香港に週末の朝が来る。こちらの言い方でいうと星期六、か。
 地元のテレビを映してみる。ニュースの時間。耳に馴染む軽快なオープニングは香港を象徴する音の一つだ。同じニュースが30分毎に繰り返される。

 窓外の景色。マンションの下には公園が広がっている。ここのホテル、城市花園という名前なのだけど、その花園とは下の公園のこと。狭い土地に多くの人が暮らす香港。こんなささやかな公園でも、この街にとってはランドマークになるらしい。
 9時を過ぎて出掛ける。今回の滞在はホテルに朝食を付けていないので、街中に出てお好きな朝食を、という心積もり。今朝はちょっと足を伸ばして中環の先まで行く。

 中環まではちょっと距離があるので、地下鉄で移動する。ホームドアがあって電車あ撮れないので、駅名だけ撮ってで乗り込む事になる。
 混雑した電車に揺られ5駅。中環に到着。少々歩いて目的の店へ来たのだが、今日は休業であった。急遽行先変更。近くにある粥の店に入る。


随分前にも来たことがあるお店。行列が出来る、と言う程ではないが、人の途切れない店である。
 注文。粥の店なので、夫婦それぞれ粥を一杯ずつ。それに油條 を頼む。粥が1杯32HKD。日本円に換算すると480円少々だろうか。レートの影響もあるがインフレの影響で値上っているのだろう。家賃も上がっているし。

 まもなく妻の頼んだ肉丸粥がやって来る。

 その後で、自分の頼んだ魚片粥が。何か変だなと思ったら、

 葱を忘れていたようで、慌ててレンゲ一杯の葱が運ばれて来て、投入される。
 思いがけない葱山盛り。少々余った葱が妻の所にもおすそ分け。
 日本の粥と違って、米粒が分からないぐらいに煮込まれた中華粥。スープ感覚で頂ける。昨日は少々飲み過ぎただけに、粥の朝食は胃に優しく、体に優しい。
 朝食を頂いた後は少し観光。今日はベタな香港観光を志す。
 中環の街。山麓から海側に向かって歩いてバスターミナルへ。

 15番のバス、山頂ゆきに乗り込む。香港島で山頂と言うと、広東語表記で太平山の事。「酒は天下の太平山」の太平山ではない。
 2階席に乗り込む。

 何故か座席、左側だけが埋まっている。右側なら席が選びたい放題だったけど、唯一空いていた左側の席に座ると間もなく出発である。
 バスは中環から灣仔へ。ここでトラムの通りをずれて山腹へと入って行く。登り道に入ると、 

 左手に香港の街並みが現れる。この景色を見たくてみなさん左側に陣取っていたのかと思う。
 バスは本格的に山登りを始める。

 跑馬地の脇を登ってゆくようだ。このバス、一度、山頂からの下山に使ったことがあるけど、その時は夜だったのでどこを通っているのかさっぱり分からなかった。
 バスはどんどん高度を稼いでゆく。山腹の高級住宅地に差し掛かったようで所々にマンションがあってバス停が現れる。降りる人もちらほら。

 交差点で山頂への道を選ぶと左手の車窓には香港島南シナ海側、香港仔が見えてくる。
 30分で山頂のバスターミナルに到着する。

 山頂にも立派なバスターミナルがある。
 太平山。英名でビクトリアピーク。言わずと知れた香港有数の観光名所である。山としての標高は500mを越えるが、この辺りは標高400m弱。それでも少々肌寒いぐらいだ。長袖シャツにカーディガンを羽織ったがそれでも寒い。

 先代のピークトラム車両が展示されている通り山頂のバスターミナルはピークトラムの山頂駅のそば。観光客が闊歩している。日本語の会話もちらほら聞こえる。空港でJL29を降りてから日本語の会話、というのは全く聞く機会が無かったが、日本人はここにいたか、と思う。ツアー客らしく添乗員の説明する声が自分の所まで聞こえてくる。「パンダホテルはあちらの方向です、見えませんけど」
 太平山は夜景の名所だが、昼間も景色はよろしい。

 手前に灣仔、銅鑼湾の景色。ビクトリア湾を挟んで向こうは九龍半島啓徳空港のあったあたりだろうか。九龍は霞んでいるのが残念。

 こちらは直下、中環と尖沙咀だろうか。
 この時間帯。目茶苦茶混雑している訳ではないので記念写真を撮ったり和気あいあいとした空気が流れている。
 景色はこのぐらいにして辺りをぶらぶら。山頂廣場というショッピングモールに‏入る。お手洗いが目的だけど、ついでに中をちょっと。

 フロアの一角にトラムのグッズを扱う店がある。この類の店、西環のM80が有名だと思うけど、こんなところにもあったのか少々覗いてみる。

 店内にはトラムの車内を模したディスプレイがある。半分は120号車、半分は更新車。一番先頭の椅子は実際の椅子で腰かける事も出来る。
 更にモールの中をぶらぶら。エッグタルトの名店が出店している。単品は8HKD、コーヒーとのセットは16HKD。コーヒーが安いのでセットで買い求める。

 南シナ海を遠くに臨む屋上の展望デッキで頂く。
 さて、そろそろ次の予定へ。下山はピークトラムに乗る。運賃は28HKD。安くはないが、香港名物の一つ。一度はお世話になりたい。
 改札でICカードをタッチしてホームへ。並んで電車を待つと間もなく

 クラシカル風の電車がやって来る。登山してきた人の代わりに乗り込むと座れる。だいぶたくさんお客さんが待っているように見えたけど実数はそうでも無かったようだ。
 間もなく下山。電車が動くと

 中環のビル群が景色に広がる。途中、いくつか駅があるのだけど、この電車は通過する。10分程で灣仔のちょっと山側にある駅に到着。

 ピークトラムの乗車待ち。ホームから改札外に延々と続いている。下手したら1時間近く待つんじゃないかという勢い。登りはバス、帰りはピークトラムという選択肢、なかなか冴えた方法だったようだ。
 ピークトラムの駅からはバスで中環、天星埠頭までバスがでている。香港では珍しい平屋建てのバスで

 天星埠頭の一つ手前まで行く。2時間ほど前にバスに乗ったターミナルにほど近いが、地下鉄東涌線の香港駅が目的地への次の手段。地下鉄に乗る。
 東涌線から西鐵線に乗り換え。九龍半島の新界へと向かう。地下鉄が地上に出て30分程。元朗で降りる。

 さらに新界に張り巡らされた軽鐵に乗り換える。西鐵線との乗継の場合にはトラムの運賃が無料になる。

 軽鐵を降りる。香港の中心地からすると田舎の匂いがする新界の繁華街。人の数は一際多い。本土の人が買い出しで来ているのかとも思えるが定かな事は分からない。
 この賑やかな街。狭苦しい歩道を人とすれ違うのに苦労しながら歩く。間もなくたどり着くのが飲茶で有名な店。

 前も一度訪れたことのある店。順番待ちのお客さんで溢れている。日本のファミレスと同じように名前を書いて読んでもらうのを待つのだが、30番ぐらい順番を待つことになるようだ。
 しばらく待っていると後から来た二人連れ。すぐに案内される。おやと思ってみると2人連れの先客、みんな帰ってしまったそうで、案内された。

 店内。大きな円卓を囲むお客さんが多い。大家族やグループ大勢で来る所らしく、二人用のテーブルは中途半端みたいだ。
 2人で6品頼み、お茶を飲みつつやって来るをの待つ。

 一番最初にカステラが来た。

 ついで芥蘭がやって来る。この二つ、妙な組み合わせを頂いていると

 点心が4品、同時にやって来る。テーブルの上が急に慌ただしくなる。文句なく美味しい。
 一通り頂いた後で1つ中途半端に残ったいくつかの品で飲茶ドラフト会議。全てが皿から消えるまで30分少々。
 店を後にして軽鐵の駅に戻る。

 今日はもう少し新界を歩く。再び軽鐵に乗る。香港島のトラムと違って専用軌道が多く、速度も出る新界の軽鐵で数駅先に。

 屏山という駅で降りる。ここから西鐵線の天水圍駅までの約1㎞が散策の道となっている。香港が世に知れる前、12世紀ごろから続く古い村の見学コースだ。

 軽鐵が走る幹線道路沿いから一本奥に入るととたんに景色が長閑になる。香港というより、台湾の田舎街、という風情になる。

 それでもやって来たバスは香港らしく2階建てバス。その時だけこの場所この時を意識する事になる。

 家の軒先に犬が寝そべる。香港と言うよりタイ、と言いたくなるような景色。
 この道を歩いていると時折自転車が走って来る。近所を走るためのママチャリ、じゃなくてスポーツとして乗るようなサイクリングの自転車。自転車は歩道を通るのがルールのようだが、歩いている自分たちをそこのけそこのけと勢いよく走って来るような人は皆無で、自分たちが端によると遠慮しいしいゆっくりと走って行くような人ばかり。香港の人たち、こんなに穏やかだったかと認識を新たにする思いだ。


 保存されている村に入る。平屋かせいぜい二階建て、石造りの家が並ぶ中を歩く。歴史の散歩道、とされているけど人の住んでいる現役の街でもあり、生活の匂いも感じつつ、石造りの家や寺院を眺める。
 人の住んでいる家は中に入れないが、寺院ならちょっと中に踏み入る事も出来る。

 凝った模様だ。いつの時代のものだろうか。
 更に先に進む。


 木々は南国の雰囲気、弱々しい光は冬を物語るような雰囲気。一体ここはどこなのだろうと思ってしまう。

 再び古い家屋。現役の家屋であり、中の見物は不許可、と表示がある。外から写真を撮るにとどめる。すると

 家の子どもが出てきた。生活感に満ちた景色だ。
 もう少し歩くとゴールの西鐵天水圍駅。その手前に

 塔が建っている。聚星塔といい天文観測をした所だそうだ。700年前の建物だが、その背景には天水圍駅、そして、現代の塔である高層マンションがでんと構える。後で駅のコンコースから塔を眺めたら、見下ろすような形になった。
 時刻は15時半を過ぎた。西鐵線で来た道を戻る。途中、荃湾線に乗り換えて降りたのが太子。駅から少し歩く。


 寄り道したのが菓子屋さん。妻の誕生日を祝うため、小ぶりな誕生日ケーキを買い求める。店の人、名前入りのプレートとろうそくを付けてくれる。このケーキが荷物になるのでひとまずホテルまで戻る。戻ると日が暮れる時間。

 ケーキはひとまず部屋の冷蔵庫に保管。夕食を食べに出かける。向かった店はホテルの近所。

 ベトナム料理とタイ料理を供するというその名も越泰。そのまんまの名前。ベトナム料理、タイ料理。各々は日本でも人気だし香港でも数多くの店を見かけるが、両方が組み合わさった店は初めて見た。
 空いているからか窓際の席に案内される。メニューを渡され、二か国の合戦状態になっているラインナップから適当に選ぶ。

 まずはビール。ベトナムの銘柄を頂く。ジョッキに注がれドラフトビアみたいな格好だが、これは缶から店の人が注いでくれたもの。
 料理は両方の物を適当に頂く。

 生春巻き。これは正直イマイチであった。

 フォーは間違いようのないお味。

 泰からはソムタムに登場して貰う。現地の物とちょっと違う感じもあるけど、雰囲気は出ている。
 結論としては、どちらも現地で頂こう、でいいかと思った。
 入店した頃には空いていた店もそこそこ賑わうようになってお暇する。まだホテルに引きこもるには早い時間。

 トラムで繁華街の銅鑼湾まで足を伸ばした。昨日やりそこなった買い物やら何やらを志す。お土産物を少々。香港でお馴染みのグッズショップ、GODや?台湾からやって来た誠品書店を覗くと1時間半ほど。

 帰りもトラムに乗る。昨日は二階の通路が立客で埋まって降りるのにも一苦労したが、今日は程よく席が埋まる程度。小さく開いた窓から涼風が吹き込んでくるショートトリップになる。