謝れ職業人

 ちょっとツイッター主体になってこちらの更新は一年以上ぶりになりました。

 以前2ちゃんねるで拾った匿名の詩があまりに傑作だったので、拙著『家族の痕跡』(筑摩書房)などで引用させてもらいました。最近作者の方からメールを頂き、お名前を引用して良いと許諾を頂いたのであらためて掲載します。

 作者は松岡宮(松岡恵子)さんと言う方でした。ご自分のHPもお持ちです。

 http://homepage1.nifty.com/MIYA-MATSUOKA/

 ここで読める他の詩にも傑作がたくさんあります。
 


謝れ職業人   松岡宮

「ああ、今日も会社に泊まりこみで仕事だよ」

疲れた声で言う
職業人は
謝れ
全ての「だめなヤツ」に
細い声で
謝れ
「ああ、忙しい忙しい」

朝早く出てゆくひと
乗り換えの駅で朝食をかっこみ
後続列車に乗ってゆく
職業人は
謝れ
手をついて
謝れ

「俺はやっとやりがいを見つけた」
なら
謝れ
仕事にきちんと就くことは罪なのだから
それをきちんと謝罪せよ

そう、あなた
今日も働いて働いて
上司に怒鳴られてもがんばって
同僚とのおしゃべりで気晴らして
ときどき仕事でも嬉しい事があるんだよ・・・
それなら
足下を見ろ
そこに横たういくつもの白い腹を見ろ

白いブヨブヨした腹を踏みつけてサーフィンしているあなた
イエイ♪ゴーゴー♪しているあなた
内臓破裂の暖かさに包まれている
あなたは
すべての弱いものに謝罪せよ
あなたの強さを謝罪せよ

仕事

 仕事

  仕事

取引

 連絡

  申し送り

あなたがそうやって一生懸命生きる事で壊してきた
そしてそうやって一生懸命働くことで壊している
すべてのダメなもの弱いものアホなもの
恥ずかしいもの腐ったもの古くなったもの

謝罪せよ

 あなたが彼らの年金を払ってやることに対して
 謝れ
 あなたが彼らの医療費をまかなうことに
 謝れ
 あなたが彼らを保護しいたわり慰めることに
 謝れ

3月15日くもり
自分がたまたま頑丈であり
毎朝おはようと笑って出かける
そのことに
ごめんな
さい

[新刊]「『社会的うつ病』の治し方」

「社会的うつ病」の治し方―人間関係をどう見直すか (新潮選書)

「社会的うつ病」の治し方―人間関係をどう見直すか (新潮選書)

 「社会的うつ病」なるネーミングは、半分以上ネタです。治療上における、いろんな意味での「人薬」の意義について書いています。実用性は高いと思います。

 というか、すでに売れゆきで明暗が…
 「社会的うつ病〜」は、いわゆる「たちまち重版」でしたが、キャラ本はいまひとつ…こんなところにも震災の影響が?

[新刊]「キャラクター精神分析」

キャラクター精神分析 マンガ・文学・日本人(双書Zero)

キャラクター精神分析 マンガ・文学・日本人(双書Zero)

 企画から出版まで8年がかりという難産でした。
 最終章では「キャラクター(というか「キャラ」ですが)とは何か」を定義づけています。自分でもびっくりの結論ですが、たぶんこれが究極です。これを超える定義は向こう10年間は出てこないでしょう。むろん出てきたらいくらでも謝る準備はありますが。

[告知]ニコ生トークセッション 

「いま、「キャラクターと日本人」を考える 東浩紀×斎藤環」

 こんなおりですが、新刊に絡めてこんなイベントをやります。東さんと話すのはかなり久しぶりなので楽しみですね。

 で、その新刊なのですが。諸般の事情から二冊同時刊行になってしまいました。

[告知][英訳]

Beautiful Fighting Girl

Beautiful Fighting Girl

 "Beautiful Fighting Girl"の予約、いよいよ開始しました。
 イイ感じの装幀ですね。なんかちょっと感無量です。
 Keith Vincent氏の解説がまた素晴らしい。
 自分の本ながら、これがアメリカでどう受容されるか興味津々です。

 来年にはもう一冊、『社会的ひきこもり』の翻訳も、同じくMinnesota Univ. Press から出る予定です。こちらの翻訳者はJeffrey Angles 氏です。

 

[告知][イベント]

 
 朝日カルチャーセンターでアーティストの村上隆さんとのトークイベントを行います。

 出版記念・ニコ生ライブ・芸術闘争論
 日時:12月21日 19時〜20時30分 
場所:新宿住友ビル7階 朝日カルチャーセンター
当日はニコ生の中継が入る予定です。ニコ生放送は19〜20時15分まで。この講座については、twitterなどでの実況もOKとのこと。余裕があればメールでの質問にも答えられるかもしれません。
 『芸術闘争論』は画期的な本です。以前私は岡崎乾二郎さんとの対談で「悪い場所」の循環構造はマーケットの論理で打破するしかない、と述べましたが、この本を読んでますますそれを確信しました。

※しかし考えてみたら、意外にも村上さんとの対談はたぶん10年ぶりくらいです。ちょっとびっくりしました。


びっくりしたのです。

そういえばNHK-FM北山修さんの番組でお喋りしてきたんでした。北山さんとも10年ぶりくらいの再会でしたが、愉しいひとときを過ごさせていただきました。第一回はすでに放送済みですが、ちょっとリラックスしすぎ>自分

 だいたい朝日の書評で「精神分析は二度死ぬ」(トッド・デュフレーヌ『死の欲動現代思想』)とか書いた人間が、元・日本精神分析学会会長の前で気分良く語ってしまうこと自体が…いや「二度死ぬ」ってのはもちろん高度な逆説なワケですが。

 ところで第二回「戦闘美少女」篇は11月22日の放送です。ちょっと選曲がアレですがまあ気にするな。

NHK-FMきたやまおさむのレクチャー&ミュージック」
放送日:2010年11月22日(月)
放送時間:午後11:00〜23日午前0:00(60分)