ドイツ・フランクフルト遠征記3(冨永圭祐)
フランクフルト遠征記3
・5月4日(晴れ)
おはようございます。僕ですよ。
日本にいる時より健康的に生活しております。
ちゃんと午前中に起きてます。
にも関わらず、日に日に疲れがたまっております。
今日は各自朝食をすませてから集合するように。との大工原総司令の仰せの通り、
昨日買ったパンをむしり、チーズをかじり、トマトにかぶりつきました。
赤い洋梨がめちゃくちゃうまいです。
渡辺あいとロビーで集合すると、またもや総司令が来ません。
聖闘士(セイント)に同じ技は二度通用せん!と我々は勢いよくテラスに飛び出しました。
大工原正樹はやはり優雅にタバコを吸っておりました。
出発でございます。
今日は、午前10時からニッポン・コネクション公式行事に参加です。
フランクフルト市内観光ツアー。ニチコネスタッフや監督たちみんなで観光。
これは楽しみです。
ゲーテ大学近くまで来た時点でまだ9時30分。
大工原正樹曰く「朝はコーヒーを飲んだ時に始まるもんだ」
ということでSUBWAYでモーニングコーヒーを飲むことにしました。
時間が近づいてきたのでゲーテ大学へ向かいました。
10時かなりちょっきりに着きそうです。完璧すぎます。
朝の大学は、昨夜の喧騒が嘘のように静かです。
誰もいません。
ニチコネのスタッフもいません。
おかしいですね。
「ああっ」
背後で渡辺あいが叫びました。
「どったの?」と、総司令。
渡辺あいはスケジュール表を見てわなわなしております。
覗き込むと、スケジュール表には9時30分フランクフルト中央駅集合と明記されておりました。ここから電車で二駅です。
○なぜ、10時から観光ツアーと聞いて、10時に会場に集合すればいいと勝手に思ったのか。
○なぜ、3人ともがそう思ったのか。
○なぜ、誰一人一回もスケジュール表を見ておらんのか。
問題点はこの3つに絞られます。
慌ててオリバーさんに電話をしますが通じません。
とりあえずフランクフルト中央駅に向かうことにしました。
ひょっとしたら、誰かスタッフの方を残してくれているかもしれない。
地下鉄に乗り込みました。
気持ちが焦ります!
しかしおかしいのです。とっくにフランクフルト中央駅に着いてもいいはずなのですが。
お、レーマーに着きました。(会場から4駅目)
要するに乗り過ごしました。
大工原「二人とも駅確認してなかったの?」
濡れ衣でございます。
折り返そうと降りたとき、オリバーさんと連絡が取れました。
みんな観光中で、今レーマーにあるゲーテ博物館にいるとのことです。
もうお気づきかとは思いますが、僕がこのことを見越してフランクフルト中央駅で二人に「降りましょう」と声をかけなかったのは言うまでもありません。
地図を頼りにゲーテ博物館へ到着し、合流することが出来ました。
「いやぁ、やっちまいました。ふふふ」と3人はさりげなく輪の中に入っていきました。
あほ丸出しです。
遅れて合流したため、本当にさーっと見てまわることになりました。
そのあと、有名なソーセージ屋さんのある市場へ。
ここ、もっとゆっくり見たかったです!後日お土産買いに寄ろうと誓いました。
マイン川を通る橋を渡り、たどり着いたのは映画博物館。
スクリーン式の映画が誕生する以前の原型になったおもちゃやキネトスコープからCG技術まで、たくさんの展示で楽しませてくれます!ここももっとゆっくり見たかった。
ルキノ・ヴィスコンティ監督『ルードウィヒ 神々の黄昏』(日本初公開時タイトル)でロミー・シュナイダー(エリザベート役)が着た衣装。豪華です!
H.R.ギーガーのエイリアンが保管されております!撮影に使われたエイリアンの展示は世界各地に結構あるそうですが、ここのは唯一、人が中に入る仕様(いわゆる着ぐるみ)だそうです。頭蓋骨が透けているこのデザインは恐らく一作目リドリー・スコット版です。かっこよすぎます!
アルフレッド・ヒッチコック「サイコ」某シャワーシーンの画コンテ!
フリッツ・ラング「メトロポリス」のスコア。めっちゃかっこいいです!
個人的にうれしかったフォルカー・シュレンドルフ「ブリキの太鼓」太鼓
楽しかった!
みなさんお腹が空いてきたのでレストランまで移動です。
レストランに着きました。
こちらの料金はフランクフルト市が払ってくださるとのこと。
肉です。僕は肉が食べたいです。
大工原正樹と冨永圭祐は牛の肩肉を頼みました。
フランクフルト名物のソースがかかっております。
渡辺あいは豚足料理を頼みました。コラーゲンもりもりです。
「オレは腹が減ってるんだ。少しくれないか」
「何言ってんすか。馬鹿じゃないすか」
フランクフルト名物アプフェル・ワインでございます。
水(炭酸入り)で割って飲みます。フランクフルトではビールより一般的らしいです。
コップが空になるとどんどんついでくれます。結果、酔います。
ドイツ料理恐るべしです。
一口目はおいしくて感動したのですが、量が半端じゃございません。
二郎のラーメン増し増しをぺろりとたいらげるぐらいじゃないと食べきれないでしょう。
あえなく3人とも撃沈し、残した分を持ち帰ることにしました。
そういうサービスが出来るようになっているようです。
食べきれる前提じゃなかったようです。
レストランを出た我々は、皆さんと別れてレーマー駅までぶらぶらと歩くことにしました。
「冨永さん、おならしました?」
渡辺あいが不意に言いました。
「何を言ってるんだねチミは。大工原さんに決まってるだろう」
「ん?俺こいてねぇよ?」
「渡辺さん、その袋かしてみ?」
残した豚足の入った袋を受けとり、においを嗅ぎました。
「グギギ…」
完全に濡れ衣でございます。
マイン川まで戻ってきました。
現地の人たちが川沿いでくつろいでいます。
食い疲れた我々も草の上に寝転がりました。
大工原「空が広くて気持ちいいぞぉ。渡辺さんも寝転んでみなよ」
会場まで戻ってきました。
これから大工原正樹と渡辺あいは取材です。
フランスで映画サイトの記者をやっている方が興味を持ってくださったらしく、取材をしたいとのことでした。
僕は外で隈元博樹監督(Sugar Baby)や眞田康平監督(しんしんしん)と話しながら待っていることにしました。
したのですが、数分後、隈元監督はホームステイ先で用事があるらしく帰っていき、眞田監督は映画見るからと言って会場に入っていきました。
ぽつねんと一人になりました。
バーカウンターでラーデベルガーを頼み、NIPPON CINEMA部門会場へ向かいました。
本田隆一監督『大木家のたのしい旅行 新婚地獄篇』を見ました。
竹之内豊と水川あさみの新婚夫婦は、結婚前から長い間同棲していたためなんだかすでにまんねり気味。そんな二人が出かけた新婚旅行はどうやら地獄だった。
「コメディやってみたかった」とノリノリだったらしい竹野内豊さんと素の魅力満載の水川あさみさん夫婦がとてもかわいいです。恋愛通り越して友達みたいになっちゃった二人のやりとりにニヤニヤしちゃいます。
地獄を案内してくれる青い人(劇中決して「鬼」とは言いませんが、恐らく元青鬼です)の橋本愛さんがこれがまたかわいいんです。全身真っ青で誰だか分かりませんがかわいいです。
「おれは橋本愛の一番かわいい表情を撮った」と豪語する古澤健監督の『Another』も楽しみになってきます!
一方その頃、大工原・渡辺両名は100分に及ぶ取材を受けておりました。
フランスの記者は自国で廣木隆一監督のレトロスペクティブを計画中らしく、大工原正樹には廣木監督のことまで根掘り葉掘り聞いてきました。
恐るべきことにこの記者、大工原正樹が廣木隆一監督の『菊池えり 巨乳責め』『ザ・折檻2』で助監督だったことまで知っていたのです。
「こいつはマニアだ」大工原正樹は思わず思いました。思わず思うってなんか変ですね。
記者は『電撃』をかなり気に入っているらしく、「あなたは幽霊映画にとても造詣が深いようだが、あなたのホラー遍歴を聞かせてほしい」と渡辺あいに聞きました。
しかし残念ながら渡辺あいにホラー映画遍歴などございません。
戸惑う渡辺あいを自分の目で見れなかったのがわたくし心残りであります。
(取材してくださった:Guillaume Boutigny ホームページ:www.nihon-eiga.fr)*取材記事をアップしてくださっています。他にも『死ね!死ね!シネマ』篠崎誠監督の記事なども。
一方一方その頃、僕はラーデベルガーをおかわりしていました。
発音はすでに完璧です。
時間は7時を過ぎました。二人の取材はとっくに終わってるでしょう。
まぁ会場ここぐらいだしどっかで会うだろぐらいに考えてましたが、全く会いませんでした。
ということで、次はNIPPON VISIONS部門 濱口竜介監督『親密さ(short version)』を見に行きました。前々から見たいと思っていた作品でした。
濱口監督が書いた戯曲を別の人が演出し、その演劇を撮影したもの という映画です。舞台には箱馬のようなものが数個置かれているだけで、演者はそこに座ったり、テーブルに見たてたりしながら各幕の状況を作り出していきます。最低限の簡素なセットでの芝居です。にも関わらず、見ているうちに観客は演者たちが芝居をしていることを忘れてしまい、本人が発している言葉に胸を締め付けられていきます。演劇と映画の違い、キャメラが間に入ることに対しての真摯な試みだと思いました。この作品をまぎれもない映画たらしめているのは、時折はさまれる舞台の観客の顔が逃さずに捉えられていることだと思います。
監督が急用でフランクフルトまで来ることが出来ず、お客さんが少なかったのが悔やまれる作品でした。
一方一方一方その頃、大工原・渡辺両名は、NIPPON CINEMA部門会場へ上映開始ぎりぎりに滑り込みました。
今回知り合った藤原敏史監督の『無人地帯』(震災関連のドキュメンタリー映画)を見るためでした。
映画が始まって「角川映画」のタイトルがバーン。
大工原「へー、角川ってドキュメンタリーにも金出すんだ。エライね」
渡辺「・・・・・・」
きこりが木を切ってます。
大工原「あれ、ドキュメンタリーなのに役所広司が出てる」
渡辺「・・・・・・これ、あきらかに違う映画ですよね」
大工原「そうだね・・・」
やがて『キツツキと雨』のタイトルが。
渡辺「あ、わたしこれ観たかったんです」
大工原「俺も」
ということで、最後まで見たそうです。
二人はこの時、ニッポン・コネクションには別の会場があることを初めて知ったのでした。
さて、夜も10時を過ぎました。けれどもニチコネ会場ゲーテ大学は変わらず人で賑わっております。
もう一本ビールが飲みたいです。
しかし僕はこれから座談会です。
『Sugar baby』隈元博樹監督、『しんしんしん』眞田康平監督と3人でのトークショーが企画されました。テーマはおおまかに『新世代の映画作家』です。なんかでかいです。
午後10時半、トーク会場に着きました。
こんな時間にも関わらずけっこうお客さんも来てくれました。その中には、大工原正樹、渡辺あい、チェコから駆けつけてくれた渡辺の友人Mさんの姿も。やっと会えました。
登壇者には各一人ずつ通訳がついてくれるのですが、僕の通訳をしてくれたのが、桃まつり すきで『春まで十日間』を監督していたStefanie Kolk(ステファニー・コルク)さんでした。この人、めちゃくちゃきれいです。かわいいです。
「これがひとめぼれか」と僕は思いました。
トークはそれぞれの作品の出自・映画を撮ることになった経緯の違いから入り、日本の映画の現状まで広がりました。
座談会が終わると午前1時近くになっていました。さすがに疲れました。
ホテルに帰ると言葉の通り即寝でございます。
しかしあれですね。午前中から起きてると一日にいろいろ出来るものですね。
おやすみなさい。