翔田寛『築地ファントムホテル』(講談社)レビュー

築地ファントムホテル

築地ファントムホテル



 乱歩賞受賞以前に物した連作推理『消えた山高帽子』と同じく、明治維新直後の時代的背景に、主人公が報道写真家ベアトということで、『消えた山高帽子』では新聞記者ワーグマンが探偵役だったことを顧みれば、本作は長編だが姉妹編的存在だろう。焼失した西洋人向けホテルから出てきたイギリス人の変死体をめぐって探偵行が開始されるが、安定した語り口の中に時折重要な史実がさらっと出てくるので、ご注意を。歴史ミステリの佳品。