NTTデータ 〜IT業界のラスボス〜

NTTデータという会社をご存知でしょうか?
一般の方は「NTTの子会社?」くらいの感覚かもしれませんが、IT業界にいてその名前を知らない人はいません。IT産業におけるピラミッドの、最上位に君臨している大手ITゼネコン企業です。

この会社は大きく分けて3つの分野に分かれています。

  • 公共 - 主に官公庁のシステム構築を受注する*1
  • 金融 - 主に金融機関のシステム構築を受注する
  • 法人 - 官公庁・金融機関以外のシステム構築を受注する

郵政民営化のタイミングで、公共と金融の境界線があいまいになったこともあり、2009年に公共部門と金融部門が一体となり「パブリック&フィナンシャル(P&F)カンパニー」という組織に生まれ変わりましたが、上記3分野の構成にそれほど大きな変更は無いのではないかと思います。

この会社を見ていて言いたいことはたくさんあるのですが、今回は2点だけ取り上げたいと思います。


1つ目。既にこの会社をトップとするピラミッドが既得権益集団となっていること。
昨今、無駄な公共事業の削減が求められています。「箱モノ」という単語が使われるように、地方に美術館や博物館を建設したり、高速道路を建設したり、橋やトンネルを作ったりすることです。そのほとんどは利用者が少なく、地元に仕事を作ることが目的となっています。

箱モノはわかりやすいですよね。何より目に見えますし、写真を撮って記事にもしやすい。テレビの映像などで、「どれだけ無駄なのか」を伝えることも非常に容易いです。反面、ITシステムは非常にわかりづらい。ソフトウェアに形はありませんし、大きさと価格は比例しません。手のひらに乗る大きさのものが○千万円と言われても、専門家以外はその価値の意味もわかりません。そんな「箱モノの次の席」の権益を予約しているのがこの会社です。導入が決まっている国民共通番号“マイナンバー”のシステム構築も、この会社が受注することが事実上確定しています。

さらに箱モノよりやっかいな問題は、「地元への還元が一切ない」という点です。既に崩壊しているとはいえ、これまでの公共事業は、地元への景気対策という面があったのは事実です。しかし、IT産業では地元への経済貢献は一切ありません。日本で作る必要すら無いものですから、景気対策という面では何の意味もない公共事業です。そういう公共事業に、これまでと同じ勢いで税金がジャブジャブ使われます。この税金の受け皿になっているのがNTTデータです。


2つ目。この会社が時代の波に取り残されているということ。
官公庁と組んで既得権益を維持しようというセンスもその一つです。
さて、最近のNTTデータは海外企業の買収にとても熱心です。「グローバル化」を目指す企業として、私はこの行為は決して否定はしません。そしてもう一つ、この会社が掲げているコピーが、

「変える力を、共に生みだす。」

です。有楽町線豊洲駅を降りると大きな看板がありますので、もしかしたら目にしたことがあるかもしれません。(普通の人は豊洲に行く機会は少ないと思いますけど。)
次に取締役の方々の経歴を拝見してみましょう。→第23回株主総会招集ご通知
全員が「日本電信電話公社入社」なのです。「グローバル化」を目指すのに外国人取締役が一人もいない。「変える」をテーマにしているのに、取締役全員が電電公社出身者。きっと10年後くらいに「ついに我が社も、NTTデータ入社世代が社長になりました」とか本気で言ってそうで怖いです。

以上の理由から、私は「NTTデータはオワコンである」と考えています。10年後、この会社がどのような形で残っているのか、とても興味があります。
ただし、この会社が倒産することはありません。JALと同じように政府が全力で守ると思いますし、NTTデータの親会社がNTT(持株会社)であるため、財務的に行き詰るとは考えられないからです。


それではNTTデータを変えていくにはどうしたら良いか?残念ながらその方法はありません。企業文化は倒産するか買収されるまで変わりません。私は、オワコンの文化を変えることに努力するよりも、捨ててしまって新しい文化を作るほうが建設的な努力だと思うのです。


ちょっと悪口を書き過ぎたのでフォローしておくと、この会社は意外と世の中で使われているものを作っていたりします。例えば銀行間を結ぶネットワークや、クレジットカードを始めとする決済基盤などです。日本の経済をIT分野で支えていると言っても良いでしょう。*2元公社の文化もほんのり残っているため、世の中を支えているという意識を持って働いている人も多いです。時代に取り残されているメリットとも言えるでしょう。

それでも、あえて言います。「オワコンである」と。

*1:「どうして“構築する”ではなくて“受注する”なの?」という疑問を持った方は鋭いと思います。

*2:この会社でなければならない必然性は無いんですけどね。