二紙はもったいない

6月に入ってから新聞が二紙配達されるようになった。
はじめの2日くらいは「サービスかな」と思っていたが、しばらく経ってそうじゃないことに気がついた。今までとっていた方(日経)の契約が「6月まで」あるのに、新しくとる方(読売)の契約を「6月から」にしてしまっていたのだ。これでは今月、新聞を二つもとることになってしまう。
正直、1日に二紙読むのはきつい(一紙でもきついのだ)。それにお金がもったいない。もったいなかったら一紙もとらなければいいと思うが、もったいないからと言ってご飯を食べ無いわけにはいかないのと同じで、食べる分(読める分)はいるのだ。食べきれないほどはいらない(そういうのを「もったいない」と言う。)。

・・・

さっき新聞配達所に電話をかけた。
「二紙きてるんですが・・・」
と相談をしたところ(自分で勝手にまちがっておいて「きてるんですが」も無いと思うが・・・)、読売を「7月から」の契約にしてもらうことになった。
お金のことが気になり、ぼくが、
「でも6月入ってから読売さんの方幾つかもらっちゃってるんですけど・・・」
と言ったら向こうは、
「うーん・・・それは別にいいですよ!」
と言ってくれた。7月以降の方で6月に配達した分を差し引くということもしないらしい。今は6月8日だから、8日分タダでもらったことになる(8日で「ウーン」と一瞬迷っていたから10日とかだと危なかったかもしれない。きょう電話してよかった)。

なんでも言ってみるものだ。今度「もうちょっと安くしてくださいよー」とでも言ってみるか。それか「何かくださいよー」でもいい。まさか逆に料金が高くなったり、何かとられたりすることはないだろう。言うだけタダというやつだ。まだちょっと勇気が足りないが。

ぼくの選択

プロローグ

とうとう彼女と結婚してしまった。ぼくが無精子だってことは、まだ伝えてない。彼女は、いや妻は子供を欲しがっている。彼女が求めれば、ぼくは期待に応えて、その・・・「子作り」ってやつに励んでいる。さいきんは毎日だ。子供なんてできるわけないのに・・・。できたら、奇跡だ。

精子だってことは、これからもずっと言える気がしない。愛しているからこそ言えない。彼女はとってもいい人だ。ぼくの体のことがわかっても、彼女から離婚を言い出すことはないだろう。自分で言うのもなんだけど、彼女はぼくを「思いやる」はずだ。
ぼくは勝手なのか。彼女を本当に愛しているんだったら、はじめから結婚しなければよかったはずだ。なんて勝手で、中途半端な思いやりなんだろう。これではいつか彼女を絶対に苦しめることになる。
いつかはばれるんだ。その時どうしたらいいのか。ひどい結末が待っているのかもしれない。いや、「かもしれない」じゃないんだ、絶対にそうなる。なのに・・・ああ・・。


そう悩んでいた時だった。職場にいるぼくに妻からの着信があった。仕事中にかけてくるなんて何か緊急のことに違いない。トイレに行くふりをして妻に電話した。

「もしもし?」
「もしもしあなた!?私、妊娠したわ!」

奇跡が起こった。いや「これは奇跡なんだ」と思い込もうとしているぼくがいた。これでいいんだ。これでいいんだ。
ぼくが無精子だということを彼女が知らないように、ぼくも彼女の全てを知っているわけじゃなかった。それでもいい。妻が待望していた「ぼくらの」赤ちゃんができたんだ。もしぼくに似ていなくても大事に育てよう。いや、似ているわけがない。似ていたら、それこそ奇跡なんだから・・・。

―――
実は、「妻の隠し事」は夫が想像したものとは少々、いや、大きく違っていた。実は妻も子供が埋めない体だったのだ。
彼女はある人物と出会ったことをきっかけに「ある計画」を思いついた。彼女が妊娠したというのは「嘘」である。この「嘘」が彼女の計画の中で、一番初めにすること。
史上初、空前絶後の「ある計画」が今スタートを切った。
―――
この続きは次の章からはじまらないので、各自でかんがえよう。
(さいきん、ブックオフで買った吉村達也の本を読みまくっています!)