花は偽らず

拾い物だった「京化粧」*1から大庭秀雄監督の映画を最近ちょこちょこ見ている。これまたなんとも切なくて、でもつらい感じはなくてとても好きになった。大庭秀雄監督は「君の名は」が有名なのだけど、そちらは今だ後回しにしてしまっていてだいたいのストーリーしか知らないけれど、この映画もタイミングの描き方が絶妙。
なんといっても灘の醸造家の一人娘を演じている高峰三枝子の、気品があるのだけど、さばっとして優しい、愛嬌のあるお嬢さんっぷりが素晴らしい。高峰さん、役によっては威厳が先にきてしまっていかつい、みたいな要素が出ていることがあるが、そんなところひとつもなくて、なんて健気な・・と肩入れしてしまう。母親としゃべっている時の笑顔のかわいらしかったこと!
高峰さんのお嬢さんにとっては恋愛上利害関係が生じてしまうような登場人物たちも、それぞれに慎み深く納得がいき、68分という短い時間で登場人物たちの世界にぐっと入り込めた。
大好きな斎藤達雄氏も、山で一発当てようと夢中になっている、らしい役で登場。

花は偽らず [VHS]

花は偽らず [VHS]

古都

京都の影の部分も映し込むようなシャープなカメラ(成島東一郎)、不安になるような武満徹の音楽、また巧みな演技陣により表現されるこわいほどリアルな京都の人々・・よくできた作品だと思うが、川端康成が内包するものを直視し続けるのがなんだかつらいような気分になる映画だった。普段平らかな水面を思わすような人々が、突然こんな極端で激しすぎる感情を表に出すなんて・・という底知れなさ。そこも京都の風土とあっている気はするが・・
「張り込み」*1で渋い刑事を演じていた宮口精二がここでは呉服問屋の旦那。これがまたナチュラル。
表面的には描いていないけれど、覆っているどこか変態的ですらある空気、これをポルノ化して、ある意味もう少し見やすいものにしたのが、小沼勝監督の「昼下がりの情事 古都曼陀羅*2のような気も・・

古都 [VHS]

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張込み

七人の侍*1再見で宮口精二が気になり、すすめてもらった映画。渋く張込みを続ける刑事。世間と折り合っていく風情が板についている昭和の大人。ストイックで、小児病的な悩みとかとは無縁な感じでよかった。
旅館の人との付き合い方の、今よりはかなり密なんだけど、つかず離れず感もいい。ちょっとした誤解→その詫びをいれる旅館側の浦辺粂子の愛嬌のある大人の空気。
大木実演じる若い刑事と宮口精二の二人のペアの、べたべたしてない距離感、また田村高広のよわよわしげな品の良さも好ましかった。

張込み [VHS]

張込み [VHS]