明日の君と逢うために

  • 感想

 前作プリミティブリンクでは能動的だった『世界間の移動』。今回は受動的に『世界間の移動』を描こうとしました。
 この作品の設定では神の世界には行く意思さえあれば神の助けにより行けます。そして帰って来た人がいないため、発端は本人によると広まりません。このため、その現象は“人間の世界”から観たら神隠しと表現されます。
 さて、主人公は彼が住む島で神を視る最後の人間であり、“神隠し”にあい、何故か記憶を失って帰ってきた少女を取り戻すために島に戻ってくきます。嘗ての少女を求める行動により誰も隠してはいないという“神隠し”のプロセスを知ることとなります。ではどのような結果が得られれば取り戻したと言えるのか――という目的設定というか心の折衝をどうつけるかは興味深かった。結局はヒロイン選択の萌えゲーなので、その少女以外のルートでは今が大事、その少女のルートではこれからが大事と、まあその程度だわなという感じでしたが。
 

 以上でプレイした中で興味をひいた点を簡単に述べましたが、実の所この作品には大問題があります。好奇心が強い頭の良い人間が魅了されるのが“神の世界”と語られるのですが、そこに居る存在全てが己の要求を満たし、常に好奇心を刺激され、探究心が満たされる理想的な場所なんてありえない、ということです。生まれた世界さえろくすっぽ理解できなかった人間が簡単に満足できるはずがないでしょう。知的興奮とは飛び込んでくるものではないことを想像できなかった心の貧困さは、満たされる権利がないとイコールとなります。その人物の貧困さを指摘するのではなく、“神の世界”を逃避の場所とし、なおかつ知的興奮に足る場所とするという矛盾を赤裸々に出す時点で設定する段階で思考したのかはなはだ疑問です。

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