electraglide 2013に行ってきた

チケットをタダで頂いたのでエレクトラグライドに行ってきました。ありがとうございます……。懸念していた音の方は幕張メッセの2エリアぶち抜きステージなだけあってとにかく反響音がものすごい。とはいえ、いい音がする場所を歩いて自分で探せばそこそこの音響で楽しめるくらいのものでまあ悪くなかったのではないか。あと(インターネットで友達が増えたおかげで)久しぶりにこういった大規模フェスに一人で行ったのだけれど、これがなかなかおもしろかった。音楽そっちのけで話したりするのももちろん楽しいけれど、到着から日が出るまでひたすらストイックに踊り続けるのもやっぱりいいですね。

  • Factory Floor

基本となるのはミニマルで無機質、ながらもアシッド風味でどこかユーモアを感じさせるシーケンサーと人力ドラムスによるリズムの反復。このドカンドカンと進行していきながらジワジワとグルーヴを作り上げていくリズムはなるほど、インダストリアルからの影響が強く感じられる。クリス・カーターがリミックスを買って出た理由がわかるというものだ。同じようなことは冷徹でささくれだったギターにも言えて、あたかもノコギリで木を削るかのようなモノクロのサウンドにはポスト・パンクからの影響を強く感じた。
3者は最初は好き勝手にやっているようだが、淡々としたリズムと鋭利なギターがジワジワと緊張を練り上げていくと同時に少しずつ調和を見せていく。緊張がピークに達したところで再び激しいドラミングが解放を促す。ノイズとビートが調和するその瞬間の気持ち良さは、意外なほど身体的でセクシーだ。ゾクゾクするし、シンプルに興奮させられる(もっと踊れないのかと思っていただけに……)。この冷たさの中にある色気のようなものがバンドの一番の魅力なのかもしれない。そしてそれは紅一点のNik Colk嬢の凛とした佇まいから自然とにじみ出る……ものではなく、彼らが冷たい質感の下にディスコ・パンクにも通じるトランシーなダンス・ミュージックの享楽性を隠し持っているからこそ得られたものに違いない。

  • Machindrum

BPM3兆かと思った。フットワークやジュークにも共鳴するであろう言わばドラムンベース現代版、というか高速ジャングル(低音の鳴りが素晴らしい)。そこに降ってくる意外なエレクトロニカ系叙情メロディーが在りし日のRephlexを思い出させたり、というか本来の芸風はこっちなんだろうなあ。華麗なシンセと暴力的なビートが見事に噛み合っててひたすら気持ちよく踊れました。

  • Sherwood & Pinch

ピンチが繰り出すブリストル直系ダブステップのヘヴィーなビートの上で、シャーウッドがダブ処理しつつエフェクトをコラージュする。ピンチはベース・ミュージック世代でジャングルを聞いて育った世代だからぶっといレゲエベースをズブズブとしたサウンドスケープで鳴らすだけに留まらず、ダブステップのエッジーなリズムを自由に操る気ままさがある。迎え撃つシャーウッドはピョンピョンとエフェクトを飛ばしたり、深くダビーな音響を作り出していく。ニュー・エイジ・ステッパーズの頃からやっていることが変わっていないとも言えるが、むしろ彼の考えるレゲエ・ダブの魅力を変わらず提示しているように思える。親子ほど歳が離れた(実際2人並ぶと親子のように見えた)2人のディープながら自由な実験精神も感じさせるサウンドにフラフラになりながらも踊った。
いやあ幕張メッセという期待できない場だったけれど、見事な低音だった。思うに、凄まじい低音を鳴らすということはそれだけで何らかの反抗となる。”Bring Me Weed”なんて言ってたら尚更だ。ニューウェーブポスト・パンクが白人とジャマイカ移民との交友から生まれた音楽であるように、信念や歴史に裏打ちされた音楽というのは表面上どんなに暗くても絶望を跳ね返すタフでふてぶてしい強度がある……気がする。こんなご時世だからこそ、マリファナを吸うおじさんが延々と映っているVJと、町中では決して聞くことのできない響き渡る低音に身を委ねていたらとても勇気が出た。文句を言うとしたらもっと深い時間にもっと長く見たかった。そういう音だった。

  • James Blake

6月に既に見たのと、なんかこう、アイドル的にキャーキャー歓声が飛んじゃう雰囲気に辟易してしまって適当に見てしまいました。”CMYK”や” Air & Lack Thereof”もほどほどに1st、2ndからの歌モノ中心で、まあここまで来るとオールナイトイベントで見るという感じではない。そもそも(曲作りのアプローチはかなりR&Bやソウルに影響を受けているのに)ソウルシンガーとして技巧的に上手いかって言われるとそれほどでもないと思うんですよね……などと文句を言いつつ、ラストの” Measurements”弾き語りには少し感動してしまった。

今更2manyも無いよな……と馬鹿にしてましたが、ここまでセルアウトというかチャラい選曲だと文句を付ける気にもなれない。フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドからディスクロージャー、TNGNTにMGMTダフト・パンクジョルジオ・モロダー、ラストにYMOライディーンで時間きっちりで締め。職人芸。
あと音と完全に同期してるオーディオセットがすごかった。レコードのジャケが出てきて回してる曲を教えてくれるというDJプレイでは新鮮な面白さ。

  • !!!

フリーキーで叩きつけるような演奏を見せるディスコ・パンクのイメージが強かったのですが、そこからすれば出音は意外なほどに丸みを帯びて洗練されているというのが第一印象。整然としていながら熱が絶やされることのない、ぬるっとした都会的な質感というか。ディスコやハウスのごとく煮詰めたグルーヴと『Myth Takes』期のパンキッシュなノリとを織り交ぜつつ、ズブズブと濃密に盛り上げていく。短パンでスピーカーによじ登ったりマイク・スタンドを振り回したりゲストボーカルを呼んだり……とサービス精神も満載で楽しかったです。短パン!ディスコ!オンナ!酒!

  • Modeselektor

50 Weaponsの主宰だけあって?正統派の四つ打ちテクノを中心にスピン。今までがゴリゴリだったりズブズブだったりした中、タイトでソリッドな音像が逆に新鮮。シンプルなんだけれど「ここで来て欲しい」というところでブレイクが来たり、テクノ・クラシックをガッツリかけたりと快楽欲求にひたすら忠実なプレイで絶え間なく踊らせる。中盤からはベース・ミュージック風味を織り交ぜつつ、シャンパンをフロアに撒き散らしながら「トーキョー!」「ダンケシェーン!」とバキバキに煽っていくところが頭カラッポで楽しめる感じで非常に好感が持てました。

Modeselektorが最後の一曲をかけようとする直前でいきなり音を流し始めるという辺りが大物っぽかった。彼のプレイを聞くのは今年に入って2回目なのだけれどもちろん芸風は変わらず、ディスコやソウルにR&B、ファンクにレゲエやジャズなど広義のブラック・ミュージックを荒々しくミキシングしながら強引に繋げることで、新たなグルーヴを練り上げていく。アナログ・レコードとミキサーを楽器のように扱うそのプレイは大胆でゴツゴツとした手触りなのだけれど、黒人音楽の歴史を辿るかのようなスピリチュアルな美しさがある。ファンク・ビートのズブズブとした音に足と精神を取られている時に唐突に美しいソウルが流れてきたその瞬間の官能といったら比類の無いものがある。
そして明るくなり始めて人が少なくなっていくフロアで、この恍惚とした黒い塊のような音像をぶつけられるのは、深い時間帯に無我夢中で踊るのとは別の快感があった。最高。ベストアクト。