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2014-02-09

[]Johnny Chang, Angharad Davies, Jamie Drouin, Phil Durrant, Lee Patterson, John Tilbury『Variable Formations』

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●始めに、John Tilburyの静謐ピアノが雨粒のように落とされる。そこにお経のような反復感のあるドローンと、ラジオノイズ的なガサゴソした音が折りかさなっていくのだ。そんな静謐さに介入するノイズによって、ピアノもまた低音域へと移行するだろう。始まってから2分ほどで変化を遂げるアンサンブル。やがてピアノはときおり、高音域で崩れるような奏法で演奏を展開し様々なノイズとの差異を際立たせ、やがて音の姿を消していく…。

●英国実験・即興音楽レーベルAnother Timbreからリリースされた本盤は、AMMのJohn Tilburyのピアノをその演奏を始点に置くことで始まるライブ録音盤だ。そこに、Johnny Changのヴィオラ、Angharad Daviesのヴァイオリン、サウンド・アーティストJamie DrouinとPhil Durrantのエレクトロニクス、Lee Pattersonのアンプリファイ・オブジェによるノイズなど、Another Timbre勢によるノイズ・サウンド・インプロヴィゼーションが濃厚に、静謐に、そしてバリエーション豊かに絡み合っていくのだ。

●途中ピアノはその姿を消したり、また表したりするのだが、その間合いが素晴らしく、さすがJohn Tilburyと感嘆してしまう。John Tilburyは09年にモートン・フェルドマンの録音もリリースしていたが、本作における機械的で静かなノイズインプロヴィゼーションのの隙間から、不意に、どこかフェルドマン的な時間感覚を持ったピアノが鳴り響く瞬間など、真冬の空気のような清冽なサイレンスさを放っているようにすら思える。

演奏は、中盤を越えたあたりから何をこするようなノイズが鳴ったり、信号音の持続みたいなノイジーな音が全面に出てくる。ある箇所では、ノイズがいっせいに消え去り、ヴァイオリンチェロの弦を打つ演奏も鳴る。つまり、ある一定静謐さを失うことなくバリエーション豊かな演奏が続いていくのだ。本作の演奏はノイジーでありながらも、一定の静けさを失っていないのが良い。しかも、そのノイズ物質的な響きなのも、また良いのだ。

時間の中で機械の音が静かに浮遊するような音。時間が延々と引き延ばされる音。音から音への移行=演奏。とにかくレベルの高い即興演奏を満喫できる1作だった。計41分1トラックジャケットアートワークも本作の雰囲気を良く表しているように思った。

●録音は、2013年2月、ロンドンのCafé Otoにて。ちょうど約1年前の録音。Café Otoのwebサイトをみると、かなり興味深いラインナップ。JANDEKのライブもあるみたい。http://www.cafeoto.co.uk/ 

2013

2014-01-30

[]Basic House『Oats』

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●数々のカセットリリースで知られるイギリスはOpal Tapes主宰Stephen BishopによるBasic House名義のフルアルバムリリースAlterからノイズによるテクノに対する崩壊の美。からみつく不安定なノイズマシンビート。不規則不安定の中の快楽。いわば、ロウファイになったThe Strangerか。もしくはヴィデオカセット映像のようなDemdike Stareか。霞んだザラついた音色が聴き手の聴覚イマジネーションを刺激する。2013年インダストリアルテクノアルバム中でもダークホースとでもいえる傑作。

2013

2014-01-25

[]Dadub『You Are Eternity』

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●Stroboscopic ArtefactsからリリースされたDANIELE ANTEZZAとGIOVANNI CONTIのイタリア人デュオのファースト・アルバム。彼らはStroboscopic Artefactsリリース作品のマスタリングを手掛けている。

●2年の歳月を費やして完成したこのアルバムは、テクノ・ミュージックに、ノイズインダストリアルのムードを注入して出来上がった完成度の高いエレクトロニクス・ミュージック。空間性と構築性が絶妙に交錯しており、さながら自然現象のようなテクノ・ミュージックを聴かせてくれる。ダイナミックな音響と、複雑・緻密・ハイファイな音が見事に交錯していくのだ。そして深く刻むキックの音。

アルバムジャケットのように森の奥深くで鳴り響く音が、テクノロジーを介して再生成したかのような音響テクノ。同時にテクノの彫刻芸術でもある。ヘッドフォンで聴くと、自然と幾何学がノイズを介して交錯する怪しげな別世界へとトリップしてしまう。傑作。

2013

2014-01-20

[]Seaworthy + Taylor Deupree『Wood, Winter, Hollow』

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●ナイロン・ギターとフィールド・レコーディング。そこに重なる微かな、本当に微かなアナログ・シンセや電子音。それらの音を絶妙にエディットしてみせる音響は、まさにジャケットアートワークのように冬の冷たくも清潔な空気をあたりに生み出す。雪が降りしきり木々を覆う…、そんな季節の音と空気のように。その編集と録音の手つきは、とても丁寧で、繊細だ。

●本アルバムは、12k主宰のサウンド・アーティスト Taylor Deupreeとオーストラリア人音楽家Seaworthyによるコラボレーション作品である。Taylor Deupreのスタジオ近くの自然保護地区で録音された環境音に、Seaworthyの柔らかいギターの旋律と音色を折りかさねるように共同で作曲・録音をしていったという。3曲の楽曲に挟まれるように、フィールドレコーディング作品が置かれるアルバム構成も秀逸であり、聴き手を深い沈静と集中に導く。

●Seaworthyの間と柔らかに満ちたギターこの音色は、まるで冬に点す暖炉の火のように暖かく、そして、そこに重ねられる環境音は、冬の厳しくも、冷たく、そして清冽な空気のようであるアルバムを終盤を迎えると、その音響は、冬の厳しさを体現するかのように、ノイジーになる。単に優しいアンビエントというだけではない、本作特有の魅力が、ここにある。

●まさにサイレンス/クワイエット・アンビエンス・アルバム。昨年の初夏にリリースされた作品だが、今の季節に聴くと非常にハマる。

2013

2014-01-12

[]TROPIC OF CANCER『Restless Idylls』

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●Blackest Ever BlackからリリースされたTROPIC OF CANCERのアルバムである

●Camella LoboのソロユニットであるTROPIC OF CANCER。現在、Silent Servant/Juan Mendezはユニットから離脱したものの、冷たくも美しい石の彫刻のようなコールド・シンセ・ミュージックは、活動初期からまったく揺るぐことなく健在である

●本作においても、冷たく無機的なシンセの音と、たゆたうようなボーカル、硬いリズムマシン、空気のような微かに音を紡ぐノイジーなエレクトリック・ギターなどが織り成す白昼夢のような音響の絡み合いが、ただただ美しい。

●ついフィメール・ジョイ・ディヴィジョンとも言ってしまいたくなるし、確かに、その硬い音質のリズム(ビート)にも耳が行ってしまうものだが、しかし、本作の肝は幽玄なボーカルとクールに持続するシンセのレイヤー感にあるような気がしている(もちろん、ギターもだ)。そこに現代的なアンビエント/ドローン的な質感を聞き取ってしまうのである。いわばGrouperとの同時代性を感じてしまうとでもいうべきか。

●その意味で、あえて図式的に再確認すれば、本作には、「80年代的なものへの回帰」があり、ついで「10年代的ドローン/アンビエントとの同時代性」が横たわり、それら両極を繋ぐものとして、「Regis/Karl O'ConnorやSilent Servant・Juan Mendezとの関係などから分かる90年代以降の(インダストリアルテクノとの交錯」があるといえる。つまり本作には(も)、実は複数の文脈が交錯しており、そして、この文脈が並列に繋がっていく感覚が、いかにも10年代的だと思えるのだ。もちろん、個人的にも、音楽性、音の質感、ジャケットアートワークレーベルなども含めて2013年のエレクトロニクス・ミュージックをリファレンスする際に重要な作品の一枚(もちろん他にもたくさんあるのだが)になるのではないかと考えている。

●ともあれ、その冷たい石のような音楽性は聴くほどに中毒になる魅惑があるのは間違いない。何よりそれが重要である。文脈は消えようと作品は残るものだ。私は2013年、この盤を何度も聴き直すうちに、その氷点下のシンセ=電子音の持続にどんどん惹かれてきた。アートワークのシャンデリアに触れそうな手のように、この美しいシンセやヴォイスの音の肌理に手を伸ばしたくなるように、だ。

2013

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