日常整理日誌 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2017-09-14

[][][]隣りの八重ちゃん

昭和9年作品。大正生まれの父の幼き日のアルバムでちょうどこの頃の風景をみたことがあるが、そこから漂っていたものがこの映画からも感じられ驚いた。前年には国際連盟を脱退していたりしているのだから、どんどんとそう時代になりつつあるのだろうけれど、*1映像からはまだ戦争の影はあまり感じられないゆったりした時代。

逢初夢子という女優さん演じる八重ちゃんの服装などもモダンで、溌剌とした女学生という感じ。そして描かれているのも自由恋愛の気配。八重ちゃんの好きな隣人に秋波を送る厄介な姉に岡田嘉子

ビデオジャケットには、「1930年代は、松竹蒲田から数々の市民の日常生活を描いた秀作が登場し、『小市民映画』の黄金期ともなった。その代表選手のひとりが、島津保次郎監督で、本作はその代表的な作品。」とされているけれど、映画の楽しみの一つが時代の空気を感じる事でもあるなあと思った。帝劇でベティ・ブーブの映画をみているシーンも印象的だ。(かなり長く引用されている)

ロケ地などが気になったけれど、ひとつ川辺のことがtwitterに出ていた。葛飾区金町浄水場の第一取水塔とか。。映っている女性は高杉早苗ではなくて岡田嘉子だと思うけれど。。

途中出てくる靴下の穴かがりのグッズほしいなあ・・

*1:実際、主人公八重ちゃんのお父さんの突然の転勤先が朝鮮というところにもその一端を感じたりもした

2017-07-29

[][][]美わしき歳月

1955年小林正樹監督作品。最近やっとポツリポツリと小林正樹監督のものをみているけれど、かなり好きかも。これは戦後10年後の若者たちと、親世代祖父世代の物語。その葛藤やら相手を思う心やらは今でも変わらない。また中学時代の友人が社会に出てそれぞれ思うところあって・・という「リアリティバイツ」な感じも永遠のテーマだ。

久我美子とおばあさんが営んでいる花屋さんが、起点になって出てくるのだけど、戦後、まだまだ若い犠牲者も身近にいた人が多い中、花の命や次世代での再生、みたいな話も伴奏のように描かれていて堪能した。

佐田啓二がドラマー役で、「嵐を呼ぶ男」みたいなシーンがあるのだけど、こっちのほうが早いんだな・・普段堅実な役をみている気がして、ここでは結構表面上はスカした、ちょっと拗ねたような役で新鮮だ。そしてなかなかかっこいい。彼が働いているクラブのようなところでドラムの演奏や、ダンスの相手を黒人男性に代わってくれ、といわれるシーンがあるのだけど、なんだか、「日本の戦後」っていうものを仄かに感じた。

東京の風景がたくさん出てくるのだけど、ここだとはっきりわかるのは国会議事堂前くらいで・・まだまだ車が少なく広々した景色をみられるのも楽しい。田村秋子さん扮する久我美子の祖母が、小沢栄太郎(この時は芸名小沢栄)と雨に濡れた赤れんがが美しいという道の話をするのはどこだろう・・佐田啓二木村功と待ち合わせする広々とした美術館前のような風景とか*1鉄道にかかった橋の上からのシーンとか・・川本三郎さんあたりのご著書に載ってないかな・・すごく知りたい。

木村功の妹役の女優さんが可憐だなと思っていたら野添ひとみさんだったらしい。

美わしき歳月 [VHS]

美わしき歳月 [VHS]

*1twitterで拝見した記事によるとその美術館風は絵画館前だとか・・映画内で田村町といっている花屋の場所は今の内幸町とのこと

2017-07-21

[][][][]妻の心

「サンデー毎日」7/2号の「『名画座女子』が選ぶ日本映画知られざる名作極私的ベスト10」という記事があり、DVD化されているもの中心の記事だったので、ベスト10には入れておられないけれど、筆者ののむみちさんがこの「妻の心」のことを大好きと書かれていた。成瀬監督の「妻」みたいなタイトルがついて、家庭の問題を描いたもの一杯みたけれど、はてな日記の記録はないし、みてなかったかなと借りてみた。別件で映画の感想をここに集約させる前使っていたyahoo movieをみていたら、自分の感想をみつけ、みてたんだと驚く始末。ネタバレに注意したら今でも感想はかわらない進歩のなさ・・それだけではもったいないのでビデオに同梱された山根貞男さんの解説からもう少し付け加えておくと、

  • 昭和の風景とぼんやり書いているのは、によると「地名は出てこないが栃木と思われる地方都市の佇まい。」とのこと。
  • 成瀬組の常連、撮影の玉井正夫も美術の中古智らの古い日本家屋の表現の熟達ぶり。
  • 三船敏郎が画面に出てくると一変する空気を小林桂樹氏が注目し、絶賛している旨。
  • 成瀬巳喜男が゛妻の座″を描く映画高峰秀子主演の中で「妻の心」は最初。

今回も感心したのは心の中のことはすべて表情や口ぶりの裏で表現する成熟した表現。舞台は老いた母(三好栄子)と次男夫婦(小林桂樹 高峰秀子)で暮らしている地方の薬屋さん。母屋の表現や、せりふの端々から割合大きな家というのが感じられる。そこに一度は家出して飛び出した兄(千秋実)とその妻(中北千枝子)、娘(松山奈津子)が東京での仕事に行き詰まって転がり込む。中北千枝子演じる妻の、姑や小姑に対している時の外の顏と、千秋実演じる夫と二人きりの時の本音トーク風の時の声のトーン、表情の違いなどもはっきりしていておもしろい。家の中での葛藤も、多くは語らないけれどわかってしまう高峰三枝子の所作。寡黙な中、こころのうちはみているものにくっきりとわかる。爪切りの置き場などのさざめきも端的でおもしろい。

また、長女(根岸明美)の結婚支度から結婚というのがほとんどセリフだけでの説明になっているのも賢い省略だなと。ちょっと前マキノ監督の「昨日消えた男」*1でも高峰秀子の結婚というおめでたいシーンが説明のみになっているのも経費的にもなかなか考えたなと思ったが、「妻の心」では、経費のみならず切るところ切る、でもやはり長女が結婚したというプロセスは、外から結婚って・・と語らせてみたり、活かしてあっていい感じ。また結婚する前の娘ってこうだよなというのが、とてもうまく描かれていた。

ミフネの妹、竹村弓子演じる杉葉子さんの陽性な感じ、洋食屋各太郎とその妻波子の加東大介、沢村貞子の息のあった感じなどほっとさせられるやらうれしい気持ちになるやら。

all cinema

2017-06-30

[][][]この広い空のどこかに

サンデー毎日7/2号に南池袋の古書往来座ののむみちさんおすすめの「日本映画知られれざる名作極私的ベスト10」という記事が出て、そこにのむみちさんの生涯ベストに入る映画として紹介されていてレンタル。多世代家族で暮らす私にはわかりすぎるストーリー。メモしたいような名台詞の数々。人間関係の機微がリアルにかつほほえましく描かれていて見応えあり。久我美子さんがお嬢さんっぽい若奥さん役。ドラマ「それぞれの秋」を思い出す。浦辺粂子のお姑さんが配慮のできる人でみていてよい感じ。だからといって葛藤とかを描いていないわけではない・・十分ありで。でもみな自分の分を心得ていてとても素晴らしいバランス。わたしにとっても大好きな映画となった。

この広い空のどこかに [VHS]

この広い空のどこかに [VHS]

2017-06-15

[][][][]激動の記録、幻の響写真館

「激動の記録」は昭和15年から26年までの日本ニュース。同封の元NHKエグゼクティブ・ディレクター山崎俊一氏の解説によると、日米交渉破局のあとの開戦の時代の日本と戦争を記録した映像は世界でこの日本ニュースだけだそう。国策に協力したとか、好戦的なニュースばかりと戦後評価されたらしいが、ほんとにその実態の映像がみられることも尊い。山崎氏が書かれている、一人一人の兵士の表情や、緊張し笑顔の乏しい銃後の人々、その背後に散見するゆとりのない時間・・意図か無意識か、その時代のリアルが映っていて力強く胸に迫る。また、庶民だけでなく、政治の中枢にいた人々の姿もいろいろ考えさせられる。劇映画ではみていても、それとはまた全く違う迫力。

ちょうど、最近昭和2年生まれの母の伯父が経営していた長崎の響写真館というところの記録に恵文社で開催されている展覧会でふれたところ。偶然知った展覧会で母や仲の良かった従妹の戦時中の青春に触れ、成長途上母にかなり反抗的だった自分も、とても素直に心が動かされた。「この世界の片隅で」*1のすずさんとも年齢の近い世代。母は現在言語障害があり、彼女側からはうまく意思の疎通はできないけれど、ぐっと胸に来たそのことをとりあえず伝えられた、その状況に自分がなれたこと、これらの作品にすごく感謝。

そして、恵文社の講演会でも話の出ていた、二つの世界大戦の間に文化的に豊かな時代があり、その国が最終的にあのような方向に進んでいったことも、本当に今と重ね合わせてしまうし、悪い方向にならないためにできることはしていきたいと強く思う。

NHK特集 激動の記録 DVD BOX

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『長崎 幻の響写真館 井手傳次郎と八人兄妹物語』

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