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夢の砦

2012-12-28

会計と経済性工学を勉強しよう その6

株式会社の仕組みは18世紀末からはじまった産業革命で飛躍的に発展していきます。産業革命により、産業の中心となる工場設備や鉄道施設といった固定資産の建設には巨額の資金が必要となりました。多くの人々から資金を集めることができる株式方式は最適なしくみのひとつであり、発展することになりました。

ところで、株式会社の仕組みを利用して集められた資金の大部分は固定資産投資に使われました。固定資産は長期間に使われますが、永久ではありません。それは年々老朽化していき、やがて使えなくなる日が来ます。それを無視して株主に利益の配当を続ければ会社にはお金がストックされず、買い換えや建て直しの資金が不足してしまいます。しかし、株主配当しなければ株主は折角出資した資金を回収する機会がなくなりますし、会社の所有者として経営者を代えてしまうこともありえます。経営者としては長期的な視野で会社経営をしていくことが生じてきました。この問題を解決するためには。時間がたつにつれて目減りしていく固定資産の価値と利益を同時に計算できるような、合理的な方法が必要でした。減価償却費はこのような過程で発展しました。

株主と経営は分離され、経営は株主に対し期間ごとに報告する規則もできあがり、複式簿記を土台に会計学が発展したのです。

さて、ここまで読んでいただければわかると思いますが、歴史的には貸借対照表が中心であり、損益計算書オランダ東インド会社で考案されましたが、損益計算書を重要視しはじめたのは最近のことです。しかし、欧米系の上場企業を中心に、株式への損益状況をタイムリーに報告していくという姿勢から四半期決算へと進み、現在では損益計算書の方が重要視されつつあります。

最近の財務諸表のひとつの流れは時価評価です。例えば、土地が良い例ですが、取得した原価で土地の価値は計上されています。しかし、現在の価値で土地を評価すると100倍、1000倍という価値になることも十分あります。株主にとってみると、このような著しく低い資産価値しかないと思って手放したのに、新たな株主がその土地を売って大もうけするというようなことが生じれば不満が残ることになります。デリバティブのように金融の世界の信用取引が思わぬ巨額な負債になるということもありえます。これは2008年に起こったリーマンショックなどがいい例となりますが、このように資産負債は価値が変わりうる現代を反映し、適宜評価してそれを公表していくことがルール化されてきています。四半期ごとに決算調整という説明がありますが、その中身とは、このようなものが含まれていることを頭の隅においておかれればよいと思います。

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2012-12-20

会計と経済性工学を勉強しよう その5

さらに、前回のケースの続きです。

売上高 1000万ポンド
費用  510万ポンド
利益  490万ポンド

「ひとり70万ポンドにしかならないじゃないか。でも、新しいやつが入るんだったら、とりあえず最初の出資した金の700万ポンドは手をつけずにおいて、この際利益は全部分けちまおうぜ。」とセラーズは別の意見を言った。
「残念ながら、そこまでお金はないんです。」とチャップリンは答える。
「ナニ?おまえちょろまかしたな。」チコは怒りに満ちた顔でチャップリンにつかみかかろうとする。
「それはちょっと違うぜ。」マーフィはすばやい身のこなしでふたりの間に入りながら、チコを制した。そして、続けた。「確かに利益は490万ポンドだけど、船を作るのに先に金をはらっているからなあ。」

このように、利益と実際のお金の収支は違います。お金の収支はキャッシュフローといい、いわば家計簿のようなものと考えればよいと思います。

今回の例でいうと、まず7人が100万ポンドずつ出資しました。それに加えて、1000万ポンドの貿易での収入と船1隻分の保険金が100万ポンド入っています。
一方で、船は合計6隻作っていますから600万ポンド支払っています。あと商品代と船員の賃金保険料がお金として支払われています。

収入 出資金  700万ポンド
     貿易による収入 1000万ポンド
保険金  100万ポンド
合計 1800万ポンド

支出 船代  600万ポンド
商品代  100万ポンド
賃金   40万ポンド
保険料   50万ポンド
 790万ポンド

残高 1010万ポンド

出資金をキープするのであれば配分できる資金は310万ポンドです。
チャップリンの提案は利益の半分ですから245万ポンドですから、この分をはらってもまだ65万ポンド残ります。これは現代の会計で言えば内部留保といいます。

もうひとつ重要なことは、利益とキャッシュフローは一致しないということです。また、減価償却費や船の損失(現代の会計で言えば固定資産の除却)といったものは、お金が改めて支出されるわけではありません。このような費用を非資金費用といいます。この辺は以後もう少し詳しく説明します。

2012-12-14

会計と経済性工学を勉強しよう その4

師走の諸事情ですっかり忙しくなかなか更新できません。
とりあえず、ノルマのコラムを載せたいと思います。

では、前々回のケースの続きです。

「随分とあてがはずれたぜ。」チコはぶつぶつと文句を言う。横ででぶっちょのハーポもうなずく。
2回の航海が終え、本当なら1400万ポンドの収入があったはずなのに、海賊の襲撃にあったり、ハリケーンにあったりで、1000万ポンドにしかならなかったのです。しかも海賊に1隻、ハリケーンで1隻船は沈んでしまい、200万ポンドかけて新しい船を2隻作らなければならなかったのです。
「大砲にはおれさまの腕でもさすがに勝てない。」にこりともせず、航海で船長をしていたキートンは抑揚なく答える。
チャップリン新大陸で手に入れたゴムの木の樹脂で風船を作り、そこに海図を書いたボールを楽しそうに蹴飛ばして遊んでいる。
「おれも大損だよ。」とロイドも言う。「ハリケーンで船が沈んじまったおかげで、船1隻保険金を払わされたからなあ。」
「でも、あと1隻はおれたちが負担したんじゃないか。」チコは再び文句を言う。「100万ポンドずつ払ったと言うのに分け前ひとつありつけない。」
「それじゃあ、降りたらどうだい。」マーフィはいい女がいないかきょろきょろしながら、チコに言う。
「そうだいいこと思いついた。新しいやつらを集めてきておれたちの仲間にしよう。5人ほど集めて500万ポンドも出させたら、おれたちの取り分はとりもどせるんじゃないか?ちょうど新品の船が2隻もあるんだから、きっと話にのるぜ。」
「それは、あくどい。」とセラーズ。
「どうせ、おれたちゃ“けだもの組合”さ。泣く子もだまるマルクス兄弟だぜ。」とチコうそぶく。
「みなさん。国で法律が決まりましてね。残念ながら最大で利益の分までしか分け前はもらえないんです。とはいえ、これからも商売続けるんですから、まあ利益の半分を分け合うことにしましょうか?それから新しい仲間を私が集めてきましょう。」チャップリンは風船を大きく何度もつきあげながら提案した。

さて、この2回でもうかったのはいくらだったのだろう?






まず商売での収入は1000万ポンドだから、今でいう売上高は1000万ポンド
費用については、
商品代 50万ポンド×2回
船員の賃金 20万ポンド×2回
保険料 25万ポンド×2回
減価償却費 120万ポンド×2回
船の損失 80万ポンド(2隻分の残存価値)

売上高 1000万ポンド
費用  510万ポンド
利益  490万ポンド

2012-12-03

会計と経済性工学を勉強しよう その3

財務諸表株式会社の成り立ちについてお話したいと思います。
前々回でも記載したとおり、貿易会社が株式会社の始まりです。一方会計の基本は複式簿記であり、イタリアではじまったと言われています。15世紀にイタリアのパチオリが体系的に整理したのがはじまりと言われ、パチオリは複式簿記の父と呼ばれています。ただパチオリはその当時のベネチアのルールを整理して体系化したわけで、実際の歴史はさらに古く、ローマ時代にまで遡ると言われています。

さて財務諸表は左側を借方(Debit)、右側を貸方(Credit)と呼ばれますが、この言葉の通り、左側はお金を借りた立場からお金がどのように使われているかを表示するものであり、右側はお金の出し手の立場から誰がどのような形で出したかを示したものです。このようなことから、借方を運用、貸方を調達と呼ぶ場合もあります。

例えば、前回の例のようにAという商人から新大陸で売るための商品50万ポンドを掛けで買った場合、
商品 50万ポンド 買掛金 50万ポンド
と仕訳され、商人Aも資金の提供者として帳簿(財務諸表)に記載されます。
もし現金で買った場合は、
商品 50万ポンド 現金 50万ポンド
と仕訳されますが、これはそれ以前に出資してもらった人の現金が商品に変わって、現金が減ったという意味になります。

複式簿記の歴史に少し戻りますと、複式簿記が発達してきたのはイタリア都市国家で、十字軍遠征の影響により発達したと言われています。
十字軍の遠征は膨大な資金や物資が必要となり、それを支えたのがフィレンツェミラノベネチアといったイタリア都市国家でした。取引量や複雑化する取引内容に対応する形で、現代のものとほぼ同じ機能を持つ「複式簿記」が発達してきました。
借方サイドはお金の変化を記録することに重きを置かれ、貸方サイドはお金をどのような形で出資したかということで記録されていくようになります。

さて、商売の過程で変化するお金は、もとはといえば出資者のお金です。取引で得られる利益も出資者のものです。そこで事業を始めるときに、出資者の元手を表す勘定(Account)を作ることにしました。これが資本金勘定です。商売を終えた損益はこの資本金勘定に計上されます。
一方、借方は財産の状態とその変化を記録します。船を買えば、今で言うと固定資産として計上し、商品を買えば流動資産として計上されます。全ては現金の価値として記録され、事業が終わって全てを清算すると現金に戻り、その価値は資本金損益と一致するはずです。このように財務諸表はお金を運用と調達という二つの側面に分けて記録しているのです。

さらに、この複式簿記は会社組織になってさらに発展していきます。
欧州大航海時代、多くの国々が東方の香辛料を目指して欧州の国々が争って貿易会社を作りました。そのような状況の中、スペインから独立したオランダも、東方貿易に乗り出していきます。国家としては弱小だったこの国にとって、まだ開拓段階にあった東方貿易は大きなチャンスでした。そこでまず、他国との競争に打ち勝つべく、複数あった貿易会社を統合してひとつにまとめました。そして、その会社に軍事植民地経営、貿易などで大きな特権を与えました。その会社が歴史に名を残すオランダ東インド会社です。
その頃、どの国の貿易会社でも、貿易航海をおこなうたびに資金や人員を集めてきました。そして、会社を大きくして競争力を高めていきました。とはいえ、それでは出資者には何のメリットもありません。そこで、出資者に対しては、元手を返す代わりに、事業をして得た利益を定期的に分配しました。更に、自由に売り買いができる出資の証明書(株式のようなもの)を発行して、会社からの払い戻し以外の方法で出資金を取り戻せるようにしました。

オランダ東インド会社の成功を見て、さらに発展させたのがイギリス東インド会社です。イギリスもこの仕組みをいち早く取り入れ、イギリスの方で株式会社の仕組みは発達していきました。オランダが国王や貴族といった限定的な出資者であったのに対し、イギリスは17世紀半ばの清教徒革命を経て市民が力をつけ、多くの出資者が参加するようになりました。その結果、株主たちの意見を経営に反映させる株主総会が採用され、株主への配当は利益からおこなうことなど、今の株式会社の骨格となるような決りが定まっていきました。そのようなしくみが整えられるようになり、会計システムも作り上げられていったのです。

簿記の歴史は下記のHPを参考にさせていただきました。
会計を本格的に勉強される方は是非お勧めです。
http://www.minac.net/accouting101/index.php

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2012-11-27

会計と経済性工学を勉強しよう その2

前回は概念を説明しましたので、ちょっと具体的な事例でもうけるということをイメージしてみたいと思います。

新大陸が発見され、貿易で一山当てようという輩が集まってきた。
人集めのうまいチャップリン、金儲けには万事抜け目がないチコ、ハーポのマルクス兄弟、金貸し屋のロイド、船大工のマーフィ、船を操れば一番のキートン、力の強いセラーズなど一癖も二癖もある7人組。
新大陸でどうやってもうけるか大騒ぎで打ち合わせ中。

「まず、船だが、4隻は必要だな。」と自慢のしゃべりでヨタ話を早口で長々と脱線しながらマーフィ。
「確かに1隻だと勝手に持ち逃げという心配もあるしな。」意味ありげにキートンを見ながらセラーズが相槌をうつ。
「金がかかるのは、船の建設に400万ポンド。商品の購入に50万。船員たちの賃金や食料に20万。ざっと470万ポンドは必要だな。」と貿易でもうける仲間を集めてきたチャップリンは山高帽の形を整えながら数字を示した。
「航海は3回やるんだろう。それじゃあ2回目と3回目の費用は俺たちが出そう。その代わりもうけは俺たちのもので。」マルクス兄弟のチコは抜け目無く提案する。
「それはずるいだろう。船をただで使おうということか。」すぐさまロイドが反論する。
「でも船は無事に帰ってくるかどうかわからないし。そのときはまた船を作る必要があるだろう。そのときは費用を負担すればおあいこじゃないか。」とチコはいい、ハーポは大きくうなずく。
「それだったら毎航海ごとに25万ポンド払ってくれるなら、わがファミリーで船が天変地異で失ったときは保障するぜ。」とロイドが切り返す。
「ちょっとのハリケーンぐらいびくともせんぜ。3回ぐらいの航海ならちょっと修理すればまだまだ使えるぜ。もっともっと稼げるはずだがな。」とマーフィが自信ありげに言う。

議論は際限なく続き、どうしたら公平に分け前になるかどうかを決めることができた。

まずは、かかる費用だが、
船の建設費 400万ポンド
商品購入  150万ポンド 50万×3回
船員の賃金  60万ポンド 20万×3回
船の保険料  75万ポンド 25万×3回 ロイドの提案を受けることにした

航海が終わったあとの儲けや財産は
1回毎のもうけ 700万ポンド
そして、マーフィの言い分も聞いて航海後も船の価値は40万ポンドは残っているだろうと見積もられた。

まずはすべてのかかる費用を7等分して最初に出資し、1回毎の航海で利益を出し、配分することに決まった。それでは、1回の利益はいくらと計算すればよいだろうか?
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現在の会計風に整理すると下記のようになります。

売上高  700万ポンド

費用   120万ポンド (400万ポンドの船の建設費−船の残存価値40万ポンド)/3
      50万ポンド (商品代)
      20万ポンド (賃金と食料等)
      25万ポンド (保険料

利益   485万ポンド

これで、いずれ3回も同じ利益になり、7人はリスクを分担することになります。

簡単に寓話風に書くと会計の期間の概念や減価償却費の考え方、残存利益の考え方といったものがどのような構造かを少しイメージできたと思います。

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