日常整理日誌 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2018-06-29

[][]春の消息、魂の秘境から

春の消息

春の消息

柳美里氏と佐藤弘夫氏が死者と生者のまじわりの場所を訪ね歩いたもの。写真 宍戸清孝氏。

いわゆる「死んだ子の年を数える」みたいな死者とのかかわり方にはついていけないものを感じていた自分だったが、つい最近母を亡くし、死が身近になった今、この本にたくさん描かれている、生者が死者との交流をするようになっている色々な場所をとても親しみ深いものとしてみている。写真と共にお二人と巡礼の旅に出ているような本だけど書かれていることは革命的でもあった。

柳氏、独身時代の刃物のようなひんやりした文章には緊張を覚えたり、またそのあとの東由多加氏とのことも驚きは感じつつきっちりは触れたりしてなかったけれど、福島で本屋をされているというようなこともきき、その辺を知りたく思っていたところでちょうど良い出会いだった。その後の柳さんのことを、まるで大人になってからの同窓会のように聞きやすくまろやかになったタッチで知ることができた。

佐藤さんのおっしゃっている、死者と生きているものの境目をきっちりつけすぎた挙句、

死んだらどうせ終わりだから、生きているうちにせいぜい好きなことをしようという風潮が、今日多く見受けられます。これは縦横に広がる無数の生命の繋がりの中に居る自分の立ち位置を忘れた見方であり、未来に対する自らの責任を放棄しようとする発想です。

(中略)

生者の論理で世界を見つめるのでなはなく、死者の視点から今の時代を問い直すことが求められています。

という言葉、石牟礼道子さんが水俣病を見つめ続け、それを誰の責任ということを超え、こういうことが起きた「受難」としてとらえる考え方ともつながるものを感じた。誰かの責任で終わるものでなく、もっと広い悲しみ、人間が万物のトップみたいな考え方の驕りについて落ち着いて話されていた石牟礼さん。少し前「魂の秘境から」という朝日新聞に載せておられた連載をまとめたものを読んだけれど、石牟礼さんがどういう風にして育ってこられたかが、豊かに味わえ、でも同じ環境に囲まれていたら誰でも石牟礼さんになれるかといえばそうではなく、特別の感じ、考える能力を持って育たれたことがしっかりわかる。今年の2月10日に亡くなられる直前1月31日が最後の連載であったことなどにもはっとさせられた本だった。石牟礼さんの本ももっと読みたく思っている。

魂の秘境から

魂の秘境から

2018-03-08

[][][]息の跡

出町座にて。公式サイト

ドキュメンタリーの主人公は陸前高田のたね屋さん佐藤さん。津波体験を独学の英語で冊子にまとめ、さらに中国語スペイン語などでもまとめようとしておられる。舞台は陸前高田で、佐藤さんは被災体験があったからこそそれを乗り越えるために、整理をつけるために冊子をまとめ、そして生活していくため井戸を掘り、種を育てて売っておられるのだけど、被災した人の特別な物語でなく、佐藤さんはこのように生きている、自分はどう暮らすかということを考えさせられた。自分の周りの人の息づかいをしっかりみようという気持ちにも。

佐藤さんは、自分で作った冊子をバイブルと呼んでおられ、夜によく朗々とそれを朗読されているのだけど、生活とは自分のあたまで工夫してきりひらくものという哲学が暮しぶりからにじみ出ていて、変わったおじさんという感じでなく、(公式サイトにあったように、ドン・キホーテか、ロビンソン・クルーソーかというような個性的なおじさんではあるだろうけれど)とても神々しく感じられた。「わたしは悲しみの種を売っているのではない。希望の種を売りたい」というような表現もよかったなあ。。劇場で売られていた冊子には種子がついていたようだが、買って植えるべきだったー。。

お若い監督だけど、佐藤さんという素材を得て、佐藤さんの暮らし方から感じたものの伝え方がまた優れていた。

2017-12-23

[][]枯野の宿

ずいぶん前に買っていてちゃんと読んではいなかったのだけど、ふと開いてみて「リアリズムの宿」が、今年立ち寄った青森県鰺ヶ沢近くであったことに驚く。気持ちよく写真を撮ったりしていた五能線の風景も厳しく描かれている。再読するまで映画になった「リアリズムの宿」と印象が混ざっていたけれど、原作の持つどこかユーモラスで詩情のある風合い、これは映画とはまた別の世界だなと感じる。(映画の方も好きだったけれど)

巻頭の「チーコ」という文鳥の物語には衝撃を受ける。

枯野の宿 傑作漫画選 (旺文社文庫)

枯野の宿 傑作漫画選 (旺文社文庫)

2017-12-20

[][][]魚影の群れ

公開当時は自分と無縁っぽい作品だと思っていたのだけど、東北に関心を持つようになった昨今、大間やむつが舞台という事で俄然興味を持った。

1983年相米監督作品。佐藤浩市演じるむつ市で喫茶店を営む若い男が、緒形拳演じるマグロ漁師の娘、夏目雅子を好きになり、大間のマグロ漁の世界に飛び込もうとするが・・という話。

マグロとの格闘シーンは迫真。

最初の天真爛漫な夏目雅子の姿が印象的。

緒方拳が北海道に行くところで映る旅館が印象的だったが、増毛町の富田屋旅館だったらしい。(こちら

あの頃映画 「魚影の群れ」 [DVD]

あの頃映画 「魚影の群れ」 [DVD]

2017-11-18

[][][][]おんなの細道 濡れた海峡

twitterで、石橋蓮司さんのベスト5作品という感じでこの映画を挙げておられる方がいらっしゃって(こちら)、調べてみたら陸中海岸が舞台のようで、みてみた。すごい拾い物!みてよかった。

ストリップ劇場のある町は盛岡では?上之橋の風景におぼえあり。途中バスに乗って宮古の方に行く。「沼の浜」という地名が出てくるが、宮古の海岸らしい。(調べたら東日本大震災以来キャンプ場が閉鎖されているらしい)

うわさには聞いていた三上寛が、原作者の田中小実昌を思わすような主人公を演じる。「ポロポロ」という言葉が出てきて、ああこれは小実昌さんなんだなと気がついた。ポルノ映画ならではの表現ももちろんあるが、基本とても抒情的な作品でおもしろい味がある。

2012年5月にユーロスペースで日活創立100周年記念企画として「生き続けるロマンポルノ」という特集上映があったらしいが(こちら参照)、その時、蓮實重彦氏、山田宏一氏、山根貞男氏の三人が選者となり選び出した32本(約1100本中)の中にこの作品も入ったというのが納得できる。

草薙幸二郎という俳優さんの演じる社長、とても味がある。そして、キャストをみていると田山涼成の名前も。。松夫って俳優名はチンピラ役か?まるで気が付かなかった・・

movie walker

ポロポロ (河出文庫)

ポロポロ (河出文庫)