日常整理日誌 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2018-01-07

[][]甦る昭和脇役名画館

鹿島茂さんの映画鑑賞史をたどりながらの、鹿島さん一押しの脇役案内。ニュートラルに経歴を辿るものでなく、まず鹿島さんがその俳優のどの演技に惚れたか、そこからの話で熱さが楽しい。そのあと経歴がはさまれ、その演技の魅力の秘密が書かれている。

岸田森伊藤雄之助芹明香など自分も納得のいく人たちの中にまざっているジェリー藤尾氏。鹿島さんご自身もテレビでのジェリー氏の過剰な感じはもうひとつと思われていたらしいが、映画で「わざとらしさ」を演じなければいけない時、もともとのジェリー氏の「わざとらしさ」でもって「マイナスかけるマイナス」のプラスに転じる効果があるとする理屈のおもしろさ。そんなにおっしゃるなら、ふや町映画タウンにも在庫のある「拳銃は俺のパスポート」をいつかみてみようかという気に。(増村監督の「偽大学生」もみられる機会があればみたい。)

「牝猫たち」*1や「牝猫たちの夜」*2に出演の吉澤健さんの項では、若松監督作品と鹿島さんの出会いから話がすすめられている。「情事履歴書」で衝撃をうけながら、その後「愛のデザイン」という作品で失望、しばらくはなれてしまったため、若松監督の映画にスーパーヒーロー、吉澤健が誕生する瞬間を見逃したと書いておられるのが「狂走情死考」。新宿騒乱と北国ロケ・・興味深い。

荒木一郎氏の「ポルノの女王 にっぽんSEX旅行」も京都舞台で前から気になっていたがあらすじを読んで興味が増した。とりあえず、名前が同じ「モグラ」という登場人物が出てくる、中島監督の「現代やくざ 血桜三兄弟」から手を付けようかな・・


甦る昭和脇役名画館

甦る昭和脇役名画館

2018-01-06

[]日本映画史110年

バラバラにみてきた日本映画の個々の作品の、日本映画史の中での位置、意味というのがわかりやすく書かれていてとても愉しく読み進んだ。今まで後回しにしていた映画にまた興味を持ったり・・

そうなのかと思ったのは、日本に長い間根付いた弁士文化のこと。

p58

日本映画の得意とするロングショットや長回しへの好みは、もともと弁士が得意の長台詞を語るために準備されたものであるし、感傷的な語り手による結論めいた独白は、弁士の説明の痕跡といえる。

なるほど・・

また、東宝が始めた「製作委員会」方式。TV局と広告会社が中心となり、原作の出版社がそれに絡む。

p241

その結果、広範囲の観客層を掴むために、あらゆるニーズをほどよく満たし、クレームが出ないように細かく調整された作品ばかりが市場を賑わすことになった。

そういうことだったのね・・

参考文献や用語集、さらには作品の索引もつけられとても丁寧なつくり。大学の授業にも使えそう。

日本映画史110年 (集英社新書)

日本映画史110年 (集英社新書)

2017-08-08

[]傷だらけの映画史

監督で映画をみるクセがついているが、プロデューサーで映画をみるというポイントも必要だなと思わせてくれたのは春日太一さんの東宝の激動の昭和シリーズの解説。

この本もまずはウォルター・ウェンジャーというプロデューサーを一つのくくりとして話が始まる。

ハリウッドが赤狩りで狙われた理由として、ナチスの迫害を逃れた外国出身の亡命映画人やユダヤ人をたくさん抱えるハリウッドの進歩的なプロデューサーたちが、政府も議会も参戦を決めていない時点で、反ドイツの戦争熱を煽るような映画を製作していった。(「海外特派員」、「砂丘の敵」、「生きるべきか死ぬべきか」)。政治より先に「対独参戦」し、その代表がウォルター・ウェンジャーであった。

その結果、進歩的なハリウッドは保守派ににらまれるようになる。それが赤狩りでハリウッドが狙われる原因になったというのが、「傷だらけの映画史」の教えてくれる事実である。

中条省平氏のあとがきより、一部省略して引用。

なるほど、そういう流れになるのか・・という意外さ。

みてない映画も多く、手元においておいて、少しづつみていきたい。

映画題名、人名の索引もついており丁寧なつくり。

2016-12-05

[][]原節子の真実

原節子や小津監督の話は伝説のようにそれなりに流布されていると思うけれど、この本はそこにあえてものすごい取材力でもって挑んだ渾身の作品だった。同じ著者による映画「夜の蝶」のモデル上羽秀さんの伝記「おそめ」*1も、対象への近づき方が読者を満足させるものだったけれど、この本でも、今まで聞いていた原さんの話(=小津安二郎の紀子と同一視するような)とは一線を画したものでとても読んでいておもしろかった。また義理の兄、熊谷監督のこと。熊谷監督の「指導物語」*2を先日みて、「指導物語」自体は戦争に向かっていく時局もあって銃後の守りという話であっても、割合視野の広さを感じたのだったけれど、その後、国粋主義団体に熱心になられた話を読み、どう咀嚼したらよいのか、もう少し詳しく知りたいと思っていたそのあたりもかなり踏み込んで書いてあった。(後述する「新しき土」の宣伝でヨーロッパに行ったときのコンプレックス的な気分の影響という話も興味深かった。)

またびっくりしたのは映画「新しき土」*3の誕生秘話。背後に隠された日独同盟の意図。いわれてみれば、合点がいく。ドイツ側監督と日本側の監督だった伊丹万作との齟齬や、また伊丹万作の戦争責任に関する文章などもますます複雑に自分に迫ってくる。

戦後の食糧難の話、進駐軍とのかかわり、それをいさぎよくおもわれなかった原さんは進駐軍の残飯を買うような事態までおこったこと。片や進駐軍をもてなす女優さんも多数おり、それを楽し気に本にかいてあったり。。今までひとからげにみていた往年の邦画に色々な陰影を与えてくれる本となった。

原節子の真実

原節子の真実

2016-07-25

[][][]ひげとちょんまげ 生きている映画史

昭和3年から映画を撮ってこられた稲垣浩監督が映画界や撮影所、スターのこぼれ話を書いておられるコラム集。読みやすく、元気で臨機応変な撮影現場の空気がこちらに伝わる。

戦前戦後を生き抜いてこられた監督、戦前の映画事情など初めて知ることも多い。

ふむと思ったメモ

映画をたくさん見たいという気持ちを満足させるために内務省の検閲官や、税関の官吏を志した者もあった

という一文。(p36)

三谷幸喜氏の「笑の大学」、あながち突飛な話ではないのだな・・

もう一つは、

 むかしは、どんな小さな場末の映画館でも、入場券の半分にそえてプログラムを一枚くれたものだった。

 それには上映時間の梗概とスタッフ、キャストの紹介から説明担当の弁士の名、それからゴシップ、ファンの投書などが印刷してあって、写真もいくつかはいっていて楽しいものだった。

 たいていは読みすててしまうような小さな紙きれだが、映画ファンはこれを宝物のように大事に保存した。切手収集の回のように映画狂があつまって、持っているプロを見せあったり、交換しあったりした。

あるとき、上映最終日にプログラムがなくくれなく、どうしてもほしかったので、稲垣さんは友人にワラジカツをおごって、一日だけ借り受け、徹夜でそのプロを書き写したということだったのだけど、「ワラジカツ」に反応してしまった。いまはなき、寺町のムラセのことを思い出して。看板のかっこいいお店で、当時デジカメがあれば絶対撮っていたのに・・(デジカメで写真を撮っておきたかったほかの店には「夜の窓」「大三元」「八百文フルーツパーラー」なども・・)