プール雨

幽霊について

ラフエンテ!

スペインのソニア・ラフエンテ
 

 
昨季の世界選手権では残念ながら FS に進めませんでしたが(したがって地上波組は見ることかなわなかった)、先日の世界選手権では SP 18 位、FS 13 位で、自身最高の 15 位に入りました。
久しぶりに見た彼女はなんだか素敵だった。
ラフエンテを「なんとなく好き」という人は多いのではないだろうか。
私は好き。今回 Jsports の放送でゆっくり見てみて、どうも、大好きということがわかった。
不思議だ。
スピードがあるわけでもないし、スピンはちょっとゆっくりめでシットポジションなんかは苦手っぽいし、強い曲のニュアンスを表現するのは苦手な方だ。
でもなんだか良い。
何が良いのかちょっと考えてみよう。
ソニア・ラフエンテの良さ。それはまず、おしゃれということだ。
 
パッション!

 
レ・ミゼラブル

 
クライ・ミー・ア・リヴァー!

 
マイケル・ナイマンセレクション !!!!!

 
おっしゃれー!
レ・ミゼラブル」の衣装はそもそも人気のようだが、今見てみると「パッション」もグレートだ。単にクラシカルじゃないところが良い。今季は曲的にポニーテールが封印なのが寂しかった。でも相変わらず安定しておしゃれ。特にマイケル・ナイマンが選曲、衣装ともに良かった。
 
SP はアーサー・ハミルトンの「クライ・ミー・ア・リバー」。初演が 1955 年。ジュリー・ロンドンの歌で大ヒット。映画「女はそれを我慢できない」の挿入歌としても知られています。
冒頭と終盤はマイケル・ブーブレのバージョン。マイケル・ブーブレの大変大仰で派手なこのアレンジに乗って最後まで行くの……? とはらはらする最中、フレーズぴったりに 3F が終わったところで曲調がすっと変化。中盤はブラス主体の、ためのある、やわらかなアレンジで、彼女によく似合っていました。
全体のニュアンスとしてはこのプレイが近いでしょうか。
  
解説で指摘されたように、曲のニュアンスが使えるようになるともっとよくなるなあという感想。特に冒頭と終盤は派手で強いアレンジなので、彼女のまっすぐで柔らかい動きが少し浮いた感じに。
でも、ひとつひとつ丁寧に滑っていて、全体としては好感触だし、なにより、「きちんとしていながら音楽的」という感じが出ていて、彼女なりの「クライ・ミー・ア・リバー」として、ひとつ結論が出ていたのが良かったと思います。
 
FS はマイケル・ナイマンのメドレー。
  
とても良かった。こういうメドレーものだと、どうしてもキラー・フレーズのつぎはぎになってしまって、「派手なのにめりはりがない」というところに落ち着きがちですが、彼女のは一つの曲として聞いてもいい感じに流れのある仕上がりで、すごく良かった。
冒頭の「メモリアル」(「コックと泥棒、その妻と愛人」)はフィギュアスケートではおなじみ。弦のフレーズに乗せて、丁寧に丁寧に、きれいなジャンプを決めていき、このプログラムのクライマックスである次の「ビッグ・マイ・シークレット」(「ピアノ・レッスン」)に、自然な流れの中移っていきました。このパートがとても美しかった。走って、要素、走って、要素、というのではなく、きれいなステップ、きれいなターンから、基本に忠実なジャンプやスピンが披露されていって、見ていてとても気持ちよかった。音楽に合っていたのは言うまでもないけれど、このパートの最後の♪ジャーンから一拍ずらしてジャンプ! というのもおしゃれで綺麗だったし、それによって最後の「時の流れ」(「ZOO」)への移行がスムーズだった。
 
きちんきちんと積み重ねてきているといった風情の彼女。「きちんときちんと」でありながら、お洒落! というのがやはり魅力なのだと思う。
選曲もそうだし、衣装にしても、プログラムの作り方にしても、何もかもがお洒落。
競技プログラムでも一つの曲として聞けるように組む。似合わない背伸びはしないが、安易な道もとらない。どこまでも音に合った表現を目指す。音に合わせるが、合わせすぎない。衣装は基本をおさえつつ、クラシカルになりすぎないよう、必ずはっとするポイントをつくる。衣装、メイク、すべてに気を配る。
当たり前のことのようだけれど、ここまで隅々まで行き届いた状態でリンクにのってる人もめずらしい。その中でゆっくりとだけど確実に成長していっているし、何より表情が自然で、充実しているんだなと思う。
彼女のすべてが楽しみだ。
 

フィルム・ミュージック~ベスト・オブ・マイケル・ナイマン

フィルム・ミュージック~ベスト・オブ・マイケル・ナイマン