黒田研二『さよならファントム』(講談社ノベルス)レビュー

本日のエピグラフ

 「そういえば、痛みの記憶は脳みその奥深くにぺったりと貼りつきやすいって、なにかの本で読んだことがあるよ。(…)」(p.209)

さよならファントム (講談社ノベルス)

さよならファントム (講談社ノベルス)



ミステリアス
クロバット
サスペンス
アレゴリカル
インプレッション
トータル45


 ニューロイックなサスペンスで幕を開け、本格として着地する。カタストロフィーは、秩序を反転させ、以て自己回復につなげるのに、必要な階梯であった。俯瞰してみれば、かなり大胆不敵に細部を詰めているけれども、歪な世界の濃やかさを感得できるのは、作者の安定した筆力の賜物。会心の一作と見た。