常夏島日記 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2013-06-16

[][]俺たちの川越シェフが年収400万をDisるわけない

こちらの食べログレビューを朝から見ました。それで、そこから派生した、こちらのサイゾーの記事こちらのJ-castの記事を読んでムズムズしました。ので、何か書こうと思ってしばらく放置しておいたらいつの間にか冒頭の食べログレビューのブックマークに書きたいことのほとんどが書かれていたのでがっかりしたのですが、まあそれでも書いてみる。


なお、冒頭の食べログレビューは夕方には消されていたようです。今日時点ではまだGoogleキャッシュで読めますが(リンク)。不特定多数に開かれているインターネット上において、さほどの多数には読まれないだろうという前提で書かれて、思わず注目を浴びてびっくりという展開は先日話題になった某公務員のツイートと質的には同じような気もしますし、その意味では気の毒だなぁと思うのですが、私のブログも過疎でマイナーであることを前提に書いているので、少し踏み込んだ書き方になっているとすればすみません。あらかじめ謝っておきます。



というわけで、この件の感想。



川越シェフは、そもそも年収300万円、400万円の人をこのように見下げてはいけないはずの人でしょ、ということです。



川越シェフは、テレビによく登場し、テレビ御用達の料理人です。テレビを見る視聴者が彼のビジネスのターゲットです。テレビ、特に彼が頻出する地上波のバラエティというメディアは、日本の平均的な勤労者、年金生活者をターゲットにしているメディアであり、これらの人たちに受けているコンテンツが主に流れます。そして、川越氏は地上波のバラエティに頻出することで、これらの層にアピールしています。そして、日本の勤労者の年間収入の平均は、年収400万円程度であり、すなわち、年収300万、400万の人は、テレビの主要な視聴者です。そして川越氏は、現に、単価200円台のレンジでチンなパスタの監修とかやってます。

どう贔屓目に見ても、このような商品は、年収700万や800万円の人たちにアピールする商品ではないと思われます。年収3〜400万の人=地上波のバラエティの主要視聴者にこそ、川越達也の名前はアピールするだろう、そういう計算から、単価200円台のパスタに「川越達也監修」のラベルを、メーカーは高額の監修料を支払ってでもつけたがるというわけです。



「そうはいっても、代官山の客単価10000円を超えるレストランは、年収300万の人向けではないのではないか」という批判はあり得ますが、私はそうではないと思います。数週間前の週末に私は埼玉の奥地から南北線をたどって東京ドームの近くに遊びに出かけましたが、引退する某アーティストのコンサートにすさまじい人波が押し寄せており、グッズ売り場など朝から猛烈な行列でした。あれ、チケット代とグッズ代込みで、まあ1〜2万じゃ少ないくらいの額を消費するでしょ。それで、その引退する某アーティストの主要なファン層が、そんなに高額所得者ばかりであるわけがありません。むしろ年収3〜400万クラスの人が大部分を占めるんじゃないかな。このように、テレビに出ているタレントと時間や経験を共有するためのお金として、年収300万クラスの人でも、年間に1回や2回のイベントと割り切ってしまえば、1万や2万は払ってしまえるお金です。そして、川越氏は、まさにその、テレビに出ているタレント、です。



問題は、代官山の客単価10000円を超えるレストランに関心を持つのは、そのような年収300万円で、年間に1回のイベントと割り切って川越氏のレストランに行く層ばかりじゃない、ということです。客単価10000円の他のレストランにも何度も行き、そのようなレストランの標準的なサービスや料理の水準をよく知り、そして川越氏のレストランと比較する客が、時折紛れ込んでしまうことの方に問題があります。むしろ、年収300万の人たちは、水が800円しようが、カクテルが1200円しようが、そもそもそれらの人にとって単価10000円のレストランでご飯を食べる経験そのものが非日常なので、それでいいんです。苦情はないんです。コンサートのオフィシャルサイリウムが1000円とか2000円とかというバカげた値段で買っちゃって文句がない人たちなんですから、カクテル一杯1200円で何の文句もないのです。逆に、良いレストランの相場を知る人から見れば、川越氏のレストランのサービスや料理には文句を言いたくなることもあるのかもしれません。少なくとも私には、冒頭の食べログレビューは、他のレストランの水準をよく知っている人からの異議申し立てに見えました。



だから、構造はJ-castとかが書いているつくりと全く逆で、高級レストランによく行く層(すなわちほぼ高所得者層)から見たらあの店のあの料理のあのサービスでこの値段は適当とは言えない、ということと、川越氏ファンの低所得層から見れば川越氏のレストランはおそらくタレントのコンサート並の場所で1〜2万円程度のお金なら糸目をつけずに使ってもよい場所、ということのギャップこそが、問題の所在なのではないかと思われます。逆に言うと、川越氏がサイゾーで述べたとされる

人を年収で判断してはいけないと思いますが、年収300万円、400万円の人が高級店に行って批判を書き込むこともあると思うんです。(略)でも、そこまでの店にしてきた企業努力や歴史は、あなたにはわからないでしょ? と思うんです。断片的なことを切り取って、「すべて悪」みたいなことを書き込んでいる。僕の店も「水だけで800円も取られた」と非難されることがある。でも、当たり前だよ! いい水出してるんだもん。1000円や1500円取るお店だってありますよ。そういうお店に行ったことがないから「800円取られた」という感覚になるんですよ。だから……残念だな、と思うわけです。

『おねラン』でおなじみ”イケメン料理人” 川越達也シェフの本音の本音

というのは、何かの勘違いです。水だけで1000円取るほかの店のサービスの水準を知っているからこそ、「800円取られた」ことが頭に来る。ただの川越ファンの平均所得者層なら、市価100円のサイリウムをコンサートオフィシャルグッズとして約1000円くらい払っても文句がないように、無断で水で800円取られても文句はない、ということではないかと。



ただ、川越シェフは、たぶんその辺のことは十分にわかっていて発言しているように私は推測します。川越シェフがここで言いたかったのはむしろ「自分のレストランは水に1000円払うような特別なグルメが来る店だ」ということなんだろうと思います。そのことによって、川越氏は、自分の料理は高級な料理で、普通の人が普通に食べられるものではない、という印象を与えたかったのではないかと思われます。グルメ御用達の川越氏の料理を、テレビで披露して、そしてその高級グルメのアイデアを適用=「監修」された廉価な(しかし監修のないものよりは高額な)レトルト川越イメージで売れる。平均的な所得の人でも、高収入グルメになりたいワナビーな人はいるもので、そういう人が川越氏のターゲットなわけです。そこにヒットする川越イメージ。川越氏の頭にあったのはそういうビジネスモデルだったんではないかと思われます。だのに、サイゾーの編集者は分かってか分からずか、年収などというつまらんことまで書いてしまった。そんなことを書いたら当の年収3〜400万の人は不愉快になるかもしれないのに。



ちょっとそういう意味では、今回の一連のいきさつは、上手の手から水が漏れた感が否めません。



というわけで、表題に戻ります。俺たちの川越シェフが、年収400万の人をDisるわけはないはずだよ!


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