むしろ問題やろ:雇用調整助成金・中小企業緊急雇用安定助成金詐取・不正受給(生保バッシングよりも)

生活保護の不正受給が発覚すると、お決まりの「生保バッシング」がはじまるが、
雇用調整助成金中小企業緊急雇用安定助成金の詐取や不正受給の方が
よほど問題ではないだろうか?

雇用助成金:詐取の疑いで貿易会社幹部ら逮捕 大阪府警
毎日新聞 2012年09月14日 15時00分
http://mainichi.jp/select/news/20120914k0000e040226000c2.html

 国の雇用助成金をだまし取ったとして、大阪府警捜査2課が、詐欺容疑で大阪市北区の貿易会社の幹部ら7人の逮捕状を取ったことが、捜査関係者への取材で分かった。14日午前から関係先を家宅捜索しており、うち数人を逮捕した。会社に実体はなく、路上生活者の名義を借りて代表取締役にしていたという。幹部らが関係するペーパーカンパニーが複数あり、府警は背後に大規模な詐欺グループがあるとみて実態解明を進める。

 捜査関係者によると、幹部らは貿易会社に実体がなく従業員がいないのに、大阪労働局に中小企業緊急雇用安定助成金を申請し、約1000万円を詐取した疑いが持たれている。助成金は、経済上の理由で従業員を一時的に休業・出向させた場合などに事業主を支援する制度で、08年12月から実施されている。

 貿易会社は93年に設立され、登記簿には自転車の製造販売や輸出入が事業目的と記載されている。1年前に家賃を滞納したまま突然事務所を閉じたが、今年4月28日になって大阪市内の路上生活者の男性が代表取締役に就任しており、府警は経緯を調べている。

 この男性が代表を務める別の複数の企業は、高齢者に投資話を呼びかけて資金を集めていたが、多くの出資者はこれらの企業と連絡が取れない状況になっている。こうした企業が大阪や東京などにあり、府警は振り込め詐欺やそれに類する「特殊詐欺」を組織的に実行していた疑いもあるとみて捜査している。【松井聡、後藤豪】


こうした詐取や不正受給は各都道府県の労働局にて事業主名や被害額が公表されている。

例:雇用調整助成金中小企業緊急雇用安定助成金を不正に受給した事業主の公表について(東京労働局)
  http://p.tl/yoaL


しかしながら、全国でどれだけの件数があり、
被害総額がいくらだったのかを示す資料の公表はされてはいない。

そこで調べてみた。
分かったことは以下のとおりである。

・全国の資料は公表はされてはいないが、厚生労働省は取りまとめている。
・詐取や不正受給が目立つようになってきたため、2011年2月分から、
 各都道府県労働局にて公表を始めている。
・2011年2月から2012年9月までの被害は、おおよそ340件、57億円。


ここからは単純換算ではあるが、
2011年2月から2012年9月までは20ヶ月なので、
57÷20=2.85と計算し、
2.85億円/月の詐取や不正受給が行われていたと想定する。

逆に考えると、詐取・不正受給は34億円/年(≒2.85×12)となる。


ところで、平成24年度の
雇用調整助成金中小企業緊急雇用安定助成金予算は2101億円である。
http://p.tl/WvSY(PDF この資料の47ページ参照)

この予算から考えると、34÷2101≒0.016となり、
1.6%もの割合で詐取や不正受給が行われていると推測される。
もちろんこれは推察であるし、発覚していないモノは考慮しようもないが、
予算総額2101億円からすると、件数も被害額も大きいとは言えないだろうか。


翻って、たびたびバッシングに遭う生活保護の不正受給であるが、
これについては大野更紗さんのネットの記事が参考になる。


命の重さを"印象論"で語ってはならない〜大野更紗氏インタビュー回答編〜

http://blogos.com/article/32474/

平成23年5月10日に厚生労働省が公開した「生活保護制度の現状等について」によれば、平成21年度(2009年度)における生活保護総額は、事業費ベースでは約3兆円です。そのうち、「不正受給」は19726件、金額にして約100億円ですね。
これを単純計算しますが、0.01兆/3兆*100=0.0033*100=0.33%。すなわち、「不正受給」は生活保護費全体のなかで、わずか0.33%です。さらに、稼働収入の無申告や過少申告があった場合、行政の福祉事務所は課税調査の照会などによってそれを把握しています。ちなみに厚生労働省のデータには、インターネットを使えれば、誰でもすぐにアクセスすることができます。リンクを貼っておりますので、ご参照ください。
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001dmw0-att/2r9852000001do56.pdf


生活保護の不正受給というと大騒ぎする馬鹿が発生し、
すぐに生活保護バッシングが始まる傾向が最近は多々見られるが、
生活保護の受給はそもそも憲法で保障された権利であり、
受給にいたる人々は傷病や高齢、その他の様々な阻害要因によって
就労機会を得ることすら難しいのが現実だ。
更に言えば不正受給はわずかに0.33%。
しかも本来は生活保護を受けるべき人が受けられていないという捕捉率の低さを鑑みると、
もっと割合は低くなるだろう(捕捉率は低いが受給額は高いという議論もあるようだが…)。

雇用調整助成金中小企業緊急雇用安定助成金の詐取・不正受給
にも
しっかりと注視しておくべきではないだろうか?