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読書の記録

歌野晶午「密室殺人ゲーム王手飛車取り」

密室殺人ゲーム王手飛車取り密室殺人ゲーム王手飛車取り
歌野 晶午

講談社 2007-01-12
asin:4061825135

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ネットのチャットで、推理ゲームを繰り広げる五人の推理マニア。ただ彼らが一般のミステリーファンと違うのは、自ら実行した殺人を謎として出題することだった…!

いや、面白い。すごいよウタノ。最初こそは、遊びのために殺人を行う凄惨な設定にひいたけれども、その抵抗をクリアして読めば素敵なミステリーである。なにしろ、名探偵が殺人犯なのだ。しかも持ち回りで、誰かが犯人となれば残りの者たちが探偵となり謎を解く。被害者のことを考慮しなければ、究極のミステリ環境だろう。無論、現実のミステリファンは探偵を望みこそすれ、殺人犯にはなりたくないものだが。
本作では、一線を踏み越えてしまった人々の狂奔、興奮、そして冷徹な推理が恐ろしいほどの魅力をもって描かれている。だからこそ、この大罪には、かくのごときラストをもって迎えねばならなかったのだろう。チャットのメンバーそれぞれのキャラが立っているのも素敵だ。流れるように交わされる血も凍る内容の会話、戦慄のユーモア、見事な文体。だからこそ最終章の衝撃は、はかりしれないものがあるのだ。余程の傑作が量産されない限り、本書を2007年ミステリーベスト上位に入れたい。

p.s.ひょっとして「ザンギャ君」は「残虐」ん?