やぶにらみの鳩時計@はてな

2017-12-07

[]岡田秀文『白霧学舎 探偵小説倶楽部 』(光文社)レビュー

白霧学舎 探偵小説倶楽部

白霧学舎 探偵小説倶楽部


 ああ、これはミステリーランドで読みたかったなあ。ていうか、ジュブナイル向けで刊行すればよかったのに。ミステリーの枠組み・展開のなかで、戦時の特異な価値観を読み手に焼き付けるのに過不足ない大団円。『帝都大捜査網』が、ちょっとイジワルな作品だったので、このストレートさが余計にいいではないか。

2017-11-30

[]吉田恭教『化身の哭く森 』(講談社)レビュー

化身の哭く森

化身の哭く森


 かなり大胆な設定というかエグい真相が待ち受ける伝奇ミステリを物してる作者の最新作は、新キャラの探偵がいい味出してる。大風呂敷をきちんと折りたためる人だと思うし、こけおどしではない、ゾクゾク感の出てる話の展開は、三津田信三や小島正樹などにも劣らないので、これからもコンスタントに出してほしい。

2017-11-23

[]今村昌弘 『屍人荘の殺人 』(東京創元社)レビュー

屍人荘の殺人

屍人荘の殺人


 乱歩賞、横溝賞ともに正賞なし、の新人賞不作の年を埋め合わすような持ち重りのある作品ではないが、B級ホラーの世界で本格ミステリを展開させた意欲は頼もしい。もうちょっとホラー作品の薀蓄はあっていいし、ゾンビホラーにあらまほしき生理的感覚に訴えるような恐怖感もほしかった。選評を読む限り、他の候補作に新鮮味がさほどなさそうなのが勝因だろうが、まあ正しい選択ではあったのだろうな。

2017-11-16

[]佐藤究『Ank: a mirroring ape 』(講談社)レビュー

Ank: a mirroring ape

Ank: a mirroring ape


 乱歩賞受賞第一作は、『ジェノサイド』よりも数段オモロイ、バイオロジカル・サスペンス。まあ、こういう小説は個人的にツボにハマらず、語り口もまだるっこしいところがあるので、快速で読み進めるのはやや難だが、クライマックスは拡げた大風呂敷をバキュームで吸い込んだような収束感………って伝わるのか。まあ、人によっては、煙に巻かれたような気がするのではないか。

2017-11-09

[]彩坂美月金木犀と彼女の時間』(東京創元社)レビュー


 ラノベというより古き佳きヤングアダルト小説の質感を湛えたような出来。タイムリープ状況をひとに喋ってすぐに受け入れられてしまう展開には首を捻るが、プロットをいたずらにひねくることをせずに、状況から生じるサスペンスと急転直下のツイストでシンプルにカタルシスをねらう姿勢は悪くない。

2017-11-02

[]辻堂ゆめ『悪女品格』(東京創元社)レビュー


 タイトルから抱いていた印象からは、ハデな話ではなかった。まあこういうタイトルにしなきゃしょうがなかったのはわかる。回想テーマの話では演出しにくい、状況から生じるサスペンスを、現在のパートで埋め合わされているかどうかはともかく、読み手をある程度翻弄してくれるので、退屈しない。でもラストシーンはあれでいいのかなあ。

2017-10-26

[]相沢沙呼『マツリカ・マトリョシカ』(KADOKAWA)レビュー

マツリカ・マトリョシカ

マツリカ・マトリョシカ


 四年ぶりのシリーズ第三弾。読み始めて早々、主人公のちょいキモなヘタレ加減を思い出し、結構このシリーズインパクトあったのかなあ、と。マツリカの女王キャラは何とも思わんのだが。ともあれ、本作は密室事件の毒チョコ、多重解決とその棄却の果てに、露わにされる真相は、その論理展開は十分持ち重りがあって、GJ。

2017-10-19

[]市川憂人『ブルーローズは眠らない』(東京創元社)レビュー

ブルーローズは眠らない

ブルーローズは眠らない


 鮎川賞受賞第一作。エレガントでよろしいです。ネタをてんこ盛らずに、ある方向性に凝集させたぶん、語り口に余裕を持たせることが出来たみたいで、安心安定して読み進められた。今度はストレートなサスペンスが読みたい。

2017-10-12

[] 早坂吝『ドローン探偵と世界の終わりの館 』(文藝春秋)レビュー

ドローン探偵と世界の終わりの館

ドローン探偵と世界の終わりの館


 ははは。まあ後腐れのないイッパツネタの爽快感というかね。作者みたいな作風には、説教臭くなってほしくないんだよなあ。悪い冗談でセカイをひっくり返してほしいっていうか。読み手をヘンに身構えさせるようなスタンスは性癖みたいなもんだと思うから、そのぶんパーッと発散させてほしいもんだが。

2017-10-05

[]歌野晶午『ディレクターズ・カット』(幻冬舎)レビュー

ディレクターズ・カット

ディレクターズ・カット


 いかにも作者らしいギミックを凝らせた一気読みサスペンスだけれども、物語の瘴気と凶気を愉しむ前に、語り口の取っつき悪さに閉口した。どうもナラティブのレベルで、アモラルな挑発的ニュアンスを出したかったように見受けるが、うーん、と唸っちゃうよねえ。もっと登場人物を揶揄するような雰囲気は出せなかったかな。