常夏島日記 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2010-03-21

[][]就職先として公務員をお勧めしない5つの理由

就活学生の採用担当者としての経験をふんだんに書いた昨日のエントリで、「公務員はお勧めしないな〜 どのカテゴリーであっても。」と書いたら、以前にも引用いただいたこちらのサイトで「公務員はお勧めじゃないのか。そこだけ理由が書かれてないのが気になるけど。」という指摘がありました。

公務員の世界にめちゃくちゃ詳しいわけではないけれども、では、公務員をお勧めしない理由を思いつく限り書きましょうか。ただ、公務員といっても、国家一種試験や地方上級から、初級職や現業職のように幅があまりに広すぎることが一つ、もう一つは公務員制度改革の動向が見えないので、一概に言えないのが難しいのですが、できる限り前提条件は特定して書いてみましょう。

 1.今どき人気過ぎる

以前のエントリでも書きました。今年人気の就職先は、ただそれだけの理由で、避けるほうがよいです。

 2.給与水準の問題

一応、公務員給与は「民間賃金準拠」の原則がありますが、これは労働三権が制限されていることの代償です。賛否は別として、公務員争議権を付与しようという動きがある中で、この原則がいつまでも維持できるかどうかは分かりません。特に、財政厳しい折から、総人件費を予算制約に縛られた中で民間賃金準拠の原則を外した時に何が起こるかは、かなり微妙だと思います。

もう一点は、特に地方公務員に大きな問題です。民間賃金準拠は、人事院国家公務員については統計を取って計算しているはずですが、地方公務員の民間賃金準拠は、正確には、「国家公務員準拠だから、民間賃金準拠だろう」というやり方であることが多いようです。ところが、国家公務員は、地方機関の合理化の進展で、東京に勤務する者の比率が高いこともあり、また、民間企業従事者も東京に多いこともあり、東京水準に引っ張られていますが、実際、地方の賃金水準は東京とは相当格差があり、本来、その地域の民間賃金に準拠すれば、とんでもない高給である場合があるようです。一部地域では、そういう状況に相当の反発があり、阿久根市長のあれこれのトンデモが市民の支持を得ている一因にもなっています(参照)。そのことの是非は別として、阿久根市に起きたことが、全国的に起きない保障はないと思います。そして、ほとんどの地方自治体では、地方公務員は高給かつ安定的な給与体系を、現時点では、誇っています。

 3.労働体系の非正規化

バブル崩壊後の20年間、そのことへの評価は別として、民間企業では、単純業務を正規社員の業務範囲から切り離す方向が圧倒的になりました。一般職の採用停止+派遣社員による補充とか、単純業務の請負化とか、一般職の昇進強化(つまり、お茶くみOLをいつまでもやっていることは許さないということです)とか。しかし、公務員の世界では、基本的な業務は常勤の公務員が行う前提になっており、一部の先進的な地方自治体では非常勤職員の活用が進んでいますが、全体としては常勤職員主義がいまだに蔓延しているように思います。はっきりいって、市役所の窓口だとか、電話応答は、気の利いた企業なら完全に非正規化し、あるいは職域ごと委託に出していますが、公務員の世界では、まだまだ非正規化が進んでいません。

しかし、財政制約から、そういう、常勤職員がやっている仕事は、非正規又は外注に出される可能性は、今後ますます高まります。そのことにより、高卒相当とか現業職の居場所がなくなります。その時に何が待っているかというと、一生まったりと思われていたそういう職員が、公務員の中でも厳しい、今までなら上級職がやっていた類の仕事を割り振られ、耐えられない奴はどうぞおやめになって、という雇用政策が採られる可能性がそれなりにあると思われます。それこそが、「お茶くみOLをいつまでもやっていることは許さない」という、民間企業が20年前にたどった道です。

 4.上級職における雇用の流動化〜上級職への影響

これまで書いてきたことは、どちらかというと下級の職種の人に影響を与える話でした。では、上級職はどうでしょうか。上級職の抱える課題は、ますます複雑化し、困難化していると思いますし、本来はより高給を取っていいはずの人(参照)を安くこき使っているという現状があるのは事実だと思います。しかし、その処遇はあながち間違っているとは言えません。なぜならば、特に国家一種がそうですが、どんなにアレな人でも、試験に通って採用さえされてしまえば、そこそこの地位に行けることが確定しているからです。その極小化されたリスクに対して給与が低くなるのは、これは当然の話であります。

しかし、これからはそうではないように思います。民主党の志向する政治的任用もそうですが、より優秀な人間を、ふさわしい高い給与で、その代わり流動性高く、いつ首になってもよいから本当に優秀な人をという傾向が強まる可能性があります。もし仮に日本全体の、特に給与水準上位の職種の雇用がより流動化すべきだという議論(参照)マジョリティを占めるならば、雇用形態の先導的な実験は公務セクターで為されることが多いので(育児休業とかが典型ですが)、そのとき、とても安定的と思われていた高級公務員の世界は一変します。

そして、安定のみを求めて上級公務員を志望した人は、そのとき、外部人材を含めた熾烈な競争に晒されて、「こんなはずじゃなかった、給与は安くていいから、もっと安泰な職場を」とつぶやくことになると思うのです。国家一種からその動きは始まると思いますが、そのとき、その流れについていけない国家一種が何を考えるかというと、公共系NPOへの転職参照)か、地方自治体への異動でしょう。その結果、不幸のトリクルダウンが起き、国家一種と地方上級の、まさに血で血を洗うポスト争いが地方自治体で発生します。さらに東京都横浜市大阪府・市のようなところでは、民間企業からの人も乱入します。多少給料が上がっても、その競争環境は、多分いま公務員志望の人が想定している公務員のメリットとは違うところにあると思います。

5.上級職における雇用の流動化〜一般職への影響

4.に書いたとおりのことが起こるとした場合です。その場合は、上級公務員給与は、それなりにかなり上がると思われます。天下りに対する世間の批判もその強力なサポートになるでしょう。そしてそこで起こることは何か。民間賃金準拠が維持されていれば、平均は民間賃金ですから、一部上級公務員給与が増えれば、他の一般職給与は、がたっと減ります。また、そうでなくても、財政制約から、一般的な職員の給与はがたっと減る可能性が高いと思われます。ただ、給与単価を減らすのは、これは一般労働法制でも難しいので、結局は、3.で述べた世界「お茶くみOL公務員をいつまでもやっていることは許さない」に至る。公務員はもはや、楽勝天国ではなくなります。

まとめ

以上です。構造的なポイントは、給与水準に係る二つの制約(民間賃金準拠=争議権の付与、財政制約)と、上級職における雇用の流動化圧力です。この二つが実現するかどうかは分かりませんが、それ以前に、時間的なポイント、そもそも今時点で人気の就職先はできれば避けるべき、という課題があります。だから、今公務員になるのはお勧めしませんよ、と。公務員になるなら、時間軸的には経済がバブっているときに限ります。それ以外に、構造的な問題を考える必要があります。大変ですね〜

さらに構造的な話をいうならば、民間賃金準拠において、上級職は天下りを前提に現役時代の給与を徹底的に抑制*1し、その分を、自治労ほかの政治的圧力に応じる形で、高卒相当職にばらまいて*2、平均自体は民間賃金準拠に落ち着けていたことのひずみ。それと、民間賃金が、この20年に非正規化・派遣化が進む中で、公務は常勤職員主義を堅持してきたがゆえの、非正規を含めた本来の民間賃金と、正社員前提の「民間賃金」との乖離によるひずみ。この2つのひずみが、今後一気に公務セクターに押し寄せるのではないかという懸念です。

そういう風に考えると、まじめな話、いま公務員を目指すなら、雇用流動化を覚悟して、その中でも勝ち残るだけの自己研鑽を怠らない傑物が、国家一種か東京都庁か横浜市役所かそのあたりを目指す場合だけがメリットになると思います。でもそういう傑物なら、民間企業に行っても通じるんですよね…

*1天下りを前提に、生涯賃金で言えば、競合する民間企業と遜色のない処遇を確保

*2その結果、地方公務員現業職の、民間ではありえない高給の確保に至る

通りすがり通りすがり 2011/02/05 19:49 現状のままでは、後、数年〜10年で財政破綻なので…。
まあ、その時は、公務員の年金にも手が入るでしょう…。

potato_gnocchipotato_gnocchi 2011/02/10 23:59 通りすがりさん、コメントありがとうございます。
財政破綻になるかならないかは議論の余地がありますが、それはそれとして、公務員の給与というよりは、社会保障がその主因になる可能性が高いと思います。

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