プヒプヒ日記

 

2019-01-10

田舎の野菜

これはすでに昨年の東雅夫さん還暦記念イベントの席上で公式発表されているのでここに書いてもかまわないと思いますが、国書の名物局長礒崎純一氏が今月一杯で勇退されるということです。

『フランス世紀末文学叢書』にはじまり、『バベルの図書館』『古楽CD100ガイド』『書物の宇宙誌―澁澤龍彦蔵書目録』などをへて、近年の『久生十蘭全集』『マルセル・シュオッブ全集』『夢野久作全集』にいたるまで、拙宅の貧しい書架にさえ礒崎本は百冊や二百冊ではきかないほど架蔵されています。おそらくここをご覧になっている諸氏も事情は同じでありましょう。

わたしが礒崎さんに本を作ってもらうようになったのはごく最近も最近、山尾悠子さんに帯文をいただいて感激に打ち震えた一昨年十月の『ワルプルギスの夜』からです。本多正一さんが中井英夫の逝去についての文章で、「俺はいつも間に合わない」(記憶による引用なので不正確)と書いておられましたが、実にそんな感じです。

せめてもの餞(はなむけ)として今ドイツ幻想小説のアンソロジーを編んでいます。すでにゲラも出て、「澁澤に謝れ!」「もっとスタイリッシュに!」「M氏はまたクリムゾンを見にいったらしい」といったメールを交わしながら粛々と進行中で、おそらく初夏あたりに出るのではないでしょうか。

ところで話は変わりますが、田舎のおばさんの家など訪ねると、別れ際に「うちの畑でとれたもんじゃけ」とか言って、持って帰れないほどの野菜をくれたりするじゃないですか。わが餞としてのアンソロジーもやはり、相手の迷惑などおかまいなしに、「うちの畑でとれたもんじゃけ」とばかりにありったけの狂言綺語を満載して、無理やり持たすような、そんな感じのものになりそうな気がします。なにしろ澁澤にも、それから鷗外にも謝らなければならないのですから。(あっそれからピーター・ガブリエルにもっ!)

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