[]Michael Chapman『Pachyderm』


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枯れ切ったミニマルギターの響きと旋律。音と音の間から残響が震え、少しだけ音楽遠近法が壊れる。英国フォークシンガーソングライターとして長い経歴を誇り、サーストンムーアからリスペクトされているMichael Chapmanの新作は、彼のミニマルギターインプロヴィゼーションに焦点を当てたアルバムである。当然、ボーカルはなく、John Faheyがいっそうミニマルになったような響きと旋律が持続する演奏となっている。

アルバムには長尺2曲を収録。24分に及ぶギターソロである。1曲目はMichael Chapmanによるギターソロ。同じフレーズが少しずつズレを孕みながら持続していく。その何も起こらなさと、起こらない中で、認識遠近法が不意にズレていく感覚。絶妙演奏残響のコントロールの見事さ。部分的にはもう一つのギターを重ねているのだろうか。それが音と音の微かなリズムを生み出し、素晴らしい効果を生み出しているように思う。また、録音が非常に良い。ギターの近くで音を録っている印象である演奏者の息遣いが聞こえ、弦の震えを耳から感じるような音。

2曲目はRobert Antonyによる電子音楽/音響とのリミックス・バージョンであるオリジナル演奏も素晴らしいが、このリミックス・バージョンも非常に興味深い仕上がり。オリジナルギター残響呼応するかのように大胆・繊細に電子音が重ねられていくのだ。その乾いた響きの電子音響は次第にノイジーさを増し、ドローンや細やかなノイズパルスのような電子音の層が楽曲を覆っていく。まるでMichael Chapmanのギター電子音響とのセッションのようにも聴こえるし、同時に存在しない時間空間で鳴り響いている音響にも思える。

オリジナル演奏電子音響によるリミックス。この2曲で構成されたアルバムは、何かが「起こること」と「起こらないこと」の境目でアンビエント/アンビエンスが鳴っている。繰り返しとズレ。レイヤーと侵食。音楽音響。二項対立をその中間で無為にしてしまうような、時間が止まる寸前の消尽したものの美しさが、ここにはある。

Pachyderm

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