河村たかし名古屋市長「南京30万人死亡」否定

さて。
「30万人」が「当時の南京の人口より多い」とは、挙証出来ていることではありません。
南京虐殺の否定論の根拠としては相当に使い古されている、そして、調べてみればいい加減な物と判る、粗雑な理屈です。

以下は、今までも何度も同じような日記を書いているのに、マイミクの皆様には申し訳無いのですが。
ニュースに関するmixi日記を見ていますと、あまりにアレな意見の多さに、書かずにはいられませんで。
お許し下さい。

当時の「南京」（この場合、「南京市」）の正確な人口のデータは有りませんし（戦前は、100万人は居ましたが、日本軍による南京攻略戦前後の大混乱の状況下では、正確で綿密な統計調査など不可能です）、そして問題の事件の被害者数は、民間人以外の戦闘員の投稿兵や捕虜の不法殺害も含めています。
南京に居た中国軍兵士の数は諸説有りますが、最も多い説で15万人。仮に民間人が25万人居たとしたら、合計40万人。中国兵が10万人捕虜になって居たとして、単純計算では、30万人の虐殺も可能になりますね。

期間についても、1日や2日ではないのです。

更に、「南京暴虐事件」における「南京」の範囲は、「南京市」や「南京行政区」（南京特別区）など、幾つもの定義が有ります。
範囲が広くなれば、人口も、より多くなる道理です。

尚、研究者の多くは、30万人説は採っておりません。
ですので、「30万人は多いかもしれない」と疑念を呈するだけなら、アリであるかもしれないのですが（「南京大虐殺の犠牲者数は30万人ではなかった」→「南京大虐殺は無かった」という風な流言になる危険性も、看過出来ませんけど）。

参考にする史料を、日本側と、第三国の人間による、当時の一次史料や、後年の証言だけとしましても、犠牲者数の想定は、30万人の立証は難しいにせよ、結構な人数になってしまうのです（問題の御仁は、時事通信の記事によりますと、「3万人」も否定されたがっておいでのようですから、更にハードルを上げておいでですね。尚、ゼロ派でおいでである訳でもないという話も有りますが）。

史料につきましては、具体的には、例えば、日本軍側のそれは、「偕行社」関係での史料（記録や証言など）が、ネットで検索し易いです。
また、秦郁彦氏の『南京事件』（中公新書）などの著作が、よく調べておいででして、こちらを読めば手っ取り早いかと思います。

まあ、しかし。
民主党は売国奴で、毎日新聞はサヨクの変態新聞とかだそうですが。
そしてこの御仁は民主党員で、mixiでのニュースの提供元は毎日新聞なのですが。

このニュースに関してのmixi日記を眺めておりますと、耳に心地良いニュースは、検証もせずに鵜呑みにする方々が、随分とおいでの様で。

参考
・「20万都市で30万虐殺は不可能」論は欺瞞 - 南京事件FAQ - livedoor Wiki（ウィキ）
http://wiki.livedoor.jp/nankingfaq/d/%a1%d620%cb%fc%c5%d4%bb%d4%a4%c730%cb%fc%b5%d4%bb%a6%a4%cf%c9%d4%b2%c4%c7%bd%a1%d7%cf%c0%a4%cf%b5%bd%e2%d6
・二十万都市で三十万虐殺？
http://www.geocities.jp/yu77799/jinkou.html

・「よく知らない」のに「中国は南京事件の犠牲者数の値を増やし続けている」というデマなど否定派の主張は鵜呑みにしている「一見様」 - 模型とかキャラ弁とか歴史とか
http://d.hatena.ne.jp/D_Amon/20090623/p1

・南京事件「どっちもどっちなので保留」派は日本側史料を読むといいよ。 - クッキーと紅茶と（南京事件研究ノート）
http://d.hatena.ne.jp/bluefox014/20090602/p1

・河村たかしメソッドとは - Apes! Not Monkeys! はてな別館
http://d.hatena.ne.jp/Apeman/20090915/p2
《河村市長は「おやじは終戦を南京で迎えた。南京の人に本当に優しくしてもらい、名古屋に帰ることができたと言っていた。虐殺があったのなら８年後に南京の人が優しくしてくれるのか」と述べ、（後略）

まさに恩を仇で返すメソッド。》

《「河村たかしメソッド」を支えているのは「人間はひどい目に遭えば仕返しするはずだ」という単純極まりないロジックだけです。最も政治家になってはいけないタイプの人間だと思います。》

・南京事件―日中戦争・小さな資料集
http://www.geocities.jp/yu77799/
こちらは、もう、ここ一つで充分なくらいに詳しく、一次史料を数々と挙げて下さっておいでのウェブサイトです。

《まずよく誤解されるのですが、「南京事件」というのは、例えば数万人なり数十万人なりを一箇所に集めて、まとめて機関銃なり銃剣なりで殺した、という事件ではありません。基本的には、数多くの中小規模の「事件」の集積です。》

同系統の内容の当日記（史料を挙げてくれているリンク先多数）

http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1119245482&owner_id=631443
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1133008281&owner_id=631443
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1150047851&owner_id=631443
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1156513099&owner_id=631443
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1257389684&owner_id=631443

河村氏「南京30万人死亡」否定
http://news.mixi.jp/view_news.pl?id=961735&media_id=2

《　名古屋市の河村たかし市長は１５日開かれた市議会９月定例会の一般質問で、１９３７年の南京大虐殺事件について、３０万人以上が死亡したとする説について、「当時の南京の人口より多いので絶対違う」と否定し、「一般的な戦闘行為はあったが、誤解されて伝わっているのではないか」などと述べた。

　河村市長は「おやじは終戦を南京で迎えた。南京の人に本当に優しくしてもらい、名古屋に帰ることができたと言っていた。３０万人の虐殺があったら８年後に南京の人が優しくしてくれるのか」と疑問視。「一般的な戦闘行為で市民が亡くなったことはあった。捕虜収容所で放火があって市民が亡くなったり、残っている日本人を逃がそうとして銃撃戦になり、市民が亡くなった。そういうものが誤解されて伝わっているのではないか。事件そのものについて日中友好のためにきちんと検証し直す必要がある」となどと述べた。

　東郷哲也議員（自民）の市長の歴史認識を問う質問に答えた。

　河村市長は議会後、発言の真意について「日中友好を深めるため、正確なことを調べた方がいい。（死者数は）３０万人説があれば、２５万、３万もある。国会議員時代にも質問主意書を出している」などと語った。

　河村市長は著書の中で、「南京大虐殺は国民党のプロパガンダだったかもしれないとか言っていると、『河村たかしは陰謀史観』とかいう声が聞こえてくる。ワシは特別変わったことを言っているわけではない」などと記している。

　衆院議員時代の０６年には、政府に対し「いわゆる南京大虐殺の再検証に関する質問主意書」を提出。教科書などに「市民や捕虜の殺害」などが記載されている根拠や、政府見解を改めてただした。当時の小泉内閣は「１９３７年の旧日本軍による南京入城後、非戦闘員の殺害または略奪行為等があったことは否定できないと考えている」と答弁書を出した。【月足寛樹、丸山進】
毎日新聞（提供元一覧）》

時事ドットコム：南京事件「犠牲者数に疑問」＝河村名古屋市長
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2009091500599

《名古屋市の河村たかし市長は１５日の市議会本会議で、旧日本軍による１９３７年の「南京事件」で３０万人が死亡したとする説について、「深い疑問を持っている。一般的な戦闘行為は残念ながらあった。誤解されて伝わっているのではないか」と述べた。自民党市議による市長の歴史認識を問う質問に答えた。
　同市長は本会議後記者団に対し、「（死者数は）一般的にいわれる３０万とか３万とかはなかったと思う。正しい理解になっていくように考えないといけない」と述べた。
　名古屋市は南京市と友好都市提携している。（2009/09/15-15:52）》

【　名　古　屋　市　は　南　京　市　と　友　好　都　市　提　携　し　て　い　る　】

付記

その1
他所の日記に、この件で書き込み（及び議論モドキ）をしてみましたが、いやー、徒労感が有りますねえ。
幾ら史料を示して差し上げても、認めない人は認めませんし。

結局、人は、見たい物しか見ないのですな。

てな訳で、他所様からは撤退。

その2
某所にて、斯様な内容の日記が有りました（お名前やリンク先は、規約にも引っかかるかも知れませんから、伏せます。文章も、老婆心ながら、そのままの引用は避けました）。

・「南京で虐殺が有った根拠は何か」
・「『南京大虐殺』を最初に言い出したのは極東軍事裁判と思う」
・「決定的な証拠資料は一つも出てきていないと思う」
・「30万人虐殺ではない、中小虐殺や小虐殺が有ったと主張するその根拠は何であるか」
・「当時の中華民国側の資料には、その旨の記述が無い」
・「虐殺が有ったと主張する人は、ソースの提示を願う」

親切な私は、根拠や史料を、諸々とお教えして差し上げましたよ。
そしたらですね、以下のような文章を書かれるではないですか。

・「南京虐殺は無かったと信じている」
・「資料がどうとかではなく、日本人という民族は、他者の考えや尊厳を思いやれる優しさを持っている民族だと信じている故に」

主観（願望）が大事で、資料（史料）を軽視する立場なら、最初から、根拠がどうの、ソースを見せろがどうの、言わなくても良いざんしょ。
冒頭に、「日本人を信じている」「その信頼の前でなら、資料など度外視出来る」という風に書けば宜しい。
ならば私は、「そういう御仁には、例えば、昔の南米に居たと言う《勝ち組》に対して同様、言うべきことは何も無し」と、判断したことでしょう。

あくまで、資料（史料）やソースを重視する立場なら、お好みに合わないそれを提示された後で、史料より主観を重視しているかの様な発言は、してはいかんでしょう。
当方の挙げた史料をお疑いならば、然るべき反証を挙げれば宜しい。

「ソースを見せろ」（史料重視）と、「俺は信じてる」（願望重視）と、双方の立場を両立させ得るという意見だとしたら、誠意か、正気か、どっちかを疑われますよ。

以上、そのお人の日記に書くのも忍びないので、私のチラシの裏にて、独り言でした。