


左カーブの先は、小川を超える橋だ。後ろからエアロメットの選手がDHポジションのまま追い抜いていった。河原選手だ。バイクの上に一つの塊となって走りさっていく。かっこいいなぁ。Bタイプ出場なので1時間後にスタートだったはずだ。もう抜かれてしまった。


■1週目大宝折り返し
右手に海が見えてきた。少し奥多摩湖の雰囲気ににている。入り江の奥の方だからか、昨日下見したときは海に見えなかった。大宝折り返しは対面通行になる。自分の前後にどんな選手が居るか確認する絶好の機会だ。


折り返してくる選手をみながら走る。岸人さんだ。速いなぁ。すぐその後ろに横山さんを見かけた。一瞬だけど「おおっ!」と声を掛け合う。うれしい。


ちらりと時計を見る。自分が折り返して今の地点まで戻ってくるまでの時間を測れば差わかる。折り返しに着き、エイドでバナナとオレンジをほおばる。トイレに行きたい気もするが我慢だ(結局2週目の折り返しまでガマンしてた)


さきほど岸人さんとすれ違った場所だ。再び時計を見る。差は約8分か。。。
昨年宮古島の時は120km地点くらいで追いついたけど、、今回はどうだろう。


■周回コース
折り返しを終え、Y字を左に折れる。ここから先は下見をしていない、未知のコースだ。
まわりは田んぼが広がる。濃い緑の絨毯がしかれたようだ。バイクはばらけていて前後も余裕がある。


ゆるい上り坂を上っていたら。後ろから声をかけられた。町トラのジャージを見て「誰かと思ったら北くんだね」パシャリ。あるみまんこと永野さんだ。バイクに乗りながらさっとデジカメを取り出し撮ってもらった。さすがベテランだ。余裕度が違いすぎる。


「あと130kmしかないですね」と言うと、「あはは、ポジティブでいいね!その調子」と笑いながら先に行ってしまった。その後、永野さんとバイク中何度か抜きつ抜かれつしながら会話を交わした。


上りが続く、左カーブで後ろを振り返る。結構上ってきているぞ。息は切れていない、まだ元気だ。遅いけど。


左手は海だ。海岸からぽっこりとつき出る島が連続している。どこかの写真で見て頭の片隅に残っていた五島列島の景色。それと、今こうして見ている景色が一致した。本当に五島らしい景色。気持ちいいな。雨だったら向こうまで見渡せないだろう、今日は雨があがって本当によかった。


30分おきに摂るパワーバー。気温が上がってきたせいかラップにベトベトついて食べつらくなってきた。上りで速度が落ちてるときにほおばった。


左カーブの先は橋だ。橋のたもとに応援が見える。下りで一気に加速して通り抜ける。背景の山々と、手前の人々が、2枚のセル画をスライドさせたように見える。なめらかにその位置を変えながら山々と人々が動く。景色にうっとりし、応援に励まされて先を行く。


■どの辺?
自分の位置関係がわからないまま漕ぎ続ける。もう島の北端はとおり過ぎただろうか?まだ100kmには到達していない。先は長い。
こうして書いていても1週目の記憶なのか、2週目の記憶なのか実は定かでない。


スペシャルニーズバッグのエイドが現れた。これはスタート前にゼッケン番号ごとに預けておくとスペシャルニーズのエイドで受け取ることができるのだ。Aタイプは2周回なので80kmか130?で受け取ることができる。預けられるのは、飲食物だけ。


自分は、なにも預けなかった。そのまま通り過ぎる。うけとるには一旦停車する必要がある。


■シスター、こどもたち
上り坂の途中。薄いグレーの衣をまとい手をふっている女性が居る。シスターだ。「ファイトっ」っと、やさしく声をかけてもらった。そうなのだ五島は教会の島でもあるのだ。シスターが道の両脇にで応援する道を通りぬけるとき、なんだか自分もやさしい気持ちになっている気がした。自分はただ、漕いでいるだけなのに、応援してくれてありがとう。


トンネル内。上りでスピードは出ない。姿は見えないが、前の方から「がんばってください」とこどもたちの声が響いてくる。トンネル内で応援してくれているのだ。ひとり、選手が通りすぎるたび、トンネル内に声がびびく。面白い。自分が通り過ぎるときも元気をもらった。おおきな声で「ありがとうっ!!!」と叫んだ。トンネル内に、自分の声がこだました。


ようやく周回コース1周目を終える。本当に長い。ここまで90km。ぐるりと回った55kmのコースをもう1周と少し。さっき上ってきた数々の坂をもう1回漕ぐのかと思うとぞっとする。


■惰性
大宝折り返し前の下り基調の道。1周目は踏み込んでスピード乗せていったけど、2週目はだらだらと下りるだけ。重力にまかせて降りるだけ。そういえばこの辺で河原選手に抜かれたのだっけ、とぼんやり思い出す。選手どうしの間隔がまばらだ。


大宝折り返し、選手の位置がわかる折り返しコースだ。どれくらい離されただろう。。。岸人さんと往復コースに入ってまもなくすれ違った。速い。再び時間を計測しようと時計をちらりと見る。折り返しのエイドで停車した。55km、約2時間ガマンしていたトイレ休憩だ。トイレに入っている間、ボランティアの方が自転車を持っていてくれた。いたれりつくせりだ。オレンジをかじり、バナナをほおばって、あいたボトルによく冷えたスポーツドリンクを入れてもらった。


出発しようとしたとき、エリックが居ることにようやく気がついた。エリックはスイム会場で応援したあと、クルマで移動してきたのだ。「きたさん、遅いよー♪」と笑いながら言うエリック。思わず「ホント、長げーーーーよ、このバイクコース」と返事した。まわりの応援の人も笑っていた。「エリック、ありがとうっ、行ってきまーすっ」とエイドを後にした。


さきほど岸人さんとすれ違った場所。差を見ると18分近くかかっている。エイドで休んだのもあるが離された。トラブルでもないかぎりバイクで追いつくのは不可能だろう。。。


ほどなく、高浦さんとすれ違った。1周目で大宝折り返しではすれ違わなかったはずだ。追いつかれてきているのかも。。。


2週目。陽が高くなっている。暑苦しくはないが、快適でもない。前を行く選手。ふくらはぎにW25と書いてある。女性の選手だ。同じようなペース。それ以外にも自分の前後10人くらいは同じようなペースで漕いでいる。上り下りで多少は抜きつ抜かれつするけれど、あれ、見たことがある選手だ。ということになる。


左手に入り江を見ながら登っていく、曇が消え、青空さえ見える。昨日の土砂降りはなんだったのだろう。空を見るとバイクと並走するように、ふわり鳥が飛んでいる。大きく翼をひろげ風をうけて飛んでいる。こっちだよとナビをしてくれているようだ。ちっとも速くはないけど気持ちいいな。全然終わらないバイクを楽しむ何かを探してた。


いつのまにか、「これはレースじゃない、サイクリングなのだ」と思っていた。長い長いサイクリング。どう考えてもバイクパートのスピードじゃない。2週目に入り明らかにいペースダウンしている。すわったままでおしりもしびれ、たまに腰をうかしストレッチをする。


■復路
二本楠についた、ようやく着いた。周回コースも終わりだ。左に折れた。福江に戻ろう。気分はランに移りつつあった。ところが再び坂だ。こんな坂、下ってきたのだっけ?もう往路のことなんて覚えていない。周回コースで坂は上り終えたつもりだったけど、復路に入ってまたもや坂道だ。坂の前からインナーローに落とす。すっかりココロが折れている。


前にはバイクを降りて歩いている選手。一度は抜いたけど並走になった。「心拍計のアラームが鳴りっぱなしだよ、あはは」と笑っていた。昨年も出場しているようだ。確かに、このバイクコースはくせになるかもしれないな。いろんな意味で。。。


下りだ、福江は近いぞと自分に言い聞かせてスピードを乗せる。右手に折れた。覚えている。朝も通った、ジェットコースターのような道だ。大きく下って上るコースが2つつづく、いや、3つだったか?やっぱり覚えていないのだ。思考回路が機能していない。


坂を登るとエリックが見えた。大宝折り返し以来だ。でかいので遠くからわかる。「エエーリーック!」と叫ぶとこっちを向いた。「あと少しだよ頑張って」と応援してくれた。「(バイクパートが)なげーーよ!」と叫んだ。エリックは苦笑いしていた。


ジェットコースターを終え左へ、本当にもう少し(のはずだ)、地図はアタマにはいっている(つもり)。坂の上公園までの登りがある。アップダウンはそこまでのはず。あと少し、あと少しと思いながら漕ぐ。


左に折れた。ぐっと続く坂道。この坂が上の公園まで続いているのだ。斜度はきついわけではないけど、だらだらと長い登りが続く。いったん平坦になってもさらに続く。折り返してくる選手は気持ちよさそうに下っている。バイクフィニッシュが近いせいか、皆、生気を取り戻して果敢にペダリングしているように感じる。


折り返しで岸人さんには合わなかった。かなり差が開いてしまったのだろう。自分が折り返して下る時、高浦さんとすれ違った。少し詰め寄られたかも。。。


坂の上の中央公園からくだりきり、左折。いよいよ福江港だ。残り5km。ようやくここまで来た。長かったバイク。あとはクルクルまわすだけだ。いやはじめからクルクルまわすだけだったのだ。が、が、が。残り5kmにも現れる坂たち、本当に最後の最後までアップダウンの連続なのだ。元気を出して「福江に帰ってきました!!!」って沿道の応援に答えようとしてたけど、はぁはぁという息遣いだけが口からでてきた。


お弁当箱にはパワーバーが一切れ残っている。残してもしかたない。暑さで溶けラップにからみついている。食べづらい。


これが最後か、次がラストかと思いながら漕いだ。前日Twitterで高校生と知り合った。彼はバイクキャッチャーのボランティアをやるんだとつぶやいていた。キャッチしてもらうときに、彼を探すんだ。と考えながらバイクフィニッシュを迎えた。


最後の最後、道路に白線で矢印が描かれている。その先と右に曲がればバイクフィニッシュだ。よし、彼はどこだ!?、と思ったがあきらめた。バイクキャッチャーがぐるり2クラス分くらいいたのだ。この中から探すのは、、無理だ。(あとで聞くと、キャッチャーの番を終えたけど、自分のゼッケンを見て声援を送ってくれたそうだ。ありがとう)


バイクを預けた。着替えテントに向かって歩いていると、「がんばってください」と女子高生からトラバッグを手渡される。「ありがとう」と受け取って着替えテントに入った。まだ日は明るい。


テントの出口付近に陣取り着替える。バイクパンツを脱ぎランパンへ履き替え、靴下を代えランニングシューズを履く。紐がいつもよりきつく感じる。かなり足がむくんでいるうようだ。軽めに靴紐を結び出発。用意していたジェルを飲んで出発した。


バイクタイム 7:23:31
バイク順 360

スプリット 8:59:28
通過 378


ランスター
テントを出る。外濠公園の芝生の上を少し走る。股が固まっていてぎこちない。
芝生を終え、舗装路に出た。ランスタートのゲートが見える。ゲート先のエイドでオレンジ、バナナをいただく。いよいよ最後の種目、ランの3周回の始まりだ。


時計を見た。ここまでの経過時間はぴったり9時間だ。ふと頭をよぎった。ランをサブ4ペースで行けば、トータル13時間だ。12時間59分59秒で、12時間台の記録が出せるかもしれない。脚は軽い、3種目の中でランが一番得意だ。これは行くしかない。


GARMIN910がキロラップを教える。5分前半だ、次のラップでは4分後半。キロ6分を切って行けばサブ4の可能性ある。このまま行けるんじゃないか!?そう思いながら走った。沿道の声援に笑顔で答える。「ありがとう」、「行ってきまーす」、こどもたちに手をふる。


ランコースは片道7kmを折り返して14km。14kmを3周回して42kmとなる。片道7kmには坂が2箇所だ。つまり、2箇所の坂を行ったりきたり計12回登って降りる。


最初の坂だ。バイクやクルマで下見はしたけど走るとけっこうきつい。それでもペースはあまり落ちず、まわりの選手を抜いていく。下りは楽だ。重力にまかせて降りていく。


2つ目の坂も若干ペースダウンしたけれど、まだキロ5分後半で走れている。寒くなるかもと思い着けたままにしていたアームカバーが暑い。走りながら脱ぎ、背中のポケットに押し込んだ。


1周目折り返し。7km。思ったより遠かった。いろいろ食べ過ぎてお腹が重い。コーラを飲んだ。胃を膨らませず、でもカロリーが欲しかった。折り返し左手に奥浦の海を見ながら走る。奥浦は入り江の奥に位置するので海といってもとても静かだ。まるで奥多摩の湖畔を走っているような感覚だ。(ちなみに奥多摩湖畔はランしたことはないけど)


ペースは6分を越えている。いつのまにかランサブ4の目標は頭から消えていた。一歩一歩が重くなってくる。さっき越えたばかりの2つ坂を再び上るのかと思うと、意識が勝手に疲れていた。


自転車の乗り替えたエリックが応援にきてくれた。「間に合うよガンバッテー」と声をかけてくれる。ありがたい。背中に揺れていたアームカバーを預かってもらった。サンクス、エリック。


福江の港に戻った。周回チェックの前に小橋を渡る一部折り返しのコースとなっている。おいおいそんなに遠回りしたら着かないよ。迂回したくないよ。とココロの中で思う。


周回チェックだ。腕に白いバンドを巻きつける。反射板になっていて日が暮れても安心だ。ランスタート時に立ち寄ったエイドで補給。コーラを一口、オレンジを一かじりして出た。時計を見ると1周回できっかり90分かかっていた。あと2回。先は長い。


■ラン2週目
時刻は17時半。陽はまだ高い。五島の日の入りは19時35分だ。まだしばらく明るいところを走れる。周回チェックやフィニッシュエリア周辺は人が多い。店頭や沿道からの声援をパワーに変え走る。


1周目軽やかに登った坂が、目の前にそびえている気がする。こんなに急だったっけ?カラダも精神もかなり弱っている。ひとまず、ハーフまでは走ろう。とにかく半分まで行こうと自分に言い聞かせる。
沿道にふるまっていた笑顔に少しづつ余裕がなくなってきた。微笑み返すだけで精一杯だ。


すれ違う仲間に元気をもらう、岸人さん、横山さんはかなり前だ。高浦さんはにこやかに走っている。大木さん、山本さん、永野さん、小林さん、川村さん、松本さん、橋本さん、、、、みんなラン周回コースをくるくる走っている。


2週目の折り返しを過ぎた。どうにかハーフまでは走ったぞ。残り半分。走り通せる自信がない。まったく。エイドごとにしっかり止まって補給。補給といっても何か食べるわけでなく、水、コーラを口に含み、オレンジと一かじりするだけ。あと10km走ったら歩こう。制限時間15時間には間に合うはずだ。それにしてもこの疲れはなんなんだ、、、


ふと、ナウシカのセリフを思い出した。未完成のドロドロの巨新兵が崩れるシーン。「まだ早かったんだ」。そうだ、おいらのトレーニング量では、まだ五島に挑戦するには早かったんだ。未完成だったんだ。そんなことを思って走った。


エイド後の坂で走り出せずにズルズル歩いていると、反対側でヒタヒタと走る山本さんに声をかけられた。「だめだよぉ 歩いちゃぁー」笑いながら言っていた。そうだよな、そうなんだよな、と思うが脚が前にでない。それでもトボトボ走りだした。


福江の折り返し。ゴールした河原選手が沿道で声援を送ってくれた。


「いいピッチです!、その調子!!」


どうにか腕をふり前に進んでいる自分。なんだか目に涙があふれてきた。まだゴールじゃないのに。あと1周回のこっているのに。ただ走っているだけな自分に、河原選手だけじゃない、見ず知らずの多くの人々にかけてもらった無数の応援を思い出した。


2週目は1時間40分かかった。疲れた。。。


■ラン3周目
福江の町を後に3週目に入った。しだいに暗くなってきた。コース上の選手はまばらだ。2週目までは多くいたけど、速い選手は次々にゴールしている。GARMINを見ながら30kmになったら歩くんだ。とココロに決めていた。29km地点の表示。ぜんぜん30kmにならない。走っても走っても。。。


ようやく、30kmだ。予定どおり歩く。疲れた、あと12km歩き通しても間に合うだろう。前を行く女性の選手。バイクで何度かみかけた選手だ。彼女も歩いている。坂でペースダウンした彼女を追い抜いた「疲れましたね」と声をかけた。そうですねと苦笑いしていた。


暗くなってきた。照明が焚かれている前後は本当に真っ暗だ。暗い中応援を続けてくれる方々。うれしい。相変わらずこちらはから何も返せない。疲れた。
暗くなって坂の勾配が見えなくなった。トボトボと上る。坂の頂上。道の反対側から聞こえる声援。こどもの声だ。


「がんばって、くださーい」


5歳くらいだろうか。。。家に居る家族のことを思い出した。末娘も5歳だ。なんだか、娘に応援された気分になった。「パパ、がんばってね」って言われた気がした。はるばる長崎の五島までお前は歩きにきたのか?って自分が言う。なにやってんだろ。。。くそう。


涙を浮かべて再び走り出した。1歩1歩が足のサイズくらいしか前に出ない。ちっとも先に進まない。腕を振り、脚を促す。。。
真っ暗な中、道の先にある照明を目標に進む。あの明かりまでは走ろう、たどり着いたらそのとき考えよう。その次も、次の明かりまでは走ろう。遅くてもいい、走る姿勢をとるのだ。


折り返しのエイド。何も食べたくなかった。コーラを飲む。エネルギーになるかもと思って口にしたけど、一口のむのがやっとだ。
左手には奥浦の海が広がっている。真っ暗闇だ。前にはトボトボと歩くようなペースの選手が数人。


地面を見ると、黒い斑点が白線に沿ってずっと続いていた。もしかして、選手が流した汗が、ポタポタと垂れてランコースに続いているのかもと思った。実際は単に道路の汚れだったけど、コースを一歩一歩歩んでいった選手が思い浮かんだ。


暗くなって、勾配がわからなくなった。目の前に立ちはだかる坂はもう見えない。一歩一歩進むだけだ。見えなくなったおかげで、これからあの坂と上らなくてはと委縮することもなくなった。


ふと首を上げると坂の頂上だった。前を行く選手が照明に照らされてくっきりと影を見せる。止んでいた雨が再び降ってきた。制限時間を告げるように、ポツリと再び落ちてきた。


照明がない区間。沿道にはライトを片手に応援する女性。暗くて顔も見えないくらいだ。「がんばってください。」、彼女のわきを通るときライトで足元を照らしてくれた。雨も降り出したのに、、、最後まで選手を見守ってくれている。ありがとう。


■いよいよ
ラスト。もう時計は見ていなかった。後ろから来る選手に次々と抜かれる。こんなに辛いランとなるとは思わなかった。長い長い42kmだ。フィニッシュまで残り1kmを切る。路面の小さな凹凸が気になる。脚はあがらない、引きづるようなラン。


すでに完走した選手らが沿道から手を伸ばしている。「ナイスランですっ」、と言われながらハイタッチする。なんかこみあげてくる。泣きそうだ。


明るく照らし出されたフィニッシュエリア。。。もう顔はくしゃくしゃだ。先にゴールした仲間たちとハイタッチ。赤いライン。ライトがまぶしい。



そしてフィニッシュ。



長かった。



本当に。。。



■振り返って
金曜に五島入りしてからずっと雨。
大会当日だけ上がった。(翌日のアワードパーティーも雨)
なんてラッキーなのだろう。雨だったら完走できたかどうか怪しい。


まる一日かけて島を駆け巡った。コースを思い返すと海だけが平らだった気がする。
コテンパンにやられたバイクコースだけどまた挑みたくなる。
成長した自分をまた試しに来よう。ありがとう五島長崎バラモンキング。