『ローリング』


監督 冨永昌敬
出演 川瀬陽太三浦貴大柳英里紗

この登場人物の距離は、男も女も、男同士も女同士も常に近い。そこにある感情が愛情であろうと性欲であろうと友情であろうと、男女は頻繁にゼロ距離で肩を組み、肌をふれあう。一見親密そうでありながらどこか空虚さを内包する「地元」の関係性を見事に表現している。
先生(川瀬陽太)・みはり(柳英里紗)と貫一(三浦貴大)の出会いのシーンにおいても、階段にみはり→先生→貫一の順番で肌を密着させ並んで座り、決して女が真ん中ではなく先生が真ん中にいるこの三角関係性を明確に予言している。

そんなこの映画で緊迫が生じるのは、距離が離れた時だ。
ロングショットで荒れ野原(日本的荒野)を少し距離を置いて並んで歩く5人の男たちのショット。そして滑稽さを通り越して切実な狂気を感じさせる、電気ドリルと延長コードの脅迫シーン。延長コードという明確に距離を司る小道具によって強調される距離は、貫一と友の永遠の別離へと繋がる。