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2013-01-02

[]黄雷のガクトゥーン 雑感

  • 初めに

 時は20世紀初頭、海上学園都市マルセイユに史上初の転校生がやってきた。ニコラ・テスラ、72歳と名乗った彼は宣言する。

テスラマルセイユ洋上学園都市10万の学生諸君。

     運命に呪われたお前たち、全員。

     ――私が、この手で、救ってやる。

 そのための一歩として、学生達の悩みを解決する思弁的探偵部を設立した。ただでさえ騒がしい学園都市は更に騒がしさを増していく――


 という感じの内容。章立ての構成で、1章内であるサブキャラにトラブルが発生し、依頼が探偵部に来て、それを解決しに行くというのが基本は繰り返されます。通してみれば、膨大な数の学生が社会を形成している学園都市の大騒ぎを描きつつ、闇の結社"西インド会社"に反抗する孤高の"正義の味方"を取り上げたヒーロー物となっていました。学園都市・ヒーローのどちらにおいてもスチームパンクならではの趣向が凝らされていました。それでは各要素毎に簡単に触れていきます。


  • 学園都市について

 学園都市物として。学園においては、授業の目玉の一つとして、毎週木曜日に自動学習機により無意識状態での知識の流入が行われています。この機械によって一流の知識を効率よく身につけられ、質の良い教員を集める手間が省けられるようになったとのことです。・・・・・・極めて怪しいというか、伏線ですからねというネタふりというか、ここで何かしなければ桜井スチームパンクじゃないというガジェットです。そして期待通りやってくれるのですが、具体的にはプレイしてのお楽しみ。直感的に判るようなCGを出して欲しかったとは思うもの、こうくるしかないという際物でした。はたまた優秀な学生のみが身につけられる異能<アート>とか、決闘用の結界である数式領域<クラッキングフィールド>とか、その他にもらしいガジェットがちりばめられています。

 都市も魅力的でした。スチームパンクの特色として、ニューヨークとかロンドンとか舞台となる都市の使い方が上手いという点もあるのですが、今回も例外ではありませんでした。建物は近代・現代が入り交じっており、あっちには高層ビルが立ち並んでいるかと思えば、こっちにはベネチアのように河と煉瓦造りの建物が近くにあります。都市が魅力的に作り上げられているからこそ、登場人物が移動するだけでも楽しくなっていました。映画館ひとつとっても、行くだけでわくわくしますし、中の構造も想像が膨らみました。これぞ架空の世界の醍醐味でしょう。

 ただ視点人物以外の日常の描写が短かったせいで、名前が呼ばれない学生達も都市で生きているのだと実感は出来ませんでした。あまりやってもメインストーリーと関係なくだれるだけでしょうし、難しいさじ加減ですが、もう少し有象無象の生活を知りたかったですね。


  • ヒーロー物として

 稲光をまきつけ、マフラーたなびかせる雷電魔人――だけで、これよこれと膝を打ちました。武装や戦い方、或いは敵の異能とか、ロボット物へのエスカレーションとか、モノホンのヒーロー物の文体をやっており、これまでで最高に爽快な戦闘シーンになっていました。力量の差があれば瞬殺し、差が無くても読み合いが終われば割と呆気なく終わっちゃうのはデフォルトなので、ケチをつけるところではないんじゃないかと。

 そもそも本作のヒーロー物としての焦点はヒーローとしての在り方にありました。自然体で万人を背負っているかのような奇矯な性格や、何十年間も1人で孤独に戦ってこれてしまった強すぎる意思や、ヒーローであるための条件とか、在り方を形作る色々な物が彼を追い詰めます。これこそがヒーローの苦悩というやつなのですが、常に頭の上に刃がぶら下がっている状態でありながら、飄々と渡っていくような魔人っぷりの描き方は新鮮でした。使い古され擦り切れて力を失っての敗北や、復活はありきたりで興ざめなのですが、トータルで見れば、ヒーロー物の語り直しとしての意義がありました。

 加えて、学園都市のガジェットや"10万人の学生"と結びついての大がかりなトリックは『ありえーん』と大笑いしながら突っ込んでしまったぐらいには、吹っ飛んでいました。あれはよくやりましたわ。


  • 登場人物について

 視点人物はテスラに銀貨30枚で買い取られた女生徒ネオン・スカラであり、今までのスチームパンク・シリーズと同様に女性視点からお話は語られます。

 ネオンはそこそこしっかりしている筈なのですがテスラの天然ジゴロ文句にあたふたしてしまう乙女心がありつつ、身の危機が迫っては震えながらも自分を失わない心の強さがあるという、非常に好感の持てるキャラになっていました。言動の形容も良く、気分を害したり困ったりすると視線が"じろり"となったりする身体表現や、『〜してください。〜しろ。』という活用変化を来す言語表現などなど些細な作りが極めて巧みでした。

 その他の登場人物もきちんとキャラ立ちしていました。個人的に一番好みなのはメイザースですね。性格悪そうな眼鏡が実は・・・というありきたりな展開に見事にやられてしまいました。


  • ミニゲームについて

 今回のミニゲームは時限的選択肢で正解を選べば追加ショートストーリーが読めるようになる、ミニゲームともう呼ばない方が良いゲームシステムとなっています。紫影のソナーニル 感想の"・初め"にで述べたように、ノベルから操作が乖離して作品世界への介入が大きい“セレナリア→シャルノス”ラインと、作品世界の秩序を正す“インガノック→ヴァルーシア→ソナーニル”ラインとに分けるとすれば、当然のごとく後者に入ります。

 つまりここ4作続けて、選択肢を正解して"物語を正す"ことを強いていることになります。しかもインガノックのように物語を糸で織り結ぶような優雅だが手間のかかる手続きから、簡素化してきています。ある程度我流スチームパンクという売りで有名になったために、求められているシナリオを主眼とするようにシフトしているのかなと穿っています。その分、オイランルージュとか平グモちゃんみたいにもう片方の路線で思いっきり冒険出来ていますし、下手に凝るよりはバランスがとれているのではないかと思います。


  • その他

 絵・音楽・声はクオリティ高く、相変わらずディレクションがしっかりしていました。

 エロは・・・・・・求める人がいるんですかと疑問ですが、今回微リョナがあり時めきました。剛毅で冷徹な美少女が、触手で絡め取られつつ、尻たぶからナイフを入れられ腸を傷つけられるのです。や、いいじゃん、やるじゃん! これで断面図があれば完璧だったと、頭の中でもったいないお化けが踊っていますが、まあ放っておきましょう。


  • まとめ

 以上。章は石が多めの玉石混合であり、総じて見ればそこそこ面白い程度に落ち着きます。ですが、判りやすく爽快感が強いのでお薦め出来る内容になっていました。

 さて、今回結社に明確に一泡吹かせており、これから結社に対してどうアプローチするのか興味がつきません。続きも楽しみにしています。


  • Link

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