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2009/11/06

つボイノリオアーカイブ(2)インカ帝国の成立

"KINTA Ma-Xim MIX"がiTunesチャートを賑わせたことで、私の周りは次回作をどうするか、という話で盛り上がっていた。

周囲から急かされる格好でつボイさんに尋ねると「東芝(EMI)からボツにされた『インカ帝国の成立』って曲があるんで、それをやりませんか」と提案されたが、あいにく私はその曲を知らなかった。


職場でも誤解されるが、私はずっとつボイさんの活動を追いかけているファンではない。少年期に「のりのりだぁ歌謡曲」「おはようこどもショー」「プリンプリン物語」でつボイさんに親しんでいたが、ハイヤングKYOTO時代にはニッポン放送エアチェックしていた。

また「つボイノリオの聞けば聞くほど」にしても、職場の館内放送で毎日耳にしているものの、内容をじっくり聴く余裕はなく、他の番組と同様に商品のひとつとしてしか認識していなかった。『あっ超ー』が発売に至った経緯もしかり。ましてやボツ曲の存在など知る由もなかった。

閑話休題。つボイさんは「K氏がカラオケを持ってますよ」と言葉を継いだ。K氏には拙編作『つボイ正伝』で、つボイさんを京都から名古屋に呼び戻した当時の編成デスクとして取材したこともある。実はこの方、小堀勝啓アナウンサーのKOBORI BANDのメンバーでもあり、96年のライブ版「インカ帝国の滅亡(当時のタイトル)」「雪の中の二人」のアレンジを手掛けている(ちなみにiTunes配信で多大な貢献をしたY氏の、当時の上司でもある)。


早速K氏からDATでカラオケを入手した…が、コード2つ延々と鳴っているのみで、メロディが想像できない。つボイさんにこのテープをバックに歌ってもらおうかと思っていたところ、その日の夜にあるリスナーさんから「インカ帝国の滅亡」「雪の中の二人」のライブ音源が届けられた。なんと絶妙なタイミング!ここで歌詞も判明したが、あまりのくだらなさ素晴らしさに呆然とした。さすがの妻も「これ…やるの?」と引く始末(笑)


で、ライブ音源を聴いていて困った点がふたつ。

ひとつはキーがあまりにも低い印象を持ったこと。この問題がなければ、カラオケをそのまま使用できたが、そういうわけにもいかなくなった。

もうひとつはつボイさんからのリクエストがフォルクローレだったこと。つまりギターやチャランゴなどの弦楽器が必須だ。さすがにチャランゴを調達するあてはなく、シンセで音色を作ってギタータイプのMIDIコントローラー(カシオ EZ-AG=光るギター)で弾いている。

ヤマハ イージーギター Acoustic EZ-AG

ヤマハ イージーギター Acoustic EZ-AG

またK氏のカラオケは完成度が高いものの、マカロニウェスタン映画のサントラを思わせる曲調だったので参照するわけにいかず、フォルクローレのオムニバスを買い込んでアレンジを研究した。いくつかの曲を参考にしたので明確な元ネタはない。

これと並行して、iTunes用とは別のつボイ楽曲(オムニバス『いっしょに歌お!CBCラジオ』収録「花のしゃべり屋稼業」)をアレンジしていたのだが、こちらは製作時間に余裕がなく不完全燃焼のまま納品してしまった。それを挽回したい思いもあり、アレンジには"KINTA Ma-Xim MIX"以上の時間をかけた。


ヴォーカル録音は2006年7月。アレンジにはつボイさんからOKをいただいたものの、エンディングを変えることになったため、その場で15分ほど時間をいただき、突貫作業で打ち込んだ。この「みんながひれ伏す〜」の詞とメロディは、つボイさんと意見交換(と言うと大袈裟だけど)しながら作っていったものである(無論、著作権はつボイノリオさんのもの)。

歌入れはつボイさんの喉の調子がよく、テイク2で終わってもいいほどだったが、余力のあるつボイさんから「次、どうしましょう」と訊ねられるので都度「次は上条恒彦風に勇ましく」とか「果てた感じで」など、その場の思いつきで指示を出した。完成作品ではおいしいところを編集で繋ぎ、エンディングにはつボイさんの声をキャリアにヴォコーダーをダビングしている。

インカ帝国の成立

インカ帝国の成立

こうして完成した「インカ帝国の成立」は、発売日当日にワールドミュージックチャートで首位となり、総合も含め1ヶ月近くチャートを賑わせた。

実は"KINTA Ma-Xim MIX"の売り上げ通知を見たら「この程度?」という意外な数字だった。金儲けを狙ったわけでもないので、却ってスタッフは「赤字を出さずにとことん遊ぼう」と奮起しちゃったのである。そのひとつがこのジャンル遊びだった。


また放送用テイク(いわゆるラジオ・エディット)には放送不可を示すピー音をあえて被せることで、余計にその箇所を強調させる遊び(=臭いものに蓋をすると却って目立ちますよ、という自虐的アイロニー)を加え、こちらも好評を得た(後述のCDにも収録)。


それと今回からジャケットデザインを盟友・永田研次氏が手掛けているが、Y氏の「身内で隠れた才能のある人を起用しよう」という提案で私が推薦した。氏の描いた絵を見たことはなかったが、毎年送られるひと筆書きの年賀状を見て「この人には絵心があるに違いない」と思っていた。

資料としてペルーに伝わるマンコ・カパックのイラスト(織田信長の肖像画みたいなもの)を渡したところ、貼り絵で(しかも王冠に仕掛けまで入れて)作ってきたのには驚いた。ちなみに原画は、現在名古屋市中川区のあるクレープ店(オーナーさんが熱烈なつボイファン)に飾られている。


なお本作のCDは配信に遅れること5ヶ月、'07年2月にプレスされた。

スタッフの誰もが「いくらなんでもこれは無理」と思っていたのだが、年末になって局の広報担当(女性)から「ナゴヤドームの物販ブースでつボイさんのCDを売りたい」とリクエストがあった。楽曲を聴いた上でのオーダーとは思えないが「広報の依頼なら仕方がない」と断腸の思いで(笑)プレスに踏み切ったのだ。

またジャケットの裏面には「各国からの賞賛の声」が印刷されているが、これは言うまでもなくiTunes Storeに寄せられたカスタマーレビューのこと。門戸は世界に開いていたが、日本語以外の言語で投稿されなかったので掲載していないだけの話。

看板に偽りなしである。

 

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