著作権問題が市場に及ぼす歪み

著作権問題によって国語の過去問集が入手しづらくなっている。例えば、赤本で有名な教学社からこれまで出版されていた「東大の現代文」「京大の国語」シリーズが絶版となってしまっている。23年分とか25年分に渡って東大や京大の過去問を網羅して収録してくれている国語教師としては非常に有り難い本だったのだが、おそらく著作権の問題で出版できなくなってしまったのだろう。現在、これらの書籍を入手するためには中古を利用するしか手がなく、オークションや古本屋では定価の2倍近くの値段で扱われてしまっている。こんな所にも著作権問題による歪みが現れて始めている。


赤本に続き、センター試験の国語第一問は旺文社の「全国大学入試問題正解」においても「省略」されている。もはや、どの出版社もこの別役実氏の文章を掲載することができなくなってしまったかと思っていたら、なんとZ会の「平成19年用センター試験過去問 英数国 」では、この別役実氏の文章を使用したセンター国語の第一問が完全な形で収録されているのだ! Z会と言えば「著作権を侵害していたとして、作家ら約80人に謝罪を申し入れ、和解金約6000万円を支払った」という記事が記憶に新しいところだ。Z会は6000万円という代償を払って「日本ビジュアル著作権協会」の作家の文章を掲載できるようになったというわけか。


もし僕が受験生であったのならば、「評論の載っていない赤本」よりも、「評論の載っている緑本」を買うだろう。当然、「日本ビジュアル著作権協会」に従わない出版社は市場のおける競争において、決定的に不利な条件を背負うことになってしまう。現在、教育・出版の世界では「日本ビジュアル著作権協会」様に跪き、膨大な金額を上納したものだけが、商売を許される状況が今生まれつつあるのだ。


さて、3大予備校によるセンター過去問集「白本(代ゼミ)・黒本(河合塾)・青本駿台)」は、センター国語の第一問を収録できるのだろうか? 6月後半現在、青本は他教科は出版されているが、国語だけはいまだに店頭に並んでいない。他の予備校はどう出るのか、今後も注目していきたい。

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