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2018-08-08 ブログの新アドレスです。

●ブログをこちらで再開しました。よろしくお願いします。

https://postit2018.hatenablog.com/

2014-04-05 2014年3月の10アルバム

[]2014年3月10アルバム

10.The Mistys『Redemption Forest』〈Other Ideas/preco records〉2013・2014

Redemption Forest

Redemption Forest

インダストリアル化したエレクトロニカユニットThe booksのAndrew Hargreavesと、女性ヴォーカルBeth Robertsによるユニット。昨年〈Other Ideas〉からアルバムリリースされていたがpreco recordsからシングル曲などを加えて待望の国内盤化。00年代80年代が混合して生まれたミュータント・ポップ。いわばインダス・ノイズ・フィメール・ボーカル2月リリースとのことだが3月になって聴いた。


09.Hauschka『Abandoned City』〈City Slang / Temporary Residence〉2014

Hauschkaの新作。7作目のアルバムでもはやベテランの域か。しかし本作ではこれまでの可憐な感覚は奥に潜め、ダークな感覚横溢している点に、今を感じる。ある種のインダストリアル感があるのだが、コンセプトが世界廃墟になった都市のための音楽ということで納得。プリペアド・ピアノで鳴られる旋律律動音響。初回盤は未発表曲を纏めたCDと2枚組。


08.Thug Entrancer『Death After Life』〈Software〉2014

Death After Life [レーベル・サンプラー付き]

Death After Life [レーベル・サンプラー付き]

●OPN主宰レーベル〈Software〉からリリースされたアルバムシンセティックでミニマル電子音による、まるで骨組みだけのダーク・ディスコティック・ミュージックシリアスアルバムタイトルに相反するような軽薄な感覚もあって面白い。それにしてもOPNのキュレーション力はいつも素晴らしい。どのリリース作品も現代ポストモダンアートのようだ。


07.Real Estate 『Atlas』〈domino〉2014

Atlas

Atlas

ブルックリンギター・ポップ・バンドのサード・アルバム何の変哲もないギタポ?何故ここにこのバンドが?と思う人も多いだろうが、私はフォークロック音楽は嫌いになれない。良い曲を、良い録音で録るという当たり前のことで、新しいことなどなくとも、耐用年度の高い音楽を生み出すことができるという見本か。シンプルな音の積み重ね。そしてギターの音が良い。


06.Ava luna『Electric Balloon』〈Western Vinyl/Tugboat Records〉2014

●同じくニューヨーク・ブルックリンを拠点に活動するバンドのセカンアルバム。前のRealstateと同じくなんでこのバンドがこのリストに?と思われる方も多いだろうが、インディロックR&Bを融合させ、エクスペリメンタルとポップを同時に立ち上げるサウンドはとても素晴らしい。そのソリッドな音はまさにNW現在形!素晴らしい。


05.Marc Behrens『Irregular Characters』〈Museu Serralves、Soopa〉2013

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●長いキャリアを誇るMarc Behrensがポルトガルの美術館からリリースしたミニCD。同美術館での電子音ライブトラックを収録しているのだがそれが刀根康尚氏のサウンド・マテリアルを用いたパフォーマンスなのだ。スチールの表面のように美しい持続からバキバキ電子音までもが圧縮・解凍されていく圧巻の19分。2013年作品だが本年購入。


04.LAND USE/MAURIZIO BIANCHI/PHARMAKUSTIK『SPULFELD』〈Menstrual Recordings〉2011

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2011年作品とのことだが某DUで今年購入したのでここに入れた。しかも2月に購入したのだが3月に入ってから良く聴いていたので3月期にランクインさせた次第。Maurizio Bianchiらによる荒涼とした真冬の光景を思わせるダーク・アンビエント。次第に変化していく音響の構成力にも唸る。ジャケットアートワークのごとき光景音響。私の考える真冬の音響


03.Ø (Mika Vainio) 『Konstellaatio』〈Sahko Recordings〉2014

Konstellaatio

Konstellaatio

●元Pan Sonicという肩書きもそろそろ不要だ。Mika VainioのØ名義の新作アルバム。星空を見上げるような煌きと垂直性。そこにMikaならではの非連続リズムが打たれていく。その音楽音響は彼の過去記憶へと向けられている。フィンランドという土地の記憶マシンへの執着。インダストリアル時代ゆえMika Vainioの音楽がさらに固有性を纏い始めた。


02.Kyoka『Is (Is Superpowered)』〈raster-noton〉2014

IS (Is Superpowered) [ボーナストラック1曲DLコードつき]

IS (Is Superpowered) [ボーナストラック1曲DLコードつき]

●才能が横溢している。リズムベースノイズ。声。伸縮。反復。そしてポップ。電子音楽音響2014年に至った新しいカタチの電子音楽。それが〈raster-notonからリリースされたこと。インダストリアルテクノの潮流を遥か向こうに置き去りにして、コニー・プランクの霊を蘇生させ、この2014年セッションしたかのよう!これぞ最新型のテクノ/ポップ!


01.Kangding Ray『Solens Arc』〈raster-noton〉2014

Solens Arc

Solens Arc

●待望の新作。緻密な作風からどこか初期衝動を重視したトラックメイクへと変貌を遂げた曲だが、Vatican Shadowなどのインダストリアルテクノの潮流へとリンクさせていくような作風にも思えた。このマシニックでいて、その奥底に感情を(マシンノイズの奥底に)潜ませたような音楽音響は非常に現代的である。リリースは当然〈raster-notonから。日本に入ってきたのが3月なので今月になって聴いた。詳細はele-kingレビューに書いたので是非。http://www.ele-king.net/review/album/003717/

2014-02-28 2014年2月の12アルバム

[]2014年2月12アルバム

2014年2月ベストです。今月は12アルバム。この時期はまだ昨年末の作品が日本に入ってきたり、まだ未聴のアルバムを聴いたりしていますので、2013年作品も数作入っています自分リスニングメモも兼ねているので入れてあります。それにしても2月、良作リリースばかりでした。


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12.Janek Schaefer『Lay-by Lullaby』〈12k〉2014

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●Janek Schaeferの新作が12kから。ロンドンの高速道路M3モーターウェイで録音された音に、霧のように曖昧に漂うアンビエントなサウンドをレイヤー。そのシルキーなサウンドは、Janek Schaeferの作品中でも極めて聴きやすい仕上がり。だが、反対に近年の12kにおいては、もっとも先鋭的な仕上がりともいえる。ここにある音楽は、まるで空気のように漂っており、いわば「聴く」という態度を特権化させていない。そしてそれが12k的ともいえるかもしれない。


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11.Machinefabriek『Attention, The Doors Are Closing!』〈fabriek〉2014

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●驚くほど多作なMachinefabriekの2014年盤は、ロシアのダンスカンパニーのための音楽。音の粒や持続がフィジカルに訴えるように構成・作曲されており、彼特有の実験性が外へと開放されているかのような出来栄え


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10.Francisco Meirino『An Extended Meaning For Something Meaningless』〈Auditory Field Theory〉2013

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スペインレーベルよりリリースされたスイス人サウンド・アーティストの作品。ジャケットアートワークそのものように、テープ音源やフィールド・レコーディングノイズ音響へとエディットした現代ミュージック・コンクレート。ガタガタカタカタというプリミティブな物音的な音が次第に持続的なノイズへと変換していく。2013年作品だが2014年になってから入荷したので聴けた。


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9.Camille Norment『Toll』〈PRISMA RECORDS〉2013

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●グラスハーモニカバイオリンより小型のノルウェイの民族楽器ハーディングフェーレ、エレクトリックギターアンサンブルによる現代音楽作品。グラスハーモニカの微細な音響からギターの轟音まで自在に変化していく構成が素晴らしい。2013年作品だが、2014年2月になって初めて知った。


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8.Michael Pisaro/Greg Stuart『Closed Categories in Cartesian Worlds』〈Gravity Wave〉2013

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●Michael Pisaroの2013年作品だが、今年2月になって初めて聴いた。非常に素晴らしかった。サイン波と打楽器クロテイルのための作品で、打楽器という言葉から全く想像ができないほどの静寂さ。サイン波(2000Hz前後の単一のサイン波)に、±200Hz前後の別のサイン波がレイヤー。そこにクロテイルという打楽器の微弱な音を重ねている。コンセプチュアルなサウンド・アート盤。


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7.Sunn O))) & Ulver『Terrestrials』〈Southern Lord〉2014

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●組み合わせは必然、仕上がりは予想を超えていた、そんなアルバムSunn O)))的な轟音は影を潜め、近年のUlver特有のダーク・アンビエントクラシカルムードの中、まるで森の中に燃える太陽のような音楽が生まれ出ている。聴くほどに拘り抜いた録音の数々を実感する。


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6.カフカ鼾『Okite』〈felicity〉2014

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1月リリース作品だが聴いたのは今月なのでここに。web ele-kingレビューを書かせて頂きました。ジム・オルーク現在即興音楽現在交錯する素晴らしい作品。詳しくはここ(http://www.ele-king.net/review/album/003626/)に書いたので読んで頂けると嬉しいです。


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5.LUCY『Churches Schools & Guns』〈Stroboscopic Artefacts〉2014

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●これは多分、コンセプチュアル・アルバムなのだろう。アルバムの始まりから終わりまで、ひとつの流れ(物語)がるように感じる。また、00年代以降の電子音響/エレクトロニカ技法もそこかしこで総活用されており、コンテクスト越境する完成度の高い作品となっている。

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4.BJ Nilsen『Eye of the Microphone』〈touch〉2013

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●touchから2013年12月に出た盤だがこれも聴いたのは2014年2月に入ってからなのでここに。フィールド・レコーディングされた素材を徹底的にエディットし、電子音レイヤーさせていくことで、見事な音響作曲している。そのダイナミックかつ緻密なサウンドエディットがもたらす空間性の生成は、フィールド・レコーディングにおける「作曲=構成」論としても注目に値する出来栄え


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3.Francisco López『Presque Tout (Quiet Pieces: 1993-2013)』〈LINE〉2014

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2014年LINE最初のランナップは、Francisco Lópezの音響データを計7時間ほど収録したDVDデータアルバム1993年から2013年までの20年におよぶトラック(WAVファイル)を網羅しており、Francisco Lópezクロニクルとしても有用ディスクとなるだろう。音と環境クリティカル考察の豊穣な結実がここにはあり、いわば「フィールド・レコーディング/サウンド・アートの20年」を考えるきっかけにもなるはず。また、このアルバムLINEからリリースされたことの意味は、2014年のサウンド・アートの動向を考える意味でも極めて重要意味を持つのではないか。時に徹底的な微音で、しかし、時に耳を大きく震わす音の質感の静寂と躍動。「聴くこと/聴こえないこと」をめぐる実験。近作になるほど、深い震動が増してくる。微かな音の発する震動の聴取が堪らない。2013年作の3時間に及びトラックをまず聴いて頂きたい。殆ど何も聴こえない3時間。しかし微かに、本当に微かな小さな震えは感じることができる。


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2.Nicolas Bernier『frequencies (a / fragments)』〈LINE〉2014

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●同じく2014年LINE最初リリース作品。音響アーティストNicolas Bernierの新作がLINEから音叉を使ったサウンド・アート作品の音源化だ。クリアな響きによる電子音響作品。アルバム1トラックの長尺(33分)だが、クリスタルな音質のサウンドが次第に生成変化を遂げ行くので聴いていて全く飽きない。その澄み切った音の震えが刺激的かつ快楽的だ。Nicolas Bernierは、Home Nomalなどからポストクラシカルアンビエント作品をリリースしていたアーティストだが、近年は、このシステムを用いた極めて硬質かつクリスタルエクスペリメンタル電子音響作品へと転身。昨年Entr'acteから出た別バージョンも良いので、そちらも必聴。raster-notonファンも是非。アルバムアートワーククール。因みに、先に挙げたFrancisco MeirinoらとBoldというインプロ・ノイズ・ユニットでの活動も行っており、そちらも実にユニークだ。


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1.竹村延和『Zeitraum』〈Happenings〉2014

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12年ぶりの新作?いや、そもそもそんな単一な時間の流れほど本作と無関係ものはないだろう。10年前も15年前も、つい昨日のように繋がっていると同時に、遥か未来、もしくは遠い過去からやってきたような新ノスタルジア楽曲の数々。なんという瑞々しさ。電子音楽楽器(多分、ソフトシンセか?)の音の隙間から普遍と実験の両方が同時に生成しつつ存在している鮮烈さ。思考からオトノカタチへ。そしてオトノカタチから時間への、複雑で単純な、そう、まさに「子供魔法」のような音楽。まるで童謡ヴェーベルンか。もしくは電子音楽になったアクサクマブールか。それとも2010年代の新しいレコメンミュージックか。これは途方もない傑作である。そして、この時間への意識は、やはり京都という街で生まれ育った人だからこそ持てるものではないかとも思う。自分のようなせせこましい時間感覚しか持ち得ない「東京田舎者」には持てない「時間」に対する距離と意識。羨望するしかない。ここにあるのは、ある独自の音楽メソッドで書かれた音楽である

2014-02-10 Chris Watson『In St Cuthbert’s Time』

MUSIC]Chris Watson『In St Cuthbert's Time

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●touchからソロアルバムを出し続けているChris Watsonの2013年新作。本作もこれまでと同様に高機能マイクで録音された自然界の音の蠢きが生々しく捉えられた秀逸なフィールド・レコーディングアルバムに仕上がっている。

●Chris Watsonは本作のために、イギリスはノーサンバーランド州の小島リンディスファーンでフィールド・レコーディングを行ったという。作品コンセプトは7世紀の音の再現(!)。ちなみにアルバムタイトルとして付けられた「St Cuthbert」は、7世紀後半に亡くなった「リンディスファーンの聖人」の名とのこと(全然、知りませんでした)。

アルバムには、いつものChris Watson作品どおり、鳥たちの鳴き声や、島の環境に鳴り響いていたであろう自然の音が見事に捉えられている。じっと聴き込んでいくと、その音たちによって、リンディスファーンに連れ出してくれる感覚を覚えるほど。

●前作『El Tren Fantasma』(2011)は列車の音を中心に捉えられ、車輪の反復的な音を増幅させたりするなど、かなり意図的な操作をされたアルバムだったので(ある意味インダストリアルとでもいうような・笑)、彼のソロ作品としては、いささか異質であった。その意味で本作は久しぶりのChris Watsonならではの純粋フィールド・レコーディング作品といえよう(ちなみに、2011年にはMarcus DavidsonとのアルバムCross-Pollination』もリリースされている)。

●しかし、いったい人は、何をもって「生々しいフィールド・レコーディング作品」などというのだろうか。そもそもステレオ・マイクに録音した時点で、音は人為的意図的に切り取られてしまものだ。つまりコンポションされてしまう。

●私見だが、Chris Watsonがソロ作品で実践していることは、このようなコンポジションではないか。世界に満ち溢れている(いた)膨大で、豊かで、測定不可能で、途方もない時間空間内包した自然界の音の蠢きを、マイクという機器によって、切り取ること。その、もっとも原始的なコンポジション実践すること。録音によって生じてしま音響の変化を作品として定着すること。

●その意味で、私たちは一聴して「生々しい音」と感じるカモやムクドリの鳴き声や自然界の音であっても、むしろ元々の音の意味から一度切り離された「新しい音=響」として聴くことが求められている(もちろん、まずもって自然界の音の豊かさを聴取することは間違いではない)。音それ自体の驚きや、心地良さや、快楽を味わうこと。聴き尽くすこと。そう、録音とは何度も繰り返し聴けるからこそ録音なのだから

●Chris Watsonは、音と環境の録音という実践を通じて、環境音がどんなに生々しく録音されていたにしても、それは世界に対して人為的行為、つまりコンポジションであるという事実を見事に作品化している。録音の持つ、二つの特性。つまり「生々しさ/録音されている時点で既に人為的」という二つの極の間にスラッシュを作るのだ。二つの極を融解し、その差異を際立たせていく…。

●ともあれまずはその音の豊かさに耳を澄まし、うたれることが大切だ。自然の音/音の世界。なんという音と空間か、これが世界に満ちていた蠢く音の場か、と感嘆すればいい。音への鮮烈な驚きと初めて音を録音したときのような鮮烈な驚き、がここにあるのだから。サウンドの新たなパースペクティブの生成。その意味でこれは確かにサウンド・アートひとつのカタチであり大きな達成でもある。

2013

2014-02-09 『Variable Formations』

[]Johnny Chang, Angharad Davies, Jamie Drouin, Phil Durrant, Lee Patterson, John Tilbury『Variable Formations』

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●始めに、John Tilburyの静謐ピアノが雨粒のように落とされる。そこにお経のような反復感のあるドローンと、ラジオノイズ的なガサゴソした音が折りかさなっていくのだ。そんな静謐さに介入するノイズによって、ピアノもまた低音域へと移行するだろう。始まってから2分ほどで変化を遂げるアンサンブル。やがてピアノはときおり、高音域で崩れるような奏法で演奏を展開し様々なノイズとの差異を際立たせ、やがて音の姿を消していく…。

●英国実験・即興音楽レーベルAnother Timbreからリリースされた本盤は、AMMのJohn Tilburyのピアノをその演奏を始点に置くことで始まるライブ録音盤だ。そこに、Johnny Changのヴィオラ、Angharad Daviesのヴァイオリン、サウンド・アーティストJamie DrouinとPhil Durrantのエレクトロニクス、Lee Pattersonのアンプリファイ・オブジェによるノイズなど、Another Timbre勢によるノイズ・サウンド・インプロヴィゼーションが濃厚に、静謐に、そしてバリエーション豊かに絡み合っていくのだ。

●途中ピアノはその姿を消したり、また表したりするのだが、その間合いが素晴らしく、さすがJohn Tilburyと感嘆してしまう。John Tilburyは09年にモートン・フェルドマンの録音もリリースしていたが、本作における機械的で静かなノイズインプロヴィゼーションのの隙間から、不意に、どこかフェルドマン的な時間感覚を持ったピアノが鳴り響く瞬間など、真冬の空気のような清冽なサイレンスさを放っているようにすら思える。

演奏は、中盤を越えたあたりから何をこするようなノイズが鳴ったり、信号音の持続みたいなノイジーな音が全面に出てくる。ある箇所では、ノイズがいっせいに消え去り、ヴァイオリンチェロの弦を打つ演奏も鳴る。つまり、ある一定静謐さを失うことなくバリエーション豊かな演奏が続いていくのだ。本作の演奏はノイジーでありながらも、一定の静けさを失っていないのが良い。しかも、そのノイズ物質的な響きなのも、また良いのだ。

時間の中で機械の音が静かに浮遊するような音。時間が延々と引き延ばされる音。音から音への移行=演奏。とにかくレベルの高い即興演奏を満喫できる1作だった。計41分1トラックジャケットアートワークも本作の雰囲気を良く表しているように思った。

●録音は、2013年2月、ロンドンのCafé Otoにて。ちょうど約1年前の録音。Café Otoのwebサイトをみると、かなり興味深いラインナップ。JANDEKのライブもあるみたい。http://www.cafeoto.co.uk/ 

2013

2014-02-08 Bruce Gilbert and BAW『Diluvial』

MUSIC]Bruce Gilbert and BAW『Diluvial』

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2013年にtouchからリリースされたBruce GilbertとBAWのコラボレーション盤。

●BAWとはDavid CrawforthとはBeaconsfield Art Worksの略で、Naomi Siderfinによるユニット。このアルバムはフィールド・レコーディング音源を素材としつつ、生々しい電子音を重ねていくといった実験をブリリアント昇華した音響作品。エディットされたフィーレコ音源と剥き出しの電子音が次第に音量を増しては消えていく楽曲を7曲収録している。

メーカーインフォによると「地球温暖化にる大洪水が起こると仮定したときの世界の状態をテーマに、聖書にでてくる大洪水「Diluvial」からタイトル名を引用した」とのこと。また「英サフォークの浜辺やロンドンで行われたフィールドレコーディングの素材を元に制作された、聖書天地創造の7日間をほのめかすような7曲で構成されて」いるとも。因みにアルバム名『Diluvia』は聖書に出てくる大洪水の名。確かに、このアルバムに収録された音を聴いていると、確かに“地球の終わり”を感じさせる。同時に始まりと終わりが曖昧な音で、そのコンポジション(と音の質感)がとても独特に感じるのだ。いつの間にか始まって、いつのまにか終わる、とでもいうような。

●この作品、元はインスタレーションであったようで、本作はそのサウンドのみのリリース。確かに、ある明確なコンセプトを元にビジュアル音源を作っていったように思えるのだが、これは音だけになったときの効能というか、聴き手へのイマジネーションの増加作用と、そのイマジネーションの生成を脱臼させるような音の独自性が同時に生まれていて、つい何度も何度も聴いてしまう魅惑がある。つまり「何度聴いても聴き切った気がまるでしない」魅力。この脱臼するような実験感覚は、やはりあのBruce Gilbert的かも。聴く度に、はぐらかされるような感覚が堪らない。

●また、昨年はBruce GilbertのDome『Dome3&4』(1981)を聴いたりもしていたので、個人的にはその意味でもタイムリーアルバムだった。

2013

2014-02-02 2014年1月の9アルバム

[]2014年1月の9アルバム

私が2014年に1月に良く聴いたアルバムを、何故か10作品ではなく、9作品を選びました(笑・中途半端ですみません)。後、1月なので昨年末に購入した作品も幾つか入っています。

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9.Basic House『Oats』

Oats

Oats

●Opal Tapes主宰Stephen BishopのBasic Houseのフル・アルバム。数々のカセット作品を経ての待望の初アルバムとのこと。インダストリアル/テクノのダークホース的位置づけではないか。2013年の作品だが今年頭に聴いた。


8.Actress『Ghettoville』

●待望の新作だが、リリース後の各種海外メディア(「ピッチフォーク」や「RA」など)の評価は微妙(というか良くない)。彼のメディア・ハイプな言動が鼻についたからかな。音楽的には私はそんなに嫌いではない。くすんだ音色の、壊れかけたブラック・テクノたミュージック。これは2014年作品。


7.Vatican Shadow『When You Are Crawling』

When You Are Crawling

When You Are Crawling

●アルバムよりテクノ濃度が増しており、よりフロアライクな仕上がりに。ブラック・メタル的なリフが魅力的であったアルバムとはまた違う良さがある。よりSilent Servant色が強いともいえる。アルバムもそうだが、ジャケットも含めポリティカルなメッセージも。これも2013年末のリリースだったが、2014年1月上旬にようやく入手したのでここに。


6.灰野敬二 (experimental mixture)『IN THE WORLD

IN THE WORLD

IN THE WORLD

●灰野氏2作目のMIXCD。CD3枚に渡って繰り広げられるの音の渦。ロックもノイズもテクノもクラシックも民族音楽も呑みこみ、全くジャンルを問わず、形式を越境し、自身が求めるリズムと音色を探究していった音を、灰野氏だけがもっているリズム感覚で重ねられた結果、世界に類をみない真にオリジナルなミックスCDが生まれた(と思っています)。まさに他にない音楽/音響の時間がここに。灰野氏の脳内に流れている音楽=時間を体感できるとも。2013年12月25日リリース。実質聴いたのは1月なのでここに入れた。


5.HIDENKA x FUMITAKE TAMURA (BUN) 『MUDDY WATER』

MUDDY WATER

MUDDY WATER

●FUMITAKE TAMURAさんのトラックはミニマリズムとジャズを絶妙にミックスしている。真っ白い空気のように清潔だ。そしてHIDENKAさんのライムはまるでセクシュアル・アジテーションのような色気があり、トラックとの化学変化も絶妙。聴くほどにクセになる盤。実はロバート・グラスパーなどを愛好するジャズリスナーにも聴いてほしい一枚。ジャズではないけど。2014年作品。


4.Otto A Totland『Pino (limited edition)』

Pino

Pino

●素朴で美しいポスト・クラシカル。切ないメロディが胸に染みる。あのアンビエント・ユニットDeaf Centerの人のソロ・アルバムで、ニルス・フラームのDurton Studiosで録音されたとのこと。確かに彼の『Felt』に近い音響。ローファイのようでいて、音は澄んでいるという稀有な録音。流石。Sonic Piecesからのリリースで、自分が買ったのはブック型450部限定ジャケットでした。セカンド・エディションも限定みたいです。Amazonでは2月発売になっていますが店舗ではもう売っています。2014年。


3.Gabriel Saloman『Soldier's Requiem』

Soldier's Requiem

Soldier's Requiem

●これは2013年作品で、元Yellow Swansの人のソロ・アルバム。YSといえば、昨年大ブレイクした片割れPete Swanson『Punk Authority +』を思い出すが、この人もアルバムを出していた。音楽ライターの久保正樹氏のele-kingレビューや年間ベストで遅ればせながら知った次第。聴いてみたらこれが素晴らしいアルバムで驚愕した。モダン・クラシカルなピアノの旋律に、霧の中に漂うようなノイズ、底なしのダーク・アンビエント、行進曲のマーチにノイズ。雨の音、風の音。それらが暗闇の中で融解するようなサウンド。その豊かで、どこか胡散臭い音楽性に漂う哀愁感と悲壮感。戦士へのレクイエム。音楽性は違えとインダストリアル/テクノのムーブメントのとの接続を感じる。とにかく素晴らしいアルバムです。2013年。


2.Joseph Hammer『Roadless Travel』

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●Joseph Hammerさん、2枚目のプレスCD作品がArt into lifeからリリースされた。PANからのアルバムはアナログ・オンリーだったし、『Show Em The Door』はJason Crumerとのコラボ盤だったし、最初のソロ作品『Dynasty Suites』は入手困難だしで、でようやく聴けたソロ。嬉しい。内容も当然すばらしい。歪んだテープ・コラージュのループとコラージュとレイヤーから生まれる未知の音楽、不思議な音像。謎と快楽。坂口卓也さんのライナーも超濃厚で、私のような新参者には助かります。2014年。


1.shotahirama『post punk

post punk

post punk

●これぞ2014年最初の衝撃。shotahiramaさんのサード・アルバム。ここに炸裂しているのは電子音響の新しい楔と衝動だ。聴くほどの耳が音も求める。聴くほどに聴きたくなる。この脅威的な中毒性と快楽性。一瞬のコンポジションを、さらに磨き上げることで生まれたかのごとき驚異的な情報密度、密度、密度!20分弱なのに60分ほど密度がある脅威のアルバム。まさに時間を超える電子音響/音楽の試みと実践である。とにかく、これは「宣言」のような作品だから、当然、2014年の始まりを告げるのに、これほど相応しいアルバムもないだろう。感情のない(はずの)電子音に圧縮されたラブとヘイトの塊と衝動と冷静と快楽!自分は本盤を電子音響アティチュードとも受け取った。初回特典のCD−R収録のライブ・トラックもまた最高。ギターも!2014年。

2014-01-30 Basic House『Oats』

[]Basic House『Oats』

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●数々のカセットリリースで知られるイギリスはOpal Tapes主宰Stephen BishopによるBasic House名義のフルアルバムリリースAlterからノイズによるテクノに対する崩壊の美。からみつく不安定なノイズマシンビート。不規則不安定の中の快楽。いわば、ロウファイになったThe Strangerか。もしくはヴィデオカセット映像のようなDemdike Stareか。霞んだザラついた音色が聴き手の聴覚イマジネーションを刺激する。2013年インダストリアルテクノアルバム中でもダークホースとでもいえる傑作。

2013

2014-01-25 Dadub『You Are Eternity』

[]Dadub『You Are Eternity』

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●Stroboscopic ArtefactsからリリースされたDANIELE ANTEZZAとGIOVANNI CONTIのイタリア人デュオファーストアルバム。彼らはStroboscopic Artefactsリリース作品のマスタリングを手掛けている。

●2年の歳月を費やして完成したこのアルバムは、テクノミュージックに、ノイズインダストリアルムードを注入して出来上がった完成度の高いエレクトロニクス・ミュージック空間性と構築性が絶妙交錯しており、さながら自然現象のようなテクノミュージックを聴かせてくれる。ダイナミックな音響と、複雑・緻密・ハイファイな音が見事に交錯していくのだ。そして深く刻むキックの音。

アルバムジャケットのように森の奥深くで鳴り響く音が、テクノロジーを介して再生成したかのような音響テクノ。同時にテクノ彫刻芸術でもある。ヘッドフォン聴くと、自然と幾何学がノイズを介して交錯する怪しげな別世界へとトリップしてしまう。傑作。

2013

2014-01-20 Seaworthy + Taylor Deupree『Wood, Winter, Hollow』

[]Seaworthy + Taylor Deupree『Wood, Winter, Hollow』

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ナイロンギターとフィールド・レコーディング。そこに重なる微かな、本当に微かなアナログ・シンセ電子音。それらの音を絶妙にエディットしてみせる音響は、まさにジャケットアートワークのように冬の冷たくも清潔な空気をあたりに生み出す。雪が降りしきり木々を覆う…、そんな季節の音と空気のように。その編集と録音の手つきは、とても丁寧で、繊細だ。

●本アルバムは、12k主宰のサウンド・アーティスト Taylor Deupreeオーストラリア人音楽家Seaworthyによるコラボレーション作品であるTaylor Deupreのスタジオ近くの自然保護地区で録音された環境音に、Seaworthyの柔らかいギター旋律音色を折りかさねるように共同で作曲・録音をしていったという。3曲の楽曲に挟まれるように、フィールドレコーディング作品が置かれるアルバム構成も秀逸であり、聴き手を深い沈静と集中に導く。

●Seaworthyの間と柔らかに満ちたギターこの音色は、まるで冬に点す暖炉の火のように暖かく、そして、そこに重ねられる環境音は、冬の厳しくも、冷たく、そして清冽な空気のようであるアルバムを終盤を迎えると、その音響は、冬の厳しさを体現するかのように、ノイジーになる。単に優しいアンビエントというだけではない、本作特有の魅力が、ここにある。

●まさにサイレンス/クワイエット・アンビエンス・アルバム。昨年の初夏にリリースされた作品だが、今の季節に聴くと非常にハマる。

2013

2014-01-12 TROPIC OF CANCER『Restless Idylls』

[]TROPIC OF CANCER『Restless Idylls』

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●Blackest Ever BlackからリリースされたTROPIC OF CANCERのアルバムである

●Camella LoboのソロユニットであるTROPIC OF CANCER。現在、Silent Servant/Juan Mendezはユニットから離脱したものの、冷たくも美しい石の彫刻のようなコールド・シンセミュージックは、活動初期からまったく揺るぐことなく健在である

●本作においても、冷たく無機的なシンセの音と、たゆたうようなボーカル、硬いリズムマシン、空気のような微かに音を紡ぐノイジーなエレクトリックギターなどが織り成す白昼夢のような音響の絡み合いが、ただただ美しい。

●ついフィメール・ジョイ・ディヴィジョンとも言ってしまいたくなるし、確かに、その硬い音質のリズムビート)にも耳が行ってしまものだが、しかし、本作の肝は幽玄ボーカルクールに持続するシンセレイヤー感にあるような気がしている(もちろん、ギターもだ)。そこに現代的なアンビエントドローン的な質感を聞き取ってしまうのである。いわばGrouperとの同時代性を感じてしまうとでもいうべきか。

●その意味で、あえて図式的に再確認すれば、本作には、「80年代的なものへの回帰」があり、ついで「10年代ドローンアンビエントとの同時代性」が横たわり、それら両極を繋ぐものとして、「Regis/Karl O'ConnorやSilent Servant・Juan Mendezとの関係などから分かる90年代以降の(インダストリアルテクノとの交錯」があるといえる。つまり本作には(も)、実は複数の文脈が交錯しており、そして、この文脈が並列に繋がっていく感覚が、いかにも10年代的だと思えるのだ。もちろん、個人的にも、音楽性、音の質感、ジャケットアートワークレーベルなども含めて2013年のエレクトロニクス・ミュージックリファレンスする際に重要な作品の一枚(もちろん他にもたくさんあるのだが)になるのではないかと考えている。

●ともあれ、その冷たい石のような音楽性は聴くほどに中毒になる魅惑があるのは間違いない。何よりそれが重要である。文脈は消えようと作品は残るものだ。私は2013年、この盤を何度も聴き直すうちに、その氷点下のシンセ電子音の持続にどんどん惹かれてきた。アートワークのシャンデリアに触れそうな手のように、この美しいシンセヴォイスの音の肌理に手を伸ばしたくなるように、だ。

2013

2014-01-07 ÄÄNIPÄÄ 『Through A Pre-Memory』

[]ÄÄNIPÄÄ『Through A Pre-Memory』

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2013年最後の衝撃波であった。予想を超えていた、というべきか。

スティーブン・オマリーとミカ・ヴァイニオのコラボレーション作品と聞けば、まさにスター(?)同士の競演ということで確かにその話題性には飛びつくものの、なんとなく音の方も想像が付くというか、想定内の仕上がりになるのでないかなどど、極めて浅はかに思っていた。

●が、しかし、実際にアルバムを聴いてみて本当に驚いた。単純なヘビーなドローンな作品かと思っていたこちらが浅はかであった。重厚インダストリアルマシンビートも導入され、そこに個性的ギターノイズ音響、さらには絶叫に等しい声が絡み合っていく衝撃的な内容であった。ここにあるのは、実存的な不安存在論的な空虚であるゾンビのように絶望空虚と紙一重の…。聴いていると不安になる。だがその空虚絶望快楽的なのである。軋み合い、炸裂し、侵食し、離散する音響音楽の群れが快楽的なのである。。

プロデューススティーブン・オマリーが手がけたという。マスタリングはPANからリリースしたソロアルバム『Traditional Music Of Notional Species Vol. I 』も話題の Rashad Becker。テープオペレーションは、EarthSunn O))) & Boris、Six Organs Of Admittanceなどにも参加したRandall Dunn。 ボーカリゼーションはAlan Dubin、ヴィオラは Eyvind Kang(Eyvind Kangはストリングス・アレンジメントも担当)。コントラバスは Moriah Neils、チェロは、Maria Scherer Wilsonなどが参加し、オマリーとヴァイニオによる痙攣的電子・電気ノイズに共鳴するような音響を響かせている。そう、まさに「叫び」のように。

2013年世界不安の只中、音楽音響は、ゾンビのような空虚へと変貌した…? 本作においては、二人の充実したキャリアが、その個性を十二分に維持したまま予想外のほうに融解・透過していく。世界的潮流のように思えるインダストリアルノイズムーブメントとの交錯を聴き取ることもでできるが、そもそも彼らは20年前からノイズインダストリアルであったわけだから、これは時代流行に合わせたわけではなく、むしろ必然というべきだろう。

ジャケットアートワークは表面は構成主義のようなシンプルさ(手塗りの質感が分かる点も素晴らしい)。しかしウラ面や中面を開けば鮮血の痕跡のような赤が瞳を襲う。ここにあるのは、いわば統率された世界不安そのものを裏返したような世界である。真の混沌空虚を、音楽アートワークが両方から挟み込むこと。最近のKTLより、こちらの方が断然新しいし現代的だと思った。そして衝撃的であった。2013年最後の、音響の衝撃波。

2013

2014-01-06 Zeitgeber『Zeitgeber』

[]Zeitgeber『Zeitgeber』

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LucySpeedy Jによるエクスペリメンタル音響が魅惑的なテクノユニットリリースLUCY主宰するStroboscopic Artefactsからである。Stroboscopic Artefactsからリリースの作品は、Lucyソロアルバム『Wordplay For Working Bees』(2011)や、同レーベルマスタリングエンジニアも勤めるDADUB『You Are Eternity』(2013)を聴いても分かるように、どの作品も高品質クオリティを誇る。

●本作も同様に非常に質が高い。テクノダンス・ミュージック機能性をしっかりと維持しながらも、その機能性(及び聴き手の意識)を拡張・逸脱する音楽性には、一種の先鋭的実験的電子音楽作品としての風格すら漂っているように思えた。テクノノイズ、インダスリアルアンビエント21世紀民族音楽としての電子音楽。

●その美しいサイエンティックなアートワークからも分かるように、Zeitgeberのトラックは、どこか数式のようなクールさを放っている。冷たい電子音の反復、その同調。光景のシンクロ。音響の同調。そしてそのクール/サイエンティックな電子音の反復の奥と芯には、どこか黙示録的な儀式性へと繋がる冷めた時代意識が流れている。その二つが折り重なり、電子音による反復と逸脱を生み出すことで、聴き手の意識にも覚醒を陶酔を同時に促すだろう。このサウンドには「二つ」の意識が同時に流れている。Zeitgeberのサウンドは真冬でも真夏でも同じくらいに冷たい。私は本作を聴きながら、どこか雪の結晶を想起した。雪の結晶のように、生成し、消えていく、そんな刹那電子音楽を。

●真っ白に漂白されたサイエンティック・テクノ。そこに蠢くインダストリーな時代意識。それらが交錯するときに想起される雪のようなイマジネーション。そして、ラストトラック「Display 24」の地響きのように重く鳴る音は、黙示録的な光景研究室から眺めるような、不思議クールさを漂わせている。二項対立の果てにある三つ目の視点・聴点の冷静さのようにも感じられた。だが本作がLucySpeedy Jの二人によるユニットであることからすれば当然のことかも知れない。「二」から巻き起こる拡張的・逸脱的同調因子、Zeitgeber。

2013