文楽

本自体のつくりや巻頭の文字などとてもスタイリッシュな出来上がりと思ったら田中一光氏が構成を担当されているのだった。だからといってデザイン中心なのでなく、昭和16年から19年にかけて若き土門氏が精根込めて文楽の写真を撮ったことが巻頭の土門氏の「文楽私語」という撮影のエピソードや、武智鉄二氏の解説に出ている「文楽座員調査票」というすべての座員に、住所や出生地、生業、学歴、師匠などを書いてもらった資料づくり、またラストに収録されている若き土門氏の姿から感じ取れる。図書館で借りたが手元に置いておきたくなるすばらしい書物だ。少し前に入江泰吉氏の写真集で読んだ、当時の人形の遣い手の代表格であった栄三さんと文五郎さんのことも写真や「文楽私語」から十分感じ取れた。入江氏の写真集はあたたかみがあってとても好きだったが、入江氏の写真集とはまた違う対象に肉薄する感じがおもしろかった。
写真の中に出ていた「近頃河原達引 堀川猿回しの段」コミカルで二階建てのような舞台で演じているみたいな雰囲気、興味がある。

土門拳文楽

土門拳文楽