「自治体倒産時代」という新書

自治体倒産時代 (講談社+α新書)

自治体倒産時代 (講談社+α新書)

この新書は財政破綻の夕張、関空特需を見損なった泉佐野、「1%条例」の市川等などの具体的な事例を挙げながら、地方の今を述べている。
地方の時代、地方分権という言葉が盛んに語られる。中央集権型政府がもたらしてきた弊害が背景にあるだろう。かといって、地方政治(自治)がきちんと機能しているかというと、そうではない。この本の取り上げるような失敗例もあるし、政治への参加の指標とも考えられる首長選挙、地方議員選挙の投票率は決して国会議員選挙の投票率より高いといえない。注目を集めた名古屋市長選でも50%をほんの少し超えただけである。つまり、地方政治は中央政治よりも位置的には近いが、市民の参加意識・統治の当事者意識は大して変わらない。いや、むしろ低いかもしれない。だから、中央から地方へ統治機能が移れば、うまくいく(=今の弊害が改善される)という主張*1には賛成しかねる。
浅野・北川・橋本・片山・増田のような改革派知事*2といわれた首長の時代は、彼らの政策が全国的に注目された。でも、それぞれの県民が彼らの為した政策を具体的に振り返られるだろうか。私自身も改革派知事の県に住んでいたが、まあサンプロとかによく出とったかなという程度の思い出はある。産廃税やRDF導入と原発撤回という政策を思い浮かべたが、具体的に評価できるような知識*3はまるでない。つまり、断片的な政策名くらいは覚えているものの、内容とその結果は不明である。そりゃ、選挙権もなかった時の話なので、平均以下のことしか知らないだろう。でも、もし選挙権があったとしても、中央と比べた場合のメディアが割く情報量の相対的少なさのため、ちゃんと評価して投票することは出来なかったと思う。
候補者を選ぶ要素の大きい首長選で現職すら評価できる自信がないのに、新人を評価などできるのか。ただの人気者に騙されないか、不安である。二元代表制をやめ、ある程度政策パッケージの異同がイメージできる政党を中心にした議院内閣制の可能性を考えたくなった。

*1:本書にはそんなことは書いてなかったきがする

*2:田中康夫(現参議院議員)?も

*3:RDFは事故が起きたので失敗?