本日のエピグラフ
「それで僕が君の望む未来に作り替えたとして、果たして君は作り替えたという僕の言葉を信じるのかい? 最初からこれが真実で、僕を嘘つき呼ばわりして、自分を誑かそうとしたと疑うだけだろうね」(「ダムからの遠い道」p.102)
- 作者: 麻耶雄嵩
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2014/08/06
- メディア: 単行本
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ミステリアス | 9 |
アクロバット | 9 |
サスペンス | 8 |
アレゴリカル | 10 |
インプレッション | 9 |
トータル | 45 |
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“愛”をめぐる探偵小説である。“神”にとって人間は被造物だが、それゆえに、“神”の人間への“愛”は、何らかの見返りを求めるものではない。無償の“愛”である。本作の中では、多様な脱構築的ギミックが凝らされているが、それらに堆積されて見えなくなっているものを探れば、そういうことになる。この“愛”の主が、“神”から人間に転換するとき、それは有償性を帯びるものになるだろう。困ったことに、人間は、無償のものより、有償性を帯びた“愛”のほうに、官能性を感得するのである。それを成長ととるか、頽落ととるか。