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今夏の当サイト最重要劇場公開映画が『ハッスル&フロウ』だとするならば、最重要DVDスルー映画は『セレニティー』だ。
監督・脚本のジョス・ウェドンは『バフィー 〜恋する十字架〜』のクリエイターとして有名。ただし、そういう印象で望むと少し肩透かしを喰らうかも。なぜなら、これはSFアドベンチャーの枠組みを借りた西部劇の傑作であり、ジョン・カーペンターのエッセンスを噛み砕いてプログラム・ピクチャーとして提示してみせた一連のポール・アンダーソン映画に近いタイプの作品だからだ(もちろん『バイオハザード』の方のポール・アンダーソンだぞ)。まあ、宇宙一のオタクこと「ミスター・ユニバース」にデヴィッド・クラムホルツをキャスティングするあたりはいかにもジョス・ウェドンらしいセンスなんだけどさ。
ちなみにこの映画は、シーズン途中で打ち切りになったTVシリーズ『Firefly』を、ファンと製作陣の熱意によって映画化にこぎつけた執念の作品でもあるそうで、観ていても作品に込められた愛情の深さが尋常ではないことが伝わってくるし、実際にそれが映画としての完成度に結びついていると思う。各登場人物に十分な見せ場が与えられ、俳優達がしっかりと演じきっているのは、そこに愛があったからこそだろう。素晴らしい。DVDに収録されたメイキングも感動的で、映画を最大限に評価したくなるというもの。
っていうかジャンル映画で、IMDbでも約46000票の得票で8.1という高評価(2006年8月14日現在)にも関わらず、日本で公開しないってのはどういうことよ。原作の『Firefly』が日本未放映だから? でも、そんな事を言ったら、『Mr.&Mrs. スミス』の元になったTVシリーズは、『ズーランダー』の元になったパロディ・コントは、一体日本に住むどれだけの人が見ていたというのだろうか。そこらへんはプロモーションのやり方次第で解決できる問題のはずなのになあ。勿体無い。
とりあえずクライマックスにおけるリバーことサマー・グローの勇姿に惚れろ! 必見。