明利英司『旧校舎は茜色の迷宮』 (講談社ノベルス)レビュー

旧校舎は茜色の迷宮 (講談社ノベルス)

旧校舎は茜色の迷宮 (講談社ノベルス)



 今年の福ミス候補作は、受賞作以外はすべて優秀作として世に出ることになったが、その一冊目。青春ミステリーの看板を大きく掲げるが、小説のニュアンスは、樋口有介のものに近いのではないか。もう少しタイトにまとめても良かったかもしれないが、作者の筆が、ふくらみを持たせた小説空間の構築を楽しんでいるように思えて、好感を持った。