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ハゲたなあ。ってしつこいですかそうですか。と、「しつこい」と言えるぐらいの早いペースでリリースされたレイ・デイヴィスの2ndソロ・アルバム。だって、前作が出てからまだ1年半しか経ってないんだぜ。60歳過ぎのベテラン・ロッカーとしては驚くほど短いインターバルだ。
初の本格的なソロ・アルバムということで話題になった前作は10年遅れの厚化粧なサウンドが古臭い凡作だったが、今作は短期間で録音したせいか、そういった不満を抱くことはなかった。楽曲の方も、やたらとこねくりまわした感のある前作より遥かにキャッチーなナンバーが揃っており、「Waterloo Sunset」のセルフ・パロディ的なナンバー(「Peace In Our Time」)があったりすることからも、レイ・ディヴィスの好調ぶりが窺えるというもの。私見では『UK Jive』以来の傑作だと思う。
驚いたのは、オープニング・ナンバーの「Vietnam Cowboys」でいきなり「ベトナムで映画を撮ろうぜ!」と歌われたこと。『ダージリン急行』でインド・ロケを敢行したウェス・アンダーソンとの奇妙なシンクロニシティ! 要するに、このアルバム自体が『ダージリン急行』が完璧なキンクス映画であることの証明に図らずもなっているのだった*1。そう考えると、アルバム最終曲の「The Real World」なんて、ほとんど『ダージリン急行』のテーマ・ソングともいえる内容だ。なにしろこんな歌詞なのだから。
だから南に来たんだろ
故郷を離れて
現実の世界から逃れようとして
でも、「現実の世界」なんてどこにあるんだ?
いつの日か、君は目を覚まし
きっとこう思うはずさ
「僕は生きている。それこそが現実なんだ」
「The Real World」
というわけで、『ダージリン急行』を観る際のお供には『ローラ対パワーマン、マネーゴーラウンド組 第1回戦』だけじゃなくて、こちらも是非にどうぞ。全12曲49分。
Ray Davies - Working Man's Cafe
*1:まあ、「Vietnam Cowboys」自体は、実はグローバリゼーションに対するかなり強い皮肉がこめられた歌なんだけど。