マニラのある朝の光景

ホテル25階からマニラ市外を遠く望む。遠く
まで、すっきりしない重い空が、この国の停滞感を
漂わせていた。
 餓死するほどの貧しさではないが、聞けばこの国は
ひとにぎりの富裕層のために存在しているようで、
それが、自らの国の経済発展を妨げているように見え
るのは、私だけの感想だろうか。
 帰りの国際空港で、制服の荷物検査官から、袖の
下を要求された。彼らは、誰が教えたのか「きもち、
きもち」と言う日本語でそれを要求して来た。びっくり
するとともになぜか悲しかった。この係官たちが、ほん
とうの日本語の「きもち」が、わかるのは、いつの日な
のだろうか。