下村敦史『叛徒』(講談社)レビュー

叛徒

叛徒



 近年の乱歩賞受賞作のなかでも高評を得たデビュー作よりインターバルを短くして受賞後第一作が出たのが嬉しい。内容は警察小説というより、ウールリッチ調のサスペンスに近い。通訳捜査官が息子の巻き込まれた事件に、組織を裏切り行動を起こすが、事態はさらに紛糾、制度腐敗と地下社会の浸潤に直面することになる。主人公らのサブエピソードの演出がやや作為的だが、物語の牽引力、意外性が揃って、気にならなかった。満足。