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おいらにとってのチープ・トリックは、F1中継のエンディング・テーマ「In This Country」(70年代後半以降に生まれたチープ・トリック・ファンでこれを無視しているような人は信用できないと思う)を歌っていたロビン・ザンダーがリード・ボーカルのバンドというイメージしかないんだが、本作にはヤラれた。
ルックスが衰えたせいか、ついにメンバーがアニメ・キャラ化してしまったジャケットが内容を象徴しているかのように、全編に渡って彼等の全盛期である『Heaven Tonight』『Dream Police』を彷彿とさせる、ほとんどセルフ・パロディともいえる既聴感バリバリのパワー・ポップ・サウンドが展開されているのだ。つまりは自分達自身でチープ・トリック版ラトルズを演じてしまったような感じですな。そしてチープ・トリックはリック・ニールセンのユーモア・センスが大きな魅力となっているバンドなだけに、それがまた似合っているんだわ。
今更チープ・トリックに新しい展開を期待している人もいないだろうし、昔からのファンを納得させることができて、新規ファンを開拓する可能性も十分に秘めた、本作の楽曲のコンパクトで親しみやすい方向性はまったくもって間違っていないと思う。全12曲41分。これは素晴らしき拡大再生産である。ちなみに、先行シングルにもなった「Pefect Stranger」はリンダ・ペリーとの共作曲。今や職人ソングライターとなってしまっている彼女だが、そういえば元々は4ノン・ブロンズというハード・ポップ・バンドのメンバーであったことを改めて実感させられたのであった。
あと、「Decaf」はウイングスの「To You」へのオマージュと解釈していいんですかね?