さいころじすと日記

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2005-02-03 カウンセリングの効果研究から

[]カウンセリングの効果研究から─Lambertの研究から何を学ぶか

1月31日に紹介した、

Lambert, M. J. 1992 Psychotherapy Outcome Research:Implications for Integrative and Electic Therapists. Handbook of Psychotherapy Integration.

という論文で、過去40年にわたる心理療法の効果研究(要因統制研究、メタ分析)を分析した結果を踏まえ、心理療法の効果において「何が効いているのか」について以下の結論を示したわけですが----。

1:治療外の要因(Extratherapeutic Change)----40%

  • 偶然の出来事、クライエントが元々持っている強さ・リソース・能力。

2:共通の要因:治療関係の要因(Common Factors)----30%

  • 受容・共感、思いやり、はげまし、クライエントの治療への関与の質、セラピスト・カウンセラーとクライエントとの関係性、治療法についての同意など

3:希望・期待(Expectancy、Placebo effects)----15%


4:モデルと技法(Techniques)----15%

  • 特定のモデル・技法・テクニックが持つ効果

もう少し、この論文が言わんとしていることを簡単にわかりやすく紹介しましょう。

例えば、学校の教育現場でもいろんな実践が行われていますよね。「〜教育」だとか「〜法」だとか。それぞれの実践者は、「自分の実践が一番だ」とか「自分の実践が生徒のためになる」とアピールし、他のやり方を批判する、なんてこともよく見られます。


しかし、この論文の結果から言わせれば、たとえ授業がうまくいったとしても、「〜法」「〜教育」といった実践そのもの(モデル・技法のようなものですよね)の影響は15%なんです。したがって、自分の実践のよさをしきりにアピールして争うことは不毛とも言えます。もちろん、実践そのものは最大で15%貢献するわけなので、実践そのものを否定しているわけではありません。


それから、「どんな実践でも生徒と教師の関係性がよければうまくいく」とも言えます(共通の要因:30%)。これもまあ、当たり前のことですよね。関係性がよければ、どんなやり方でも生徒はついていくでしょうから。


さらに言えば、授業の実践がうまく行くかどうかは、結局のところは、生徒が元々持っている能力であるとか、生徒の学校以外での勉強の質・量だとか、親の教育の関与だとかが大きく影響するわけで(治療外の要因:40%)。


なお----

教師やカウンセラーが勝負できるのは、「共通の要因」と「モデルと技法」だと言えます。「モデルと技法」の効果をより確実にするためにも、我々はひとつの方法論にこだわらず、できるだけたくさんのいろいろな方法論を学ぶ努力をするべきでしょう。「15%だから、モデル・技法を学ばなくてもいい」ではありません。


どの流派であろうが、素晴らしい教師やカウンセラーは、本質的には同じことをやっているのだと思います。それが「共通の要因」をより確実にするものだと思います。例えば、セラピスト・カウンセラーで言えば、精神分析家でも、家族療法家でも、ブリーフセラピストでも、道を究めた人は----自分のモデル・技法に執着しない柔軟な発想を持っていますし、ラポールを築くのがうまいですし、クライエントにきちんと説明責任を果たしていますし、クライエントのペースで面接が進めますし、効率的・合理的な発想を持っていますし、人間味がありますし、ユーモアがありますし、場の雰囲気をつかむのがうまいですし、「木」だけでなく「森」もきちんと見える・見えているし----こういったことをきちんと分析していくことで、セラピー・カウンセリングにおける「共通言語」が明らかになっていくのだと思います。

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