『「世界征服」は可能か?』岡田斗司夫

「世界征服」は可能か? (ちくまプリマー新書)

「世界征服」は可能か? (ちくまプリマー新書)

 「世界を征服してやる!わーはっはっはっ!」という悪の組織(ショッカーやギャラクターなど)が目論む「世界征服」ってなんなのか、実現可能なのか?実現するなら何が必要なのか、を真面目に検証した本です。
 初めは「世界征服のための世界征服を目論むと、灘高に入るための受験勉強と同じでバーンアウトする」とか、「ショッカーのねらいはなんだったのか」とか、図書館で読んでいて笑いをこらえるのに必死な内容から入るのですが、最後には、「世界征服ってなんなのか」「今、世界征服するとしたら、征服するべきものは何なのか」、とか至極まっとうな話になっていく、オタ話のようでそうでない、最後は真面目な本です。内田樹の『子どもは判ってくれない』を思い出しながら読んでいました。
 富める人が持っているものはなんでしょう、世界征服を目論む人がぶちこわすべきものはなんでしょう?内田説でも、岡田説でも、「情報」が大いなるキーワードになるのですが、お二人の説はさておき、「情報を操作できる人」ってのは世界征服目論む上で大切だと思うよ。今なら、巨大掲示板のオピニオンリーターになれたり、アクセス数が日に数千万とかいうブログが書けたりする人。
 まあ、これ以上は本を読んでいただくとして、この本を読んでいると、「レインボーマン」をちゃんと見たくなります。私はこれが放映されていた頃、まだまだ小さかったのですが、「仮面ライダー」のショッカーとは違う、悪の組織のドロドロした不気味さに惹かれておりました。今でもエンディングの一部は歌えるし。
 なんだか固めの話から入ってしまいましたが、本書は、世界征服をするためには何が必要か、そのリーダーのタイプは、というような、取っつきやすいようなお茶らけのような、アニメファンならたまらんような具体例(タイムボカンシリーズガッチャマンライディーンバビル2世など)がガンガン出てくる内容が前半大部分を占めますので、岡田さんと同年代、70年代〜80年代アニメを楽しんだ人にはとてもとっつきのいい本です(ヨミ様すごろくなんて、笑いをこらえるのが大変です)。
 しかも、世界征服をする「リーダーの資質、目的、資金、人材」、そして、世界征服をした後に「したいこと、支配階級、後継者」、これら各要素についてよく考えよ、という教示があって、なんというか、プレゼンテーションに必要な項目は何か、というのを考えさせるいい教材にもなりそうです。
オタク学入門

オタク学入門

 岡田斗司夫さんは「BSマンガ夜話」から存じております。中でも、『オタク学入門』(新潮OH!文庫)で「カリオストロの城」のオープニングが低予算なのに素晴らしいできである、ということをコマ送りで解説してくれたのでノックアウトされました。「BSマンガ夜話」の「スラムダンク」の回を見逃したのは何とも悔やまれます…