チリの風  その691   16年8月1日―7日

五島龍のバイオリン演奏会に行きました。彼はチリで一流のオーケストラをバックにメンデルスゾーンの曲を演奏しました。会場が教会だったので、私の席は彼に近く、演奏しているときの表情も見えました。20代の彼はこの先、世界的な演奏家になるでしょうね。素晴らしい。
土曜日のサッカー教室はちょうど20名の参加者。最初のシュート練習の時、2チームに分けて競いますが、校庭の外にボールを飛ばすとホームランとして、マイナスの得点とルールを変えると、ホームランが少なくなりました。ルールの変更で練習の精度が上がったわけです。
日曜日のマラソン練習は6名の参加。全員、仲良く10キロを走り切りました。速度は遅くても10キロ走れるだけでうれしいです。

(政治)

1) バチェレット
毎週同じです。チリの風はバチェレットを応援しています。世論調査の今週の発表では、彼女を支持するは17%、反対が81%ともう落ちるところまで落ちています。これが支持するが一ケタになったら、デモ隊が道路に溢れるかな?
与党側も次の選挙を考える必要があるから、バチェレットに退陣要求したりして。ブラジルのケースが思いだされます。
もう彼女だけでは現状を立てなすことはできないでしょう。世間の目をそらすために内閣改造が言われています。
彼女は今週は第8州のタルカワノに飛び、良くわかりませんが、海軍基地の行事に参加しました。
もっとも、今週で一番大事だったのは次の項目です。
2) 年金問題
最近のチリで最重要課題は大学教育の無償化ではなく年金関連事項です。
現行の年金制度を考えたピノチェット時代の大臣ホセ・ピニエラは外国に住んでいましたが、チリに帰国し、同問題に関し発言を始めました。
彼は自分の仕事を車のベンツに例え、「車は立派でもガソリンが無ければベンツは動きません」つまりシステムよりそれを運営する側に問題があると言うわけですね。
「システムはちゃんと機能している。、従業員の積み立てるお金が低いともらえる年金が少ないのは当然。それなら給料から天引きされる額を現行の10%から14%まで上げるべし。そして平均寿命が伸びているのだから、年金生活に入る年齢を少し遅らせればよい」としました。
彼は通常の年金生活者は65万ペソ(今の為替では1000ドル)を受け取っているし、それを否定した年金運営会社連合代表を嘘つきと批判しました。
今まで、そういった詳しい数字・事項は公表されていなかったのですが、とうとう今週それが明らかになり、昨年、年金を受け取ることになった労働者の僅か16%が30年以上の積立てをしていたことが分かりました。つまり30年以上積み立てていれば彼が発表した通り、年金額は十分なものになっていることが確認されました。逆に昨年、年金生活に入った労働者は大半が15年未満の積み立てで、支給額の平均は14万2千ペソだとか。
彼は話を更に進めて「私は問題削減・軽減委員会に参加させてもらいたい。政府が公立の年金会社を設立する気ならその設立の援助をしたい」と発言。
もちろん政府側はそれを全く無視して、独自に委員会を発足させました。バチェレットはラヂオの番組で「特に女性の年金アップを図りたい」とコメントしています。
週の初めにモネダ宮殿で開催された経済関連の大臣会議で、年金問題が取り上げられ、現在の問題をどう解決するか、どうすれば問題の軽減化を図れるかが話し合われました。公営年金会社の設立が考慮されています。
労働組合連合の会長は私営企業に利益を吸い上げられる現行システムを止め、政府が年金基金を運営する仕組みになぜ変更しないのかと厳しい批判。彼女は共産党員です。
バチェレットはそれを受け入れたいのかもしれませんが、表面上は過去のシステムに戻ることはしたくないとコメント。その過去のシステム、社会主義的なやり方ですが、その代表はアメリカです。なぜアメリカが社会主義的システムを使い、明朗なチリ方式を使わないのか不思議ですが、ちゃんと新聞にアメリカの年金システムの現状が発表されました。なんとわずか2州だけが健全で、つまりほとんどの州が年金で破たん寸前とか。2013年の負債は9680億ドル、10年前は2335億ドルの負債だったので、急激に負債が増加しています。アメリカ式をまねしている日本も破産寸前ですね。
そのピニエラは前大統領のセバスチァン・ピニエラの兄ですが、兄弟の仲が悪く、口もきかないそうです。
3) 前内務大臣のブルゴスが、この日曜日、現在の与党連合(新多数と呼ばれています)はこれで最後、次回は違う組織になるだろうと発表。彼の属するキリスト教民主党(DC)は共産党と組まないことをコメントしました。もちろんこれは初めて聞くことではないですが、中道のDCと一番左の共産党が連立することは理論的も不可能で、次の大統領選挙はDCが思い切った作戦に出ることもあり得ます。例えば、DCの候補者を推すならDCは与党連合に残るが、ほかの候補者、例えば社会党なら連合を出ると言うわけです。その時、独自に自党の候補者を推すか、与党側の中道、国民改革党RNと組むことも考えられます。一番極端な場合は、現在の野党連合が推すだろうピニエラを担ぐこともありそう。政界が大混乱になりますね。

(経済)

1) GDP
6月は0.8%の伸び。5月が1.8%でしたから大きなダウン。今年は1%まで行けるかどうかですね。
しかし不思議なことに、この冬休みにアルゼンチンを訪問した外人の首位はチリでした。歴史的にトップはブラジルだったのですが。しかもチリ人観光客がアルゼンチンに落とした金も半端ではないとか。中国人の爆買い似かな??。
2) コデルコ銅公社がエンジニアの解雇を始めました。目標は9%の900人とか。そこだけでなく、他の鉱山もすべて首切りの嵐。カセロネスは10%の首切りとか。エンジニアのレベルだけでなく、マインのトップクラスの入れ替えも盛ん。この先どうなるのかな?
銅の価格は今週1.2%のダウンでしたが、そこそこのレベル。銅価格が下がったので、それにつられてペソの価格も下がり1ドル657ペソで終えました。

(一般)

1) 世界の住みやすさランキング
今週発表されたそれで、チリは世界の25位。ラテンアメリカでは首位でした。日本は14位。
欧州の国が上位を占めていますが、ラテンアメリカではチリがトップ。その後にコスタ・リカとウルグアイがつけています。私は両国を訪問したことがありますが、確かに派手さはないが落ち着いていますね。チリがこの先もトップを守ってほしいところ。
2) マプチェ問題
更にマプチェによる放火事件が継続です。
また先年、家屋に放火され夫婦が焼死した事件で逮捕されたマプチェの裁判が行われていますが、検察側や裁判所側の関係者が継続的な脅迫を受けており、警察の護衛を受けなければ仕事ができ無い状態とか。そこまで行っているのに政府の無策は目に余りますね。

(スポーツ)

1) サッカー
今シーズン、もっと選手の強化を図ったチリ大学は最初の2戦が終わった段階で、1敗1引き分けと全く目が出ず、監督の交替がやむを得ないとなってきました。慰謝料として100万ドル以上彼に払う必要があるのですが、損をしてでも監督の交替をしたいらしい。
2試合が終わった段階でトップはウニオン・エスパニョールとイキケ、両チームとも全勝です。

2) オリンピック
体操のチリ代表のトマス・ゴンサレスは自分の演技に対する評価が低い、地元のブラジル選手の場合は極端に評価が高いと審判に対する疑惑を発表し問題になっています。うまく行けば彼はメダルが取れそうなところにいるのですが。
水泳、乗馬、ビーチバレーとか最初の種目でチリは負けが続いています。昔はオリンピックが始まると国中が沸いたのですが、今回はかなり冷えています。


以上