チリの風  その514  2013年3月4日―10日

金曜日、峰村夫妻と山歩きをしました。曇りの日で、午前中いっぱい歩いてもほとんど汗もかきませんでした。季節の替わりを自然の中で感じました。街路樹も紅葉が始まり、落ち葉の掃除が大変ですね。
土曜日の音楽会。「雅」グループの解散コンサートでしたが、レベルの高い、聞き応えのあるものでした。
日曜日はマラソン練習。十数名のメンバーが力いっぱい走りました。帰国する山下親子と田中美希ちゃんは今日が最後でした。しかし美希ちゃん(小5)と山下皓くん(小4)の最近の記録の伸びは目覚しかったです。普通の大人よりずっと早い。ホンマやで。日本でもがんばって走ってほしい!

(政治)

1) チャべス大統領の死去
まるでウーゴ・チャべス大統領がチリの大統領のような扱いでした。連日、各テレビ局の番組は大半が彼に関連した番組でした。新聞も同様でした。チリだけではありません、スペインの新聞も同じような扱いでした。でもインターネットで見ていると日本ではごく小さな記事にしかなっていなかったようで、極端な差がありましたね。
彼の死を悼むべネスエラ市民の数が半端なものではありません。北朝鮮のように街頭で泣かないと罰則があるのではなく、市民が本気で泣いているようでした。日本の新聞には何万人の集会とありましたが、チリの報道では何十万人となっていました、テレビのニュースの群集を見ると日本の新聞社は数の数え方を知らないか意図的に数字を小さくしていると思いました。確かにそんな人気のある大統領がどこの国にでもいるわけはありません。
私は彼の実施した政策を好きではありません。自国の豊富な石油資源を利用して国内でも、国外でも極端なばら撒き政策を最後まで貫きました。そこのガソリン価格はほとんどただのような極端に安い価格で、市内の地下鉄の車内は夏でも寒いくらい冷えていました。また国有化を図って欧米と対決姿勢を続けました。べネスエラの石油は世界トップの埋蔵量ですが、国有化の同国には欧米の資本は近寄りませんね。そこで中国かロシアが接近して石油を掘り出せば、世界戦略に影響でしょう。そうかアメリカはシェールガスで対抗かな。
何年か前にエンジェルの滝を見るためにべネスエラを訪問しましたが、犯罪が多く、カラカスは世界三大危険都市に入るくらい。どこに民衆のための社会があるのか分かりません。しかし彼の人気はすごかったです。国中に熱狂的なチャべスファンがいました。
ボリビアやアルゼンチンの大統領は死去のニュースにすぐに反応してカラカス入りをしました。彼らがどのくらいチャべスから援助を受けていたか分かりませんが、クリスチーナkの場合はそれを自分の懐に入れていたかもしれませんね。 チャべスはフォークランド問題でイギリスを批判し、未だに植民地主義の考えを他国に押し付けているとしていました。もちろん盟友モラレスのために、いつか私はボリビアの海で一泳ぎしたいとチリを批判していました。
結局、ピニェラも葬式には参列しました。
ところでそのピニェラの政権もとうとう最後の1年になりました。日曜日の夜、ニュースを見るためテレビの前に座っていると、特別番組が始りました。ピニェラが出てきて、「世界各国で経済危機から社会不安が起こっているのにチリではそれがない。私が政権を引き受けた3年前、あの大地震から2週間後だったが、その負の後始末から始め、苦戦していたチリ経済を立て直した。失業者数が減少し、賃金も上昇した・・・」と宣伝を始めました。
政権最後の1年間の目標発表かなと思っていると「最低賃金を20万ペソに引き上げます。3月ボーナスとして各家庭に4万ペソを差し上げます・・・」
そうか今月中にバチェレットの大統領候補宣言が出そうだから、その先手を打って中間層と貧困層に擦り寄っているのだなと言うことが分かりました。問題は彼が不人気な大統領なので、チャベスと大きな違い、せっかくの甘いお誘いが茶の間にしみこまないのです。
2) 先週までボリビア兵士のチリ領土不法侵入がニュースになっていましたね。その兵士がボリビアに送り返されてから、チリのテレビ番組に国境の様子が報道されました。夜中に赤外線で人や車の動きを調べるわけです。正規のルートを離れたところにチリとボリビアを結ぶ道路がおかれています。密輸業者が作成したのでしょうか。そこを通過して物資(盗まれた車を含む)がボリビアに運ばれます。もちろん全部が盗品ではなく、ボリビアの会社がチリ経由で正規に輸入したものを、ボリビアの税金を払わないためここを通過して入国することも行われるわけ。チリのテレビのカメラに、そこを通過する車やトラックがボリビア側で賄賂を払っているのが出ますが、受け取っているのはボリビア兵でした。
モラレス大統領が口をすっぱくしてチリやピニェラを批判し、「ボリビア兵は密輸業者を追ってチリ領土に入ったもので、彼らの職務をたたえるのが当然で刑務所に入れるのはまさに政治犯扱いだ」とコメントしました。もちろんチリの警察・軍隊がこのテレビの番組の内容を知らないわけはなく、チリ政府の指示で沈黙を保っているわけですね。チリの反撃はそのうちですかな?
兄貴のチャべスの死をそのモラレスは毒殺されたものとコメントしています。チャべスはそれを避けてべネスエラの病院に入らずキューバで手術を受け、死期が迫ったので本国に戻ってきたのだと思います。
金銭面も含めチャべスの援護がなくなったモラレスはチリと対決できるかな?

(経済)

1) 物価上昇率
2月の物価上昇率は0.1%、直近の12ヶ月の数字は1.3%。インフレから程遠い数字ですね。
2) 事務所の空室率が2011年以来始めて増大しました。このため2013年は今までのように焦って建設をするのではなく、じっくり検討する時期に入るとか。
3) 株式市場
世界中で株がブームのようですね。ダウジョーンズは14000ポイント台ですが、17000まで行くだろうと言われます。アメリカが借金の積みあげに失敗したので、財政難になるというのとどう関係があるのかな? 
チリ市場もそこそです。銅の価格もそれほど下がっていないし、ペソの為替もペソ高に動いています。
原油の値段は金曜日少し上がりましたが、90ドル近いところ。チリのガソリンの値段が最近、下がり始めています。

(一般)

1) 旅行
夏休みに国内旅行をした人の数が発表されましたが、この1・2月に850万人が国内旅行をしたとか。チリの人口の約半分ですね。2011年には550万人でしたから、急速な増加。それだけチリ人の金回りが良くなったのでしょうね。
2) アルツハイマー
先進国ではこの病気で死去する人が急激に増加しています。この20年で数倍と言う速さ。例えば10万人当たりアメリカでこの理由で死亡した人は1990年で10人、2010年は52人。同じくスペインで14人が55人に。チリも先進国のように5人だったのが23人に急増。2010年で人口対比でアメリカは6%の人がこの病気で亡くなりましたが、英国は5%フィンランドは11%、チリは4%。ところがブラジルは0.8%、べネスエラは0.3%、ボリビアは0.1%。くよくよするのがいけないのでしょうか?こんなところでチリが先進国の仲間入りはやめてほしいですが。
3) 養育費
新聞に一人の男が子供の養育費の支払いを拒否して15日間刑務所に入れられたとありました。チリでは別に珍しいことではありません。(普通)母親が離婚した元夫の父親を訴えるわけですが、この男は裁判所の判決を無視したので刑務所送りになった次第。しかしこの男の言い分は「チリの平均給与は(日本円にすると)10万円、20万円も稼ぐと一人前といわれるのに、裁判所の裁決は月額100万円。私の二人の子ども(9歳と10歳)の生活費に100万円は不釣合い」
この男はチリでも有名な医者で毎月1000万円(月収です。年収ではありません)を稼いでいるらしい。しかしその額を要求する別れた奥さんもかなりのものですね。

(スポーツ)

1) サッカー
ワールドカップの南米予選が近づいてきました。さぁチリ代表は新監督の下でどんな試合振りを見せるのか。不祥事の連発で代表から外されていたバルディビアがまた召集されたのが最大の話題。サッカー場の外で何度も問題を起こし、代表から外されてはまた戻ってくるのが不思議。それから代表に呼ばれたスアレスが、自信がないと辞任。どうなるかな?
リベルタドール杯の結果ですが、チリ大学は敵地アルゼンチンでニューウェールズを破り第7グループの首位に立ちました。ワチパトは引き分け、イキケは敗戦で2回戦進出は難しそう。
国内リーグ戦は先週首位だった3チームのうち、オヒギンスが勝って首位を維持。2位はコブレロアになりました。カトリカは本拠地で敗れ3位転落。その試合を伊藤さんと見に行ったのですが、くだらない試合で見ていて歯がゆいばかり。いつものように怒鳴りまくることもなく・・・がっかり。


以上