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2018-08-20

[]聖女の島 雑感

 31人の不良の子供を元炭鉱島で再教育する修道会のプログラムは破綻し、3人が死んだ。

 もう一度繰り返そうとする施設長の元に修道女が送りこまれる。

 炎上したホームを再建しプログラムを再開した時、死んだ3人が帰ってきて本当に31人の子供の再教育が繰り返される――


 という出だしの幻想小説の中編。

 この小説「聖女の島」を始めて読んだのは扶桑社文庫『花の旅・夜の旅―昭和ミステリ秘宝』を読んだ時ですので、もう17年前になってしまいます。表題作とカップリングで収録されていたのですが、むしろ「聖女の島」の方が強烈に印象に残り、皆川博子という作家に興味を湧くようになりました。そして同時期に偶々『皆川博子作品精華』が刊行されており、幻想小説を集めた巻で短編「景清」を読んで、その精緻で美麗な言葉と艶やかで妖しい描写に惚れこみました。その短編以来ぞっこん嵌るようになり、短編小説集をメインにしばらく著作を漁るようになった次第です。

 いつしか大作メインになってからは追わなくなってしまっていましたが、今回『倒立する塔の殺人』を読了した流れでかなり久々に再読しました。

 読み始める前はちょっとだけ心配でした。本当に前のように楽しめるのだろうか、と。


 まあ言ってしまえば、杞憂でした。

 箍の外れた饒舌で垂れ流される思考の濁流。

 なぜか走り回る豚が妙に記憶に残る、廃墟と化した炭鉱島。

 真実が判るとあまりにも物悲しくて、夜郎自大な百合描写。

 浅妻梗子は、わたしと肩を並べた。長身だが、わたしよりわずかに低い。

 黒い剛い髪がわたしの頰に触れた。

 浅妻梗子が髪をかきあげたので、頰と頰がついた。頰をつけたまま、ほんの少し、互いに顔を向けあうと、唇が触れた。

 浅妻梗子の唇はわたしの唇の輪郭をなぞるように動き、舌の先が唇を割った。

 小さいやわらかい戯れ。

      (聖女の島(講談社文庫)(Kindleの位置No.871-875))

 ちょっとあんまりにも衝撃的な【3人が蘇ってきた謎】の真相。

 ――ひっくるめて、これ以上ないぐらいに閉じて完成された幻想怪奇小説でした。

 割と劇薬に近い部類のトリックを小説に仕掛けていて、初読よりも小説の仕掛けへの違和は感じるようになりました。しかし逆にその作為により一層気づくことで、やろうとしたことのとんでもなさに慄くことになりました。あれを成功してしまっているのだから褒め称えるしかありません。


 以上。再読しても色褪せぬ怪作でした。


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