江戸の春 遠山桜

若き日の遠山の金さんを描いたもの。
以下、ビデオに同梱の山根貞男さんの文章を読んでのまとめ。
北川冬彦という詩人で映画評論家が、「キネマ旬報」でこの映画のことを「『百萬両の壺』*1その他で、この作の面白いところは用いつくされている」と断じ「(監督の)荒井良平は、山中貞雄の後を追おうと始めた。これは、どんなものか」と疑問を呈しているそうだ。
山根貞男さんによると、確かに「百萬両」の方とこの映画は共通点が多いらしい。遠山の金さんと丹下左膳の違いはあれど、時代劇なのに現代感覚で作られているところ。また細かい点をいえば、ということで高勢実と鳥羽陽之助が茂十・当八コンビで両方に出てきていること。(この映画では、おでんやとそばやの役。)そして、北川氏の批判のその部分をこそ、当時の観客は喜んだにちがいないと山根さんは推測しておられる。
高勢さんの場面、本当のんびりしたおかしさがあってみていてくつろげる。あとは、実家の親に心配されているような金さんの若さが新鮮。演じる尾上菊太郎という方、いなせでかっこいい。
脚本は梶原金八という、ヒット作を数々出している八人からなる共作チームで、その八人の中にひとりは「百萬両の壺」の監督、山中貞雄なのだが、甥の加藤泰の書いた「映画監督山中貞雄」によると、この作品には山中貞雄は参加していないらしい。

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