黙然日記(廃墟)

はてなダイアリー・黙然日記のミラーです。更新はありません。

産経「正論」、すり替える(おまけつき)。

【正論】高崎経済大学教授・八木秀次 教育問題を総選挙の争点に - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/192479/

 著者名を見ただけで爆笑を確信できるというのは、希有な幸運です。
 先月31日以後はすっかり影が薄くなってしまいましたが、例の中山成彬・元文部科学大臣*1発言を、八木秀次日本教育再生機構理事長が擁護しています。中山氏は「日教組の強さ」と言ったので、組織率で比較した朝日の記事は「論点をずらした意図的な記事」と評しています。中山発言の意図は、「日教組本部が展開するような階級闘争的あるいは反国家的な姿勢」が強いことを指しているのだそうです。そんな後出しじゃんけんみたいなことを言われてもねえ。
 ふつう、「組合の強さ」といったら、組織率を真っ先に考えませんか。中山氏は発言当時に「強さ」の根拠を示していなかったのですから(今でも示していませんが)、まず組織率を調べるのが当然だろうと思います。産経新聞政治部の阿比留瑠比記者も、「学力テストと日教組の関連」について、真っ先に組織率との関係を思いついているわけです*2。八木氏にしてみれば、阿比留記者の発想は朝日と同程度ということでしょうか。それはあまりにあびるんを褒めすぎです。中山発言以後・朝日記事以前(あるいは中山氏が「強さ=組織率ではない」と表明するまで)にも、多くのブロガーが学力テスト結果と組織率の関係に注目したのは、それが誰でも真っ先に考えつくということのひとつの証明ではないでしょうか。
 組織率ではなく闘争姿勢が強い、弱いと言われても、統計的な比較なんかできません。また八木氏自身、姿勢を云々している文脈の中でいきなり、実はこの県は日教組ではなく全教(共産党系)の組織率が高いから同じことだ、とか言い出します。日教組が当然ながら中山発言に抗議する文書を発表したことを「朝日の記事に呼応するかのように」とか、最後になって唐突に民主党批判をして総選挙に結びつけたり、こういうのをまさに、「論点をずらした意図的な記事」というのではないでしょうか。

おまけ。

 中山発言の話題が出たところで。前回*3やろうと思ったんですがうまくソースが見つからなかったのと、面倒だったのでパスしたネタです。たまたま(というか八木「正論」に連動して)今日、2ちゃんねるで文責・名無しさんが貼り付けていたのを見て*4、あらためてソースを確認し比較してみました。それぞれのソースをまとめてくださった方々に感謝します。

全国学力調査都道府県別ランキングをまとめてみる - 木走日記
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20071026/1193363601

朝毎読日経 VS 地方紙のシェア争い:FACTA online
http://facta.co.jp/article/200707008.html

 都道府県別の、学力調査の結果と、産経新聞の部数とシェアのデータが手に入りました(いずれも2007年)。部数・シェアの方は画像形式の表を見て再入力したので、打ち込みミスがあったらすみません。また、独自にソートしたので学力調査のポイントが同じ県では木走日記さんと順位が違うところがあることに気づきましたが、修正がめんどうなのでそのままにしています。
 この表からすぐわかることは……なにもありませんね(笑)。日教組組織率と同じぐらいには相互に無関係です。確認しておきますが、もともと学力調査のポイントを厳密に比較して順位をつけること自体が無意味なので、「ああこいつは表計算ソフトで遊びたかったんだな」ぐらいに思ってください。まあ、産経の都道府県別部数のデータが手に入ったので、これからなにかと役に立つかな、という個人的な収穫はありました。
 以下、長いだけで無意味な表。

学力調査順位 都道府県 産経新聞部数 シェア(%)
1 秋田県 3119 0.80
2 福井県 2203 0.80
3 富山県 767 0.20
4 香川県 11126 2.80
5 石川県 1222 0.30
6 青森県 3184 0.60
7 岐阜県 654 0.10
8 山形県 3561 0.90
9 静岡県 22943 1.70
10 広島県 19092 1.60
11 鳥取県 3071 1.40
12 京都府 30382 2.80
13 愛知県 2607 0.10
14 長野県 7023 0.90
15 熊本県 489 0.10
16 奈良県 117438 21.90
17 宮崎県 175 0.00
18 群馬県 32031 4.30
19 東京都 358746 6.00
20 新潟県 12047 1.50
21 愛媛県 9575 1.60
22 岩手県 4652 0.90
23 千葉県 125595 5.20
24 山梨県 6924 2.10
25 兵庫県 140324 6.30
26 島根県 2932 1.10
27 福島県 8404 1.20
28 長崎県 449 0.10
29 埼玉県 102808 3.80
30 栃木県 44231 6.10
31 山口県 0 0.00
32 徳島県 1979 0.60
33 神奈川県 119228 3.20
34 鹿児島県 305 0.00
35 茨城県 74563 7.00
36 三重県 10780 1.60
37 佐賀県 183 0.10
38 大分県 263 0.10
39 岡山県 14664 2.00
40 宮城県 11020 1.30
41 福岡県 1579 0.10
42 滋賀県 24654 5.20
43 和歌山県 62958 15.10
44 北海道 1208 0.00
45 大阪府 754648 20.20
46 高知県 1429 0.40
47 沖縄県 249 0.00

*1:辞任してだいぶ経つので、肩書きはそろそろ「前国交相」より、この発言に関する立場がはっきりする「元文科相」の方が適切かと思います。

*2:以前も引用しましたが、阿比留blog 2007/10/25のエントリ http://abirur.iza.ne.jp/blog/entry/362445

*3: d:id:pr3:20081008:1223462704

*4: http://society6.2ch.net/test/read.cgi/mass/1225686894/77 。ありがたいのですが、表の引用としてはやや恣意的でしょうね。