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2015-05-18

[][]晩年

太宰の処女作品集ということで、コラージュみたいにして難解に仕上げてあるものもあるけれど、太宰の文章や構成の確かさに触れ、軟弱の化身みたいなイメージをもたれているけれど、なかなかどうして、土台がしっかりしている人だったんだとつくづく感じ入る。

好きだった作品「ロマネスク」。時代物風で三人の男が「三人吉三」のように出会う話。市川崑の「股旅」*1町田康の「告白」のような、ストイックなロマン。それがとても簡潔に描かれている。「嘘の三郎」のところに書かれている、実家にお金の無心をする時の文章テクニックなどおおなるほど!と思ってしまう。間違いなく才能だ!

津軽*2にも引用のあった「思い出」は太宰の生家に行ったところの自分にはすごく楽しい読み物だった。抒情もとてもいい。

道化の華」の、学生同士だからこその、甘ったるくもみえるだろうけれど、この年代ならではの感情の表現も好きだった。

「彼は昔の彼ならず」は、敷金を払ってくれない店子とのストーリー。「なんでそうなるんだ。。それで?」という感じもあるのだけど、そのずぶずぶとした関係を描写する筆がうまい。

とにかくいろいろな種類の作品がとりまざっており、この時点の遺書としてそれまで書いたものを集めたのがこれなんだなあという感じが味わえた。

好きだった表現

ことし落第ときまった。それでも試験は受けるのである。甲斐ない努力の美しさ。われはその美に心ひかれた。

(「逆行」の中の「盗賊」という章のはじまり)

ひとと始めて知り合ったときのあの浮気に似たときめきが、ふたりを気張らせ、無智な雄弁によってもっともっとおのれを相手に知らせたいというようなじれったさを僕たちはお互いに感じ合っていたようである。

(「彼は昔の彼ならず」より)

「始めて」は今だったら「初めて」と表現される?と思ったけれど辞書には両方載っており、この使い分けは慣用的なものとか・・とにかく、このはりきってしまう感じはなんだかわかる。

晩年 (新潮文庫)

晩年 (新潮文庫)

weetabixweetabix 2015/06/16 15:55 ぽんさんこんにちは。私は「晩年」のなかの、中国人ワンタン屋とロシアの花売り娘の話が大好きです。ぽんさんの記事を読んで久々に読みたくなりました。あと「鶴」という話でしたでしょうか…処女作品集を出版してうまくいかなかった話が好きです。

ponymanponyman 2015/06/18 22:28 weeetabixさん、コメントありがとうございます。「鶴」も印象的でしたね。処女作品集を宣伝しまくったあとの悲しき展開・・太宰治の、自分をモデルにしたような人物を客観的にこういう風に滑稽なことになってしまったのですよ、と書けるところ、その精神力というかプロ意識というかそこらへんにいつも感心します。中国人ワンタン屋と花売り娘の話も印象に残っています。あと、川の伝説みたいなのも(娘が変身してしまう話。)勝手なイメージ的には「大地の子守り唄」の原田美枝子みたいな、原始的でシンプルで気骨のある女の子のお話。
こうして思い返すとよい作品がいっぱいですね。太宰治の本を読むひとときもっと持とうかなと思っています。

かなかな 2015/07/14 19:50 ブログに触発されて久しぶりに太宰に手を出してみました。晩年は読んでいなかったのですが、文庫仕様での表紙が味があっていいなあ、と。感性の衰えは隠せず昔ほど耽読できなかったものの印象に残る作品はやはり幾つか。「魚服記」は少女が女になることを暗示させる場面があり、その後彼女は小さな鮒に姿を変え滝に飲まれてゆく…この変身物語は何だか西洋風に感じ、「地球図」での宣教師の話はシチュエーションが違うのに遠藤周作の?沈黙"を想起。私が一番好きだったのは「猿ヶ島」。漂流した挙句に日本のサルがたどり着いたのは異国の動物園。物見をする西洋人の目に晒される自分を潔しとせず脱走する話。日本人に対する蔑視が描かれているように思え、そしてこれは何故か映画‟猿の惑星″が浮かんできました。「道化の華」「彼は昔の彼ならず」は客観視して語ろうとする自分と、それを同時に冷笑しているかのような自分が描かれていて、太宰は常にもう一人の自分を内実に飼っていたのではないか?と感じ、それを感想ノートに書き殴ったのでありました。

ponymanponyman 2015/07/14 21:34 新潮文庫の装丁いいですね。映画になったりすると、最近の俳優さんの顔が載ったりするのですが、あれは良くないですね。
「魚服記」なにかギリシア神話みたいな趣もありますね。
「地球図」は切なかったです。遠藤周作を思い起こされるのもわかる気がします。そして「猿ヶ島」は私も「猿の惑星」を連想しました。
今頃やっと猪瀬直樹の「ピカレスク」を読み始めています。
今、弘前高校時代。楽しめています。

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