読む1日

雨の日は、読書をするに限ります。最近あまりにも本を読んでなかった自分を猛省してむさぼるように読んだ。

ジャージの二人 (集英社文庫)

ジャージの二人 (集英社文庫)

淡々とした、でも淡々としすぎていないこの人の文体が好きで好きでたまらない。かなしみから遠いところにいるようにみせて、でもものすごく深いかなしみのただ中にいる主人公と、それをとりまく営み。なんてことないけれど、世の中はおしなべてなんてことのないことの方が多いに決まっているのだ。なんてことないかなしみをすくい取るのが、本当にうまい人だと思う。
トリップ (光文社文庫)

トリップ (光文社文庫)

また、だ。くるしくて仕方なくなるのに、この人を読み続けるのがやめられない。読み終わってしばらく経った今でも、すぐにくるしい気持ちがよみがえってくる。壊れてしまいたいのに壊れてしまえない人々。せめぎ合いの中で、それでも日常を生きていかなければならない人々。報われたいのに、報われることのなんと難しいことか。それでも生きていく。手探りで、どこへたどり着くのかわからぬまま、それでも前に進むしかないのだから。
笛社会

笛社会

これをエンドレスでかけながら、2冊を1日で読み切った。素朴で愛らしいリコーダーの音色はこの2冊の作風にとてもよくマッチした。かわいらしいのに切ない。たとえていうなら、町内会のスピーカーから鳴り響く5時を告げる夕焼けこやけのような。特に「カントリーマーチ」が「トリップ」の泣かせる場面でかかったときは、本当にイッてしまうかと思った。ちょっとたよりない、ほがらかなのにどこか切ない、よく聴くと伸びる影が見えるような旋律が、作中の不器用な人々の姿とだぶって、本当に視界がぼやけたりした。
今読みたい本はどれも単行本だ。文庫になるまでだいぶかかりそう。ああ、近くに図書館ができればいいのに。