亭主力


副題:夫婦円満、家庭円満の新!方程式
著者:天野 周一  出版社:角川SSC新書  2007年11月刊  \756(税込)  173P


亭主力―夫婦円満、家庭円満の新!方程式 (角川SSC新書)    購入する際は、こちらから


「いやあー、私は恐妻家でして、わっはっは」というふうに、中年のオジサマは、よく奥さんの尻にしかれている風を装うことがある。といって、そんなオジサマが本当に家事を分担しているという話は聞かない。あんまりワンパターンなので、僕はこの手の話は、「いやー、どうもどうも」と同様の何の意味もない合いの手とみなして、聞き流すことにしている。


本書も、その手のオジサマのヨタ話と思って読みはじめたら、ちょっと違っていた。
著者の天野さん、本気(マジ)である。九州男児として子どもの頃から植えつけられた男尊女卑思想と闘いながら、「現代社会で夫婦が円満に暮らしていくにはどうしたらよいか」という難しいテーマにがっぷり四つに組んでいる。
その結果たどり着いたのが、妻に主導権を明け渡し、妻の言うことに従う良い亭主に徹するという道であり、「でも、主導権を渡したのは自分の意思なのだぞ」という最低限の誇りを手放さない「男子」の生き方だった。


この、良い亭主に徹する道を共々に歩む同志を糾合し、天野さんは全国亭主関白協会(略して全亭協)を発足させた。最初は、限定メンバー11人でグチをこぼし合う会だった全亭協も、マスコミで紹介されて、今や数千人の会員を擁して華々しい活動を展開している。(詳しくは全亭協ホームページを参照されたし)


本書は、その全亭協会長の天野さんが、幸せな家庭を築くために亭主が心得ておくべきことを、自身の体験を交えて教えてくれる。語り口は、もちろん、全編ギャグだらけ。
ギャグに満ちているのは、オジサンの堅いココロを溶かして柔軟にするためなのだろう。そもそも、全亭協の活動自体がギャグ抜きには語れない。
たとえば、「段位認定審議会」という会合があり、家庭円満のための活動報告を評価・審議して「新!亭主関白道段位」を認定する。天野さんは会長なのにまだ五段であるが、唯一の十段である猛者は、全亭協でただ一人“妻の前で気配を消せる男”とのこと。
  「ちょっとあなたっ!」とリビングに呼び出された時、
  なんと、一番避けなければならないと言われている、
  目の前に座る大ワザを披露する。
と賞賛されているのである。


本書で一番感動したことを選べと言われれば、全亭協の思想的支柱であり、全亭協が世界に向けて発信している「非勝三原則」が挙げよう。
それは、「勝たない」「勝てない」「勝ちたくない」 の三原則。理由は推して知るべし。そして目指すところは、戦わずして負ける「無条件幸福」 なのだ!!


大笑いしているうちに、オジサンのココロの氷も溶ける一書である。